第53話 ノルディア代表、そろい踏み?
「見ます見ます! めっちゃ見ます!」
そう言って身を乗り出した私の前に、リュミが魔導モニターの操作パネルをくるっと回す。
表示されたのは、大会の出場予定者リスト。各国代表の名前が、所属とともにずらりと並んでいた。
「えーっと……こっちがゼミル連邦枠……あ、いた。カーティス=グラッド……って、あれ?」
「うん、彼は確定枠。というか、彼も俺と同じ“審査員枠”だね」
その声に振り向くと、背後の扉が開いていて、レオンさんがすでに入ってきていた。
気さくな笑みを浮かべて、軽く手を挙げる。
「お疲れ。さっきギルド来たら、ちょうど君が来てるって聞いてさ。俺もそろそろ合流するタイミングだったし」
「レオンさん……タイミング良すぎます!」
「偶然、偶然。で、名簿チェックしてたんだよね?」
「はい。名前のインパクト強すぎて、見るだけで情報量がすごいです……!」
「でしょ? ほとんど確定済みのメンツだから、もうすぐ正式発表に入るよ」
再び画面に目を戻す。カーティスの名前は「ゼミル連邦・特別審査員」と表記されていた。
「じゃあ、カーティスさんは出場者じゃないんですね……」
「そう。審査員兼、ハイライト実況枠。実況者の動きや構成を見て、総合評価に関わる立場だね。つまり君を“見る側”」
「――ひぇぇ、なんか変な汗が……!」
レオンが笑う。
「でも彼なりに期待してるってことだよ。わざわざノルディアに来たくらいだし、君の実況を見届けたくて仕方ないんだと思うよ」
「……がんばらなきゃ」
画面が切り替わり、他国の代表一覧へ。
「リオス王国代表、エスティア=グランツ。高貴系でちょっとドSな女王様タイプ。
解説の毒舌がクセになるらしくて、視聴者固定ファンがすごい」
「あ、聞いたことあります! ツッコミだけでモンスターの動き止めたとかいう伝説の……!」
「それ誇張入ってるけど、近いかもね。実際、実況と解説のテンポが完璧なんだ」
次に表示されたのは、どこかほんわかした顔の少女。
「ファレノ国代表、マール=シェリ。動物と歌う癒し系。バトル中も即興ソングで魔物を寝かしつけるっていう、唯一無二のタイプ」
「この子、たまにおすすめに出てきます! 配信、ずっと子守唄みたいな空気でびっくりしました!」
「戦ってるはずなのに、なごむって意味不明な魅力だよね。ギャップが最強」
次に映ったのは、真っ黒な服装の青年――そして名前の横には一言、「実況発声:なし」。
「ゼミル連邦のもう一人、ヴァルト=イクス。通称“サイレント実況者”。喋らない代わりに字幕とリアクションエフェクトで構成されてて……これが不思議とハマる」
「うそ、無言なのに人気あるんですか?」
「コメント欄の盛り上がりが逆にすごくてね。視聴者が“自分で実況を補完する”スタイルが流行ったの」
「実況って、ほんと奥が深いなあ……」
そこからさらにページが進む。
「そして、今回から新たに参加することになった南方諸島連盟。代表は――マコト=アイラ。
海辺の実況バトルで注目された人。特別招待枠って感じかな」
「あっ、知ってます! 以前、一回だけバズってた配信で見ました。波打ち際で戦ってて、やたら派手な演出が……!」
「そう、それそれ。スキルの発動タイミングが完璧で、背景まで実況に巻き込む演出重視スタイル。実況というよりパフォーマンス寄りだけど、今回は枠が開いたから声かかったみたい」
「これだけ揃ってると……すごい人ばかりですね、本当に」
「でもそこに、君もいるわけだ」
レオンのその言葉に、胸の奥がまた熱くなる。
「ちなみに、ノルディア枠はもうひとり空いてる。実はさっき、フィーネさんからギルド推薦が出たところ」
「え、誰ですか? 知ってる人?」
「それはまだ内緒。発表のときまで楽しみにしてなよ」
「もー、またじらしてくるんだから!」
冗談っぽく返しながらも――画面に並んだ名前たちを前にして、私はようやく実感しはじめていた。
ここに、自分の名前が並んでること。
そして、いよいよ本当に始まるんだってこと。
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