第51話 カーティスが残した言葉
「えっと……さっきの人、やっぱりカーティス=グラッドって人だったんだよね?」
>《まちがいないって!声で分かった!》
>《本人があんな堂々と街中歩いてんのビビる》
>《レオンと並ぶゼミルのトップ配信者とかやばすぎ》
>《てか、なんでノルディアに!?》
「……う、うん。こっちが聞きたいよ!」
心臓が、まだバクバクしてる。
一瞬だったけど、あの眼差し――ただ者じゃないって空気、すごかった。
ゾクッとしたのに、なぜか嫌な感じはしなかった。
(……リオナ・アメシス、か。どんな配信をするのか、楽しみにしてるよ)
さっきの一言が、頭から離れない。
あの人の“楽しみにしてる”って、きっとただの挨拶じゃない。
圧みたいなものがあった。試されてる、そんな気がした。
「え、なに? 私、またなんかのフラグ立てた? やばいやばい、急にバトルモードに突入しそうなんですけど!?」
>《街ブラから急転直下》
>《これが異世界ストリーマーの宿命》
>《フラグ建築士リオナ》
>《でもちょっとワクワクしてるの否めない》
「うぅ……否定できないっ!」
配信中だということを忘れかけてた。
それくらい、さっきの遭遇は衝撃的だった。
でも、同時に――どこか、燃えてる自分がいた。
「よしっ、じゃあ! せっかくだから今日はちょっとギルドに顔出してみます!」
>《お、行動早い》
>《情報集め?》
>《フィーネさんいるかな》
>《カーティスの件ギルドにも回ってたりして》
「だとしたら、それはそれで面白そうじゃない?」
歩き出す足取りに、さっきまでの動揺はもうなかった。
頭の中ではすでに、次の配信内容と、今後の展開をどう乗りこなすかを考えている。
リオナ・アメシス。
一人の駆け出しストリーマーにすぎなかった私が、
今――異世界の“流れ”に巻き込まれようとしている。
(……いや、たぶん、あれでしょ? アレ。うん、多分アレだよね。
でもまだ言っちゃだめなやつな気がする……うん、言わない!)
「ということで! 何が起きるか分かんないけど、全力でがんばります! 配信は止めませんのでよろしくお願いします!」
>《がんばれー!》
>《何か知らんけど応援してる!》
>《フラグがどんどん立ってく》
>《絶対なんかあるやつじゃんこれ!》
「さてとっ、今日の配信はここまでっ! ちょっとギルド寄ってくるから短めだったけど、また次の配信でお会いしましょー!」
>《おつおつー!》
>《次も楽しみにしてる!》
>《気をつけてなー!》
画面の向こうの声に手を振って、魔導石カメラの録画を停止する。
ふぅ、と小さく息を吐いて。
ギルドの扉が、すぐそこに見えてきた――。
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