第50話 生配信中にまさかの遭遇!?
「というわけで今日は、ノルディアの街中をちょっとだけ散歩していきまーす!」
配信を開始して、魔導石カメラを手に歩き出す。
ここ数日は大会関連の話が多かったし、たまには雑談回もいいかなって。
「ほら、あれ見てください。あの掲示板、決勝戦の観戦広告がまだ貼ってある。
もう何日も経ってるのに、剥がされてないってことは――」
> 《たぶん残してって言われてるんじゃ?》
> 《記念扱いっぽいよね》
> 《ノルディア盛り上がってるからな~》
「なるほど、それっぽい! イベントとして大成功だったもんね」
そんなふうに、のんびり街を歩いていた、そのとき。
「――レオンから聞いてるよ。君が、リオナちゃんって言うんだっけ?」
背後から、不意にかけられた声。
振り返ると、黒いフードを深く被った、長身の男性が立っていた。
「え……? あ、はい。リオナ・アメシスです……」
「そっか。どんな配信をするのか、楽しみにしてるよ」
それだけを言い残して、男は人混みに紛れて歩き去った。
あまりにも唐突で、こっちは名乗る暇もなかった。
「……え、なに今の? 誰?」
> 《今のカーティス=グラッドじゃん!?》
> 《あの声、間違いない!》
> 《ゼミル連邦のトップストリーマーだぞ!?》
> 《レオンと肩並べてるレベルのやばい人!》
> 《リオナちゃん、完全に目ぇつけられてるって!》
「カーティス……? え、えっ、もしかして有名な人だった!?」
(え、うそ、今の人そんなにすごかったの!?
なんか背高いし雰囲気あったけど、まさかそんな大物だったなんて……!)
頭の中が一瞬で混乱モードに突入。
ただの街ブラ配信が、一気に緊張モードへ切り替わる。
「と、とにかく、気合い入れてがんばりますっ!」
> 《がんばれー!》
> 《すごい展開になってきたな》
> 《こりゃ注目配信者ですわ》
カメラ越しの声に、思わず笑みがこぼれる。
“誰かが見てる”って、こんなにも力になるんだな――
そう思いながら、私は再び歩き出した。
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