第5話 コラボ配信なんてやったことないんだけど!
指定された場所に着いて、私は思わず立ち止まった。
「……ここって、スタジオ……だよね?」
石造りの外観なのに、中は完全に“現代”だった。
空中ホログラムの案内板、個室ごとの収録ブース、吸音用の結界フィールド。
完全防音で、観客席まで用意されている。
(いや、異世界にスタジオって……文化どうなってんの!?)
魔法で技術の限界突破してるパターンだ。
剣と魔法の世界なのに、肝心なとこだけ“未来”。
そりゃ違和感も出る。
ブースの前で待っていると、奥からぬるっと現れたのはレオンだった。
「よく来たな、耳フ――」
「その先を口にしたら殺す」
「……はい」
レオンは悪びれもせずに笑って、スタジオ内に手招きした。
「じゃ、セッティングしようか。魔導石は持ってるな?」
「うん……けど、こういうの初めてで」
「俺が同期するから任せとけ。音声回線と映像リンク張って、コメント表示は共有仕様にする」
「いや、なんでそんな専門用語で押してくるの!?」
「言葉は違っても意味は伝わるだろ?」
……そうだけど!
レオンの手際は手慣れていて、あっという間に二人の配信準備が整った。
ホログラムに映る自分の姿。ケモ耳が軽く揺れている。
(うわぁ……私、今マジで配信者なんだ……)
思えば、前世では誰ともコラボしたことがなかった。
ずっと一人で、画面の向こうに向かって話してきた。
「緊張してる?」
不意にレオンが聞いてきた。
「そりゃ、してるに決まってるでしょ……」
「まあ、最初はそんなもんさ」
それだけ言って、レオンは指先で魔導石を操作した。
「じゃ、配信――スタート」
ホログラムのウィンドウが開いて、コメント欄が動き出す。
> 《レオンきた!》
> 《今日のコラボ相手、だれ?》
> 《ケモ耳ww》
> 《あの切り抜きの子?》
「ど、どうも……! えっと、リオナ・アメシスです!
あの、昨日……逃げてた人です!?」
あかん。滑った。
> 《自分で逃げてた人って言ったw》
> 《正直でよろしい》
> 《耳動いてんぞw》
> 《かわいいな》
「は、はは……!」
(なんか、思ってたより空気ゆるい……)
隣でレオンが、軽く笑いながら言った。
「なあ、無理してキャラ作ろうとしなくていいよ。
昨日のあれ見てて思ったけど――お前はそのままでいい」
「えっ……」
「言葉選ばないで言えば、必死なやつっておもろい。
けど、その“必死”が嘘じゃないって分かるから、もっと見たくなる」
言葉に詰まった。
でも、なんか……嬉しかった。
「……うん。分かった。じゃあ、がんばって喋る」
> 《そのままでええぞー》
> 《いいコンビ感》
> 《もっと見たいなこの2人》
コメントが流れる。
その一つひとつが、胸に灯をともしていく。
(あ……また、やってもいいかも)
ほんの少しだけ、そう思えた。
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