第47話 “配信”で世界は繋がるって、証明してみたくてさ
カフェの奥の窓際。
レオンは飲み物も頼まず、魔導端末を開きながら話し始めた。
「……実はさ、今ちょっと大きい企画を動かしててさ」
「大きい企画?」
「うん。配信者たちが“戦う”大会。
──ただし、国を越えて、だ」
レオンはそのまま指先で魔導画面をスライドさせながら続ける。
「このノルディアだけじゃない。
他の国にも配信文化は広がってて、腕利きのストリーマーたちが山ほどいる。
で、そいつらを一堂に集めて、“ストリーマーの技術そのもの”で勝負させる」
「勝負……って、実況の?」
「実況だけじゃない。企画力、演出、コメント対応、魅せ方――
もちろんバトルがある競技もやる。ガチで身体張ってもらう場面もあると思う」
> (身体も使う!?)
「名前はまだ仮だけど、今のところは――
《国際ストリーマーバトルカップ》って呼んでる」
「国際……?」
「国またぎの大規模配信大会ってことさ。
チーム制で、複数の競技を通じてポイント制で競う。
評価は、俺と他の国のトップストリーマー何人かで採点する形式」
「え、レオンさんが主催するんですか?」
「って言っても、主催“代表”ってだけでね。
ちゃんとギルドとも協力してるし、国際配信連盟みたいなのも絡んでる。
ある意味、ここから“次の世代のトップ配信者”を見つけようって動きなんだよ」
私は、端末に映る企画草案のページを見つめた。
大会概要、想定されている競技種目、評価ポイント、
審査員予定名簿(レオン以外はまだ仮)――
どれも現実味があって、それでいて……どこか夢みたいだった。
「でも……どうして私に?」
「リオナちゃんさ、この前の配信、やばかったじゃん。
実況、魅せ方、空気のつかみ方――全部“持ってる”って思ったんだよね。
ぶっちゃけ、俺がもうちょい下の世代なら嫉妬してるかも」
「そ、そんな……」
「だから、出てほしい。ノルディア代表のひとりとして、な」
唐突な話に戸惑いながらも、
胸の中には、じわじわと熱がこみ上がってきていた。
「ちなみに、出場はチーム制だから、他の出場者とも組むことになる。
コラボ系の配信とか、苦手?」
「いえ、あの……ちょっと緊張はしますけど……」
「じゃあ大丈夫。最初にバズるきっかけって、だいたい“誰かと組んだとき”だからさ」
「そういうものなんですね……」
「配信って、孤独だけど孤独じゃない。
画面越しに誰かが見てて、コラボすればそれが重なって……
気づいたら、世界が広がってたりするんだよ」
コップに口をつけるふりだけして、レオンは少し笑った。
「“配信で世界が繋がる”って、俺、証明してみたくてさ」
その言葉が、胸に残った。
まだ、返事はできない。
けれど――なにかが、確かに揺れていた。
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