第44話 最後に届くのは、勝ち負けじゃない
「ファルド、もう一度前へ――!」
決勝戦、残り体力は限界を超えてるはずなのに、誰も止まらない。
火花のようにぶつかり合う動き、すべてが“最後”に向けて研ぎ澄まされていた。
「カイ、動きが重い……でも盾を下げない!
セナが後ろから魔法を流しながら、詠唱を巻き直す――!」
> 《耐えてる……!》
> 《でもファルドが動いた!》
> 《ニーニャ、詠唱終わった!?》
「詠唱が走る! ニーニャの火術、来る――!?」
でもその瞬間。
「カイ、強引に詰めた!? 詠唱ごと止めにいった――
ファルドが割って入る、斬撃! 盾が弾く――カイ、崩れた!?」
(……決まる。次の一撃で)
「セナが詠唱完了! カイの身体を包む光――これは!?
反転結界の再起動……!? いや、カバーじゃない、攻撃魔法だ!」
セナが、攻撃に出た。
サポート役が、最後の一撃を担う覚悟。
「光の矢が放たれる――一直線にニーニャを貫いて――」
魔導障壁が、光る。
「戦闘不能判定! 決着――勝者、カイ&セナ組!!」
ブース内の私も、思わず立ち上がっていた。
叫んだそのまま、数秒間、何も言葉が出てこなかった。
観客席から、拍手が一斉に巻き起こる。
そしてその中で、
ファルドとニーニャは、倒れ込んだまま笑った。
カイとセナも、ぐったりしながら――
それでも、互いに向き合って、静かに頭を下げていた。
> 《どっちが勝ってもおかしくなかった》
> 《今の試合、全部が最高だった》
> 《泣いた……》
「……皆さん。いま、ここで見届けてくださった試合――」
私は深呼吸をひとつ挟んで、マイクに向かって口を開く。
「それは、誰かが勝ったというだけじゃなくて。
最後まで“仲間と信じ合いながら戦った”という、誇りの証でした」
> 《うまいこと言うな……》
> 《この実況で良かったと思える》
> 《リオナさん、本当にありがとう》
「カイ選手、セナ選手――優勝、おめでとうございます!」
魔導ビジョンに、カイとセナの姿が映る。
それと同時に、敗れたファルドとニーニャにも、観客から惜しみない拍手が贈られていた。
ああ、ちゃんと届いてるんだ。
この戦いが、この実況が。
誰かの心に、何かを残せてるんだ。
(……私、やりきったんだ)
全力で喋って、喉痛い……喉、枯れちゃったかも……
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