第43話 これは戦いじゃない 読み合いだ
「ニーニャの火術、第二波! ファルドの斬り込みと同時に重ねてきた――!」
観客席から歓声とどよめきが重なる。
見ているだけなら一瞬で終わるこの攻防も、
伝える側の私は、目を、頭を、口を全開にして追い続ける。
「カイ、盾を構えて正面受け……じゃない!反転!
斜めに滑らせて流した――セナがその隙に補助を通した!?」
> 《受け止めてないのか今の》
> 《セナの補助、タイミング完璧》
> 《流し受けってできんのかあの鈍重な盾で》
「これは単なる力の応酬じゃありません!
一手一手が“読み合い”で繋がってる……
相手を見て、考えて、その先を刺しにいく……!」
「ファルド、足を止めた!?――いや、あえての隙か!?
カイが釣られて踏み出す――そこにニーニャの術式!?」
バシュッ――!
ステージを走る、淡い光の罠。
「結界転倒!カイ、足を取られた!これは……陣中魔法“踏み裂き”!
事前に張っていた罠――完全に誘導されました!」
> 《これだ!ファルドとニーニャの十八番!》
> 《この連携、逆にあそこまで誘導してたのかよ》
> 《読み合いが深すぎる……》
「ですが――カイ、倒れながらも盾を前に構える!
セナがすかさず魔法を流し込む……! これが彼らの“連携”!」
(この攻防……本当に一瞬も見逃せない……!)
でも私は、止まらない。
伝える。それが私の仕事。
「どちらのチームも、ただの技術じゃないんです。
“相手を理解しようとする意思”が、ここにはある!
この試合は、戦いじゃない――“読み合い”の極致なんです!」
観客席から、どっと拍手が沸いた。
今のは、攻防でも、技術でもない。
“姿勢”そのものに反応が返ってきた。
> 《これ、泣くやつじゃん》
> 《見てて震えるのってこういう瞬間なんだよ》
> 《どっちも引かないのが最高》
「カイ、立ち上がる! その隣にセナがいて……
ファルド、構え直す! ニーニャは既に次の詠唱に入ってる!」
「決勝戦、どちらも引きません!
ここからさらに――激しさを増していきます!!」
両チームとも、もう消耗の限界に近い。
でも、誰も止まらない。誰も気を緩めない。
決勝戦は、いま真っ只中。
――次に動いたほうが、勝つ。
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