第41話 場つなぎも、ストリーマーの仕事です!
「それでは、いよいよ決勝戦――」
と言いかけた瞬間だった。
キィィィィィッ!
甲高い鳴き声とともに、会場の天井近くを舞う黒い影。
続いて、二羽、三羽、四羽――
羽ばたく音と観客のざわめきが、場内に広がっていく。
「……鳥? えっ、ちょっと多くない?」
すぐさま結界魔導陣が展開され、試合エリア上空に結界が張られる。
係員が走り回り、観客席からも驚きの声があちこちで上がっていた。
> 《なんか鳥いっぱい来てるんだけどw》
> 《決勝前なのにこんなトラブルw》
> 《この世界、動物まで空気読まんの草》
控室の待機モニターが一時的に“安全確認中”に切り替わる。
直後、スタッフの一人が慌ただしく駆け込んできた。
「アメシスさん! 少しだけ会場全体へのマイク、繋いでもらえますか!?
このままじゃ観客も間が持たなくて……!」
「えっ、ええと……つまり、場内アナウンスもやれってことですか?」
「そうなります!配信と違って現地にも響きますので、あの、お願いします!!」
(えええええ!?)
急いでマイクに手を伸ばし、スタッフから切り替えスイッチを受け取る。
魔導音声系統が“ライブ会場スピーカー”に接続されたのを示すランプが点いた。
「……えーっと……」
一瞬、言葉が詰まりそうになった。
でも、観客席のざわめきが耳に入ってきたその瞬間――
体のどこかが切り替わった。
(やるしかないよね。だって、これも“実況”だもん)
「えー、ただいま決勝戦開始を前に、会場上空に多数の鳥が来訪しております!
現在、安全確保のために魔導誘導班が対応中ですので、しばらくお待ちください!」
> 《おお、実況の人が喋ってる!》
> 《なんかこの声安心するw》
> 《鳥も見に来た説出てきた》
「なお、決勝戦の両チーム――
カイ&セナ、ファルド&ニーニャの各選手は現在絶賛集中中ですので、
会場の皆さまも、温かいまなざしで見守っていただけると嬉しいです!」
拍手が自然とわき起こった。
観客の空気が、ざわつきから“待つ側の熱”に変わっていくのがわかった。
(配信の向こうだけじゃない。
この会場にも、ちゃんと“届けられる”んだ)
ブースのガラス越しに、鳥を誘導している魔法騎士団が見える。
空は次第にクリアになり、視界が開けてきた。
(よし、そろそろ――)
「魔導結界、再展開完了。鳥類、全て撤退を確認――」
「それでは、準備が整ったようなので――試合開始となります!」
> 《ナイス実況対応!》
> 《逆に盛り上がってきた》
> 《会場にいる気分になったわ》
私はヘッドセットのスイッチを切り替え、元の“配信モード”に戻す。
手元に残るのは、少し熱を持ったマイクと、
会場全体から返ってきたあたたかい空気。
(……さ、いよいよ本番)
言葉だけじゃない。
雰囲気も、気持ちも、全部背負って――
決勝戦、始まります。
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