第4話 街に着いたら実績持ちに目をつけられました
草原を歩き続けて数時間。
転生→逃走配信→野宿。
さすがに限界が近かった。
そんなとき、丘の向こうに石造りの壁が見えた。
(……街だ!)
門の前には人の列。周囲には荷車、馬、魔物の皮を抱えた人。
どこからどう見てもRPGで見たような“それっぽい”街の風景。
中世ヨーロッパっぽい街並み。
石畳にレンガ造りの建物。通りには露店や冒険者風の人があふれていた。
(……なんか、いいな。ファンタジーって感じ)
そう思った矢先。
建物と建物の間、空中に突然ビジョンが浮かび上がった。
魔導ホログラム。広告のようだった。
「本日の注目ストリーマーランキング!」
「異種族配信部門TOP10」
「注目のバトル実況!レオンLive配信は今夜20時から!」
(……えっ。空中広告!?)
街並みの雰囲気と広告の近未来感が噛み合ってなくて、
思わず立ち止まってしまった。
魔法で投影されてるんだろうけど、
この世界観でこういう技術あるの、やっぱちょっと違和感ある。
(いや、元の世界だったら普通に渋谷とかで見てたけど……これはファンタジーじゃん)
しかも広告には、やたらキラキラした男の顔が大きく表示されていた。
銀髪、ポニーテール、どこかやる気なさそうな笑顔。
(この人……レオンって名前だったかな。覚えとこ)
そのまま人波に流されるように街を進み、
気がつけば立派な建物の前にいた。
扉には“冒険者ギルド”の文字。
その下に、なぜか小さく“ストリーマー登録所”と併記されていた。
(ストリーマーが、ギルド経由で登録って……仕事として認知されてるの!?)
中に入ると、広いロビーとカフェのようなスペース。
壁には魔物の討伐依頼や運搬ミッション。
その隣には《魔導通信の公式ライセンスはこちらから》という案内板まであった。
私は空いてるテーブルに腰掛けて、魔導石を起動する。
「“ギルド審査済み”がないと投げ銭も使えない……?
どこの国の配信サイトも、収益化ってややこしいのね……」
端末の設定画面を開いたまま、小さく溜息をつく。
と、そのとき――
私の肩越しに誰かが、ぬっと身を乗り出した。
「設定画面、ロックかけとけよ。丸見えだぞ」
「うわっ!? な、なに!? ちょっと!!」
慌てて振り向くと、目の前には――
銀髪ポニテ、ちょっと気だるげな笑顔。
(……え、これって――)
「あれ、あんた……さっき街中の広告にいた……!」
「お、覚えてた? それ俺」
彼は軽く手を上げて、にやっと笑った。
「名前はレオン。ストリーマーやってる」
……レオン。
確かに、空中広告で見たあの人だ。
っていうか、こんな上位配信者にいきなり話しかけられるのってどういう流れ!?
「昨日のお前の配信、ちょっと見たよ。スライムから逃げて実況してたやつ」
「えっ、なんで知って――」
「切り抜きが出てた。耳フリフリでスライムに追われてる新人ってやつ」
「や、やめて!? その呼び方ほんとやめて!!」
笑う彼に、こっちは恥ずかしさで爆発寸前だった。
でも――なぜか、嫌な感じはしなかった。
「で、どう? 一回コラボしてみる?」
「……は?」
「面白かったから、声かけてみた。素材になるって確信したし」
(素材て。言い方ァ!)
だけど、言ってることは悪くない。
昨日、たった数人でもコメントが来て。
誰かが見てくれて、ちょっとだけ心が動いて。
また、あの感覚を味わえるなら――
「……やってみてもいいかも」
「よし決まり。明日、スタジオ押さえとく。場所は送る」
一方的に決めて、さっさと背を向けて歩き出す。
でも、なぜかその背中が頼もしく見えた。
「じゃあな、耳フリフリ新人!」
「だからそれやめろってばーーー!!」
本日一気5話更新4話目!ラストはは23時です!よろしくお願いします!
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