第37話 これが私の実況スタイル!
「さあ、続いては第三試合!」
三戦目、四戦目、五戦目――
ノンストップで続く交流戦の予選ステージ。
私は控室と実況席を行き来しながら、次々に展開される試合を言葉にしていった。
「おっと、これは面白い動き!
盾を囮に使って、逆サイドから魔法をねじ込むパターン……!」
> 《あーこの組み合わせ見たことある》
> 《お互い知ってるからこその探り合いって感じ》
> 《実況がマジで上手くなってて草》
最初の試合では緊張していたはずなのに、
気づけばマイクを握る手にも余裕が出てきていた。
(でも、ただ実況するだけじゃダメだ)
戦いを「伝える」だけじゃなく、「魅せる」こと。
観てる人に、記憶に残してもらうこと。
――それって、たぶん、私がやりたかった“配信”そのものだ。
「この連携、まさに“ブーメラン戦法”ですね。前に出た相手を一瞬で引き戻す、
戻ってくる刃のイメージで……って、あ、今の使えるかも」
いつの間にか私は、技や戦術に即興であだ名をつけはじめていた。
「これは“回転食らいつきスタイル”!」
「さっきのは“フォロースルー・ボム”でしょ!」
「はい出ました、ギルド公認“壁張りスト”――これは堅い!」
> 《ネーミングがクセになる》
> 《わかりやすくて助かる》
> 《それで覚えちゃうんだけどw》
> 《なんか今日の実況、楽しそうで好き》
(……これだ。これが、私のやり方だ)
誰かが仕掛けた戦術に名前をつけて、
誰かのプレイを面白く紹介して、
観てる人に「もう一回見たい」って思わせること。
ただの実況じゃなくて、ストリーミング。
その違いを、私は少しずつ掴みかけていた。
そして――
計五試合を終えて、ついに準決勝進出チームが発表された。
「準決勝に進出するのは、以下の四組!」
・【カイ&セナ】防御と補助の鉄壁コンビ(第一試合勝者)
・【ライル&アーシュ】速攻魔法の連携型(第二試合勝者)
・【ガロン&ビネッタ】重量槌と広範囲火術の強行突破型
・【ファルド&ニーニャ】陽動型前衛と攪乱支援の変則スタイル
どの組み合わせも、特徴的で強い。
でも――
私はマイクにそっと手を添えて、口元でつぶやいた。
「ここからもっと盛り上げてやる……! 誰よりも熱く、伝えてみせる!」
ここからが本番。
準決勝、そして決勝――この先はもう、盛り上げるしかない。
私の実況で、記憶に残すしかない。
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