第33話 言葉で戦場を描く仕事
「……き、決まった――!」
実況ブースから叫ぶ私の声に、スタジアム全体が沸いた。
セナの放った閃光魔法が、グラードの動きをほんの一瞬止める。
その隙を逃さず、カイの盾が突進の勢いそのままに打ち込まれた。
「赤チーム、カイ選手のタックルが命中――グラード、戦闘不能判定!」
魔導障壁がきらめき、勝敗を示す紋章が浮かび上がる。
観客席から嵐のような歓声と拍手が巻き起こった。
> 《今の連携、完璧すぎ!》
> 《セナの閃光、タイミング神だったわ》
> 《赤チーム、普段から組んでるらしいぞ》
> 《実況の子、テンション好き》
(いつも見てくれてる人も、ちゃんと来てくれてるんだ)
そのことに気づいただけで、少しだけ緊張が和らいだ。
「これにて、第一試合――勝者、赤チーム!」
叫んだあとの私は、知らないうちに息を切らしていた。
実況席なのに、まるで自分も試合の中にいたみたいだった。
(……すごかった。すごすぎた)
緊張してたはずの喉も、今はむしろ熱くて。
言葉が、どんどんあふれてくる。
「赤チームのカイ選手とセナ選手、見事な連携でした!
防御と補助、それぞれの役割を徹底したうえでのあの決め手……
いやもう、まさに“信頼”の勝利って感じでしたね!」
> 《実況、ほんと聞きやすい》
> 《これ、もっと見たい!》
> 《リオナさん今日も安定してる》
(嬉しい……けど、ちゃんと受け止めないと)
今、ちゃんと“見られてる”。
その実感が、胸の奥からじんわり広がっていく。
(実況って、ただ試合を説明するんじゃないんだ)
(空気をつくって、熱を届けて、選手のすごさを言葉にする――)
(そして、その場にいる全員と“気持ちを共有”する仕事なんだ)
ステージ上では、勝った赤チームと、健闘した青チームが
互いに礼を交わし、観客席へと一礼して退場していく。
それを見送りながら、私はもう一度マイクを握りしめた。
「以上、第一試合の模様をお届けしました!
このあとも、まだまだ見どころたっぷりの交流戦が続きますので――
お時間ある方は、ぜひ最後までお付き合いください!」
観客席から再び拍手。そして、コメント欄にも温かい反応。
(まだまだ未熟だけど、少しずつでも前に進めてる)
今日はまだ始まったばかり。
でも、今なら言える。
リオナ・アメシス、ストリーマーとして――
ここに、ちゃんと“立ててる”。
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