第31話 実況席より、初めての開会宣言
「……ひ、広っ……!」
初めて足を踏み入れたノルディア闘技場。
その規模に、私は思わず息を呑んだ。
アーチ状のスタンド席に、石造りの観客席。
中央の戦場は円形で、周囲には魔導障壁が展開されている。
まるで異世界のスタジアム。
(ここで実況……ほんとに私が?)
会場の外で受付を済ませ、指定された“実況者控室”に通された。
そこには、簡素な説明書きと、これから着用するヘッドセット、
それと――ギルドからの業務連絡書が置かれていた。
> 【実況者:リオナ・アメシス】
> ※映像配信は魔導石ネットワークを通じて自動送信。
> ※現地観戦用の音声は会場スピーカーより再生。
> ※司会進行、実況、および観客とのリアクション対応を兼任。
(……マジで、全部私ひとりでやるの?)
背筋にうっすら汗を感じながら、ヘッドセットを装着する。
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まもなく、案内人のスタッフに導かれて実況ブースへ。
リングの真上、少しせり出した小型の台。
ここが私の“戦場”。
(吸う、吐く、喋る。いける。私、喋れる)
スイッチオン。
マイクのランプが点灯する。
「――皆さま、本日はノルディア闘技場、交流戦イベントをご覧いただき、ありがとうございます!」
自分でも驚くほど、声ははっきり出ていた。
観客席からざわっとした歓声が返ってくる。
「本日、実況を務めさせていただきます、ストリーマーのリオナ・アメシスです!」
> 《あの人、この前の街紹介してた子じゃない?》
> 《実況もやるの!?》
> 《がんばれー!》
(うわ、コメント入ってる。観客席からの生コメント、初めてだ……!)
画面越しじゃなく、“本当に人前で喋ってる”という感覚。
心臓がバクバクする。けど、嫌じゃない。
「では、間もなく始まります第一試合。
ノルディア近郊の実戦型冒険者たちによる交流バトル――
それぞれの戦術、スキル、個性……存分に楽しんでいってください!」
スタンドに響いた拍手の音に、私は心の奥で拳を握る。
(やれる。ちゃんと、やれる)
ストリーマーとしての、初めての“舞台の実況”。
私は、確かにこの場所に立っていた。
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