第24話 ギルドにて、少し違う視点の話を
翌日――午前のうちにギルドへ顔を出すと、
ロビーはいつになく静かだった。
(今日は依頼も少ないのかな)
カウンターに立っていたのは、見慣れた銀縁眼鏡の受付嬢。
ギルドの“フィーネさん”。
私がここに来た初日から、ずっと変わらない冷静な対応。
でも、何度も顔を合わせているうちに、少しずつ柔らかさを感じるようになってきた。
「あら、リオナさん。お疲れさまです。昨夜の配信、確認しました」
「え、見てたんですか?」
「いえ、リアルタイムではなくログで。
仕事の合間に要点だけですが、なかなか安定した配信でしたね」
(仕事の合間に……わざわざ……)
「ありがとうございます。あ、そうだ。
ちょっと気になってたんですけど、この施設って――」
ふと、昨日配信で紹介した住居施設のことが気になって、
私は自然と尋ねていた。
「提携住居って、どういう経緯で運営されてるんですか?
設備とか食事とか、結構しっかりしてるのに、無料って不思議で……」
フィーネさんは少しだけ眉を動かし、それから静かに口を開いた。
「……あの施設は、ギルドが支援している“駆け出し育成プロジェクト”の一環です。
冒険者やストリーマーが、いきなり自立するのは難しいですから」
「それは、なんとなく分かりますけど……
支援って、どこからそんな予算が……?」
「それについては……」
彼女は一度言葉を止めて、カウンターの上にある端末に視線を落とした。
「……すみません。これ以上は、私の口からは。
ただ、“ギルドは金銭的な利益だけで動いているわけではない”ということだけは、信じていただけると」
(……なんか、今の言い方……)
> “これ以上は言えない”
> “利益だけで動いてるわけじゃない”
何か、あるんだ。
ギルドという組織には、表に出ていない“意味”が。
「……分かりました。変なこと聞いてすみません」
「いえ。逆に、そういうところに関心を持ってくださるのは嬉しいです。
リオナさんは、“根の部分”を見ようとしますね。表面的な人気ではなく」
「……えっ」
「あなたがそういう人間である限り、応援する意味もあると思っています」
フィーネさんは、いつもどおり淡々とそう言った。
でも、その言葉には、たしかに“熱”がこもっていた。
(……私は、応援される側なんだ。まだ)
でも、それって当たり前じゃない。
配信でギフトをもらって、視聴者にコメントをもらって、
ギルドに設備を借りて、住居で食事をもらって――
支えられてる。
「……がんばります。ちゃんと、返していけるように」
「はい。ご武運を、“ストリーマー・リオナさん”」
カウンターの向こうで、彼女は少しだけ目を細めた。
たぶんそれが、笑った証拠。
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その日の午後、私はまた魔導石を起動した。
コメントはまだ少ない。ギフトも、たまに届く程度。
でも――
(この世界で、配信者として生きるって決めたんだ)
「じゃあ、今日はちょっとした街の噂でも話してみますか――
異世界のストリーマー、リオナ・アメシスの実況、始めます」
活動報告の方でも書いたのですが、8話が二重投稿になっていたので片方を削除しました。
なので今日はもう1話!いつもお読み頂きありがとうございます!今後とも誤字脱字や矛盾などがありましたらご指摘頂けますと幸いです。
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