第23話 夜の街を歩いてみたら
「現在地、ナイトマーケット前。魔導石は稼働中――
本日も実況していきます、リオナ・アメシスです!」
夜の街に浮かぶ、提灯とホログラムの光。
路地に広がるナイトマーケットは、昼間とはまるで別世界だった。
屋台の明かり、すれ違う人の影、遠くから聞こえる音楽。
どこか懐かしくて、だけど見たことのない風景が広がっている。
「ここのナイトマーケット、冒険帰りの人や観光客も多くて……
ちょっとだけ“祭り”っぽい空気があるんですよね」
> 《夜でも活気あるな》
> 《照明が幻想的》
> 《あの屋台うまそう》
> 《お、また実況だ》
「まずは、あっちの角の“夜だけ営業の焼きスイーツ屋”に行ってみましょうか!」
カメラを軽く回し、香ばしい匂いのする屋台に向かう。
「ここの目玉は、“月光シロップ”っていう特殊な糖蜜をかけた焼き菓子です。
月明かりの下だとキラキラ光って、ほんとに“夜のスイーツ”って感じ!」
屋台のおじさんが、にっこり笑って焼きたてを手渡してくれた。
「いただきます……」
カメラを意識して、ひと口。
ふんわりした生地と、ほんのり甘いシロップの風味が口に広がる。
「ん……外はカリカリ、中ふわふわ……!
甘さは控えめだけど、香りがめちゃくちゃいいです……!」
> 《飯テロ来た》
> 《これは絶対うまい》
> 《夜スイーツはズルいわ》
「こういう何気ない夜の風景って、配信でこそ伝えられる気がします。
“冒険”って、戦うことだけじゃないんだって思えて」
少し歩いて、広場の端にある楽器屋前へ。
路上演奏している青年が、魔導式ギターを奏でていた。
「……この辺りは、特に好きな場所です。
なんか、街がちゃんと生きてるって感じがして」
> 《BGM代わりにいいな》
> 《雰囲気ほんと好き》
> 《この時間帯好きになりそう》
「さて、そろそろ今日はここまでにしようと思います。
ゆるめの実況でしたが、楽しんでもらえたなら嬉しいです」
配信の終了ボタンに指をかけたその時、ふとコメント欄が流れた。
> 《この世界の日常、もっと見たいな》
「……うん。そうですね」
少しだけ微笑んで、配信を切った。
夜風が、ふわりと頬をなでる。
魔導石の画面に、自分の笑顔が一瞬だけ映った。
(また、届けよう。見てくれる誰かのために)
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