第22話 ひとり実況、はじめます
「魔導通信、起動。配信スタートします。リオナ・アメシスです」
部屋の中。
背景はいつもの壁。特に演出はない。
でも、今日はそれでいいと思った。
「えっと、今日は……久しぶりに、ひとりで配信してます」
魔導石に向かって、少し緊張した笑みを浮かべる。
リュミとコラボした後の、初めてのソロ。
比較されるかもって不安はあるけど――それでもやりたかった。
> 《ひとり配信ひさびさ?》
> 《コラボ良かったよ!》
> 《今日はどんな話?》
> 《背景シンプルなの落ち着く》
「今日はちょっとだけ、私が住んでる場所の話とか……
あとは最近気づいた“変だな”って思ったこととか、おしゃべりする回です」
魔導石を手に持ち、部屋の一部を軽く映す。
「この部屋、ギルドと提携してる住居施設なんですけど、
配信者や冒険者向けで、朝と夜にごはんも出て、通信環境もあるんです」
「でも、ある程度稼げるようになったら出ていく決まりなんですよ。
“自立支援施設”って感じですね」
> 《あ、そういう仕組みなんだ》
> 《飯つき!?最高かよ》
> 《リュミちゃんもそこ住んでるの?》
「リュミさんはどうなんでしょう……今度聞いてみようかな。
たぶん、もう卒業してるんじゃないかって気はしますけど」
少し笑って、カメラを自分に戻す。
部屋は静かだけど、コメントがある。
たったそれだけで、“今も誰かと繋がってる”って感じられるのが、配信のいいところだ。
「……で、さっき言った“最近気づいた変なこと”なんですけど」
魔導石のログから、前回までのコメントを引っ張り出す。
「この世界の“日常っぽいの見てみたい”ってコメント、前にもらったんですけど……
あれ、今になって不思議で」
「この世界の人が見てる配信で、“この世界の日常を見たい”って、
ちょっとだけ……ズレてません?」
> 《ん?》
> 《まぁ深く考えるなw》
> 《謎コメントは昔からあるしな》
「もちろん、コメントって深く考えたら負けなとこありますけど。
なんかね、ふとした違和感がひっかかってて……」
(それが何かまでは分からない。けど、こういう小さな引っかかりって、
放っとくと、あとで“あ、あれが始まりだったんだ”ってなる気がする)
「……って話をしたところで、そろそろ今日の“実況”に入ろうと思います!」
魔導石を肩に装着し、部屋の外に出る。
今夜は、街の裏路地のナイトマーケットを散策する予定。
昼とは違う表情を見せる、街の“夜の顔”。
「じゃあ、ここからは実況スタイルでお届けします!
皆さん、夜の街へ、いっしょに行きましょう!」
足音と共に、静かな夜が始まった。
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