第19話 初めまして、でも名前はもう知ってた
次の日、街の中央通りのカフェテラス。
私は“フィーネじゃない方のフィーネ”さんと、約束通り落ち合っていた。
「おまたせ〜! あれ、もう来てたんだ?」
「はい、早めに来ちゃってました」
オレンジ色の髪が今日も元気に揺れている。
軽く手を振って席に着くと、すぐに話し始めてくれるあたり、やっぱりこの人は陽キャだ。
「昨日の配信、見直したよ! テンポよくて面白かった〜!
あたしも負けてらんないな〜って思って」
「そ、そうですか……ありがとうございます」
私はちょっと照れながらお礼を返す。
こういうの、あんまり慣れてない。
「でさ、そういえば、ちゃんと名乗ってなかったよね?」
「あっ、はい。えっと、リオナ・アメシスです」
魔導石を軽くタッチして名刺画面を表示すると、
相手も同じように操作して、自己紹介をしてくれた。
「私は、フィーネ・リュミエール! 一応ストリーマーやってまーす!」
「……えっ?」
「うん、そう。ギルドのフィーネさんと姉妹なんだ〜。
っていっても、性格は全然似てないけどね?」
「妹……だったんですね……!」
驚く私に、フィーネ・リュミエールはくすっと笑った。
「でさ、みんなあたしのこと“フィーネさん”って呼ぶと姉とややこしいから、
下の名前で“リュミ”って呼ばれてるの。そっちもそうしてくれていいよ?」
「わかりました、リュミさん」
「よろしゅーっ!」
(リュミって名前、かわいいし明るいし……お姉さんとはほんとに真逆だな)
(ギルドの“フィーネさん”と並んだら、逆に混乱しそう……)
「じゃあさっそくなんだけど、次の配信、なにやるか考えてる?」
「うーん、ゆるめの雑談でもいいですけど……
この間みたいな街歩きの続きとか、屋台紹介とか?」
リュミは少しだけ考えてから、パッと笑顔を見せた。
「じゃあさ、街の中で“自分のお気に入りの場所”紹介しあう配信とかどう?
どっちが視聴者の反応よかったか、勝負形式にしてもおもしろそう!」
「いいですね……ちょっとゲーム感も出せますし」
「うんうん、それでいこ!」
いつの間にか、会話のテンポも自然になってた。
リュミの陽キャっぽさに巻き込まれてる感じもするけど、
なんだか、それも悪くない。
「じゃ、次回は“街の推しスポット紹介コラボ”ってことで! 決まり!」
「はい、よろしくお願いします!」
魔導石をタップして、コラボ配信の予約を送信する。
画面には《リオナ&リュミ 初コラボ配信 近日公開!》の文字。
(視聴者さんも、リュミさんのこと気に入りそう……)
(“陽ストと陰ストのコラボ”とか言われそうでちょっとこわいけど)
配信でつながった縁だけど、
ちゃんと“誰か”と関係を築けてることが、ちょっと嬉しかった。
次の配信――
ただの雑談でも、街紹介でも、
誰かが楽しんでくれたら、それでいい。
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