第17話 次の配信、何しよう?
朝の光が差し込む簡素な部屋。
私はベッドの上で寝返りを打ってから、魔導石を手に取った。
(……昨日の配信、視聴数は……わ、またちょっと増えてる)
フォロワー数:112
切り抜きタグの使用数:17
リアクション率:前回比+8%
(配信って、続けるとちゃんと数字で返ってくるんだな……)
食堂へ降りると、ほかの冒険者たちがパンとスープを食べていた。
ギルド提携のこの住居施設は、
駆け出しの冒険者やストリーマーが最低限暮らせるように作られている。
朝と夜には簡単な食事が出るし、部屋には通信回線もついてる。
けど、一定以上の収入が得られるようになると、
“卒業”ってことで自分の部屋を探すのがルールだ。
(……いつか、ここも出ていくのかな)
そんなことを思いながら、パンをかじってスープをすすった。
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朝食を終え、街を歩く。
今日は予定がない。
だからこそ、次の配信のテーマを考えるにはちょうどいい。
「戦闘系はこの前やったし、冒険レポートも続けるけど……
次はもうちょい、ゆるめでもいいかな」
商店街では、旅の道具屋が新商品の紹介をしていたり、
路上パフォーマーが即興劇をやっていたり。
街のあちこちで、誰かが“何かを伝えようとしてる”。
(……伝えるって、配信だけじゃないんだよな)
歩きながらふと思い出したのは、昨日の配信のコメントだった。
> 《街のこともっと知りたい》
> 《現地レポ系もっと見たい》
> 《この世界の日常っぽいのも見てみたい》
(……この世界の“日常”?)
私は歩きながら、ふと立ち止まる。
「……この世界の日常って、見てる人もこの世界じゃないの?」
ぽつりとこぼれた自分の言葉に、ちょっとだけ鳥肌が立った。
でも、そのままポケットに手を突っ込んで笑う。
「……ま、コメントってそういうもんだよね。深く考えないでおこう」
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私は魔導石を起動して、即座にメモを開いた。
「“街歩き配信”――現地解説+屋台紹介とか?
……うん、これ面白そうかも!」
旅番組みたいに、街の景色を見せながら歩いて、
屋台の食べ物とか、地元の人との会話とか――
戦わない、でもちゃんと“伝える”タイプの配信。
「よし、次はこれでいこう!」
空を見上げると、青空の中にふわふわと浮かぶホログラム広告。
その中に、私の配信の切り抜きが少しだけ混ざっていた。
“異世界ストリーマー・リオナの冒険配信、話題沸騰中!”
「ふふっ……そりゃ大げさすぎ」
でも、嬉しかった。
誰かの目に、ちゃんと映ってる。
そう思えただけで、次の一歩を踏み出す勇気になる。
「次の配信、楽しみにしててよね――!」
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