第15話 救出されても、配信は終わらない
「そっちは無事か!?」
頭上から、ガルドさんの声が響いた。
私は魔導石に手をかざして、視界リンクを調整する。
「こちら、落とし穴の底からお届けしております――リオナです!」
> 《まだやってるw》
> 《まさかの実況続行中》
> 《強すぎん?》
> 《これでフォロー外すやつおらんやろ》
崩れた天井の向こう、ガルドさんの顔が見えた。
数人のサポート冒険者と一緒に、ロープと滑車を設置している。
「よく通信保ったな……ていうか実況してたのかよ」
「ええ、わりと普通に実況続けてました」
「お前、肝が据わってんな」
「言われ慣れてきました」
魔導石を首元に固定し、カメラの角度を微調整しながら、私は手を伸ばす。
ガルドさんの手がしっかりと私の腕を掴み、体が浮かび上がる。
崩れた穴から引き上げられた瞬間、
上空のカメラが私の顔を捉えていた。
埃まみれ、髪ボサボサ。けれど――
「無事、生還です!」
> 《帰還おめでとう!》
> 《おつかれ!!》
> 《これはまじで見応えあった》
> 《泥だらけでもかわいいのすごい》
地上の空気は暖かく、風が気持ちよかった。
太陽の光が差し込んできて、目が一瞬チカチカする。
「無事戻ったことを報告します。
本日の配信はここまで! 応援してくれた皆さん、ありがとうございました!」
魔導石を操作して、配信終了。
その瞬間、ガルドさんがぽんっと私の肩を叩いた。
「よくやったな。初仕事としては上出来だ」
「ありがとうございます。マジで落ちたときは死ぬかと思いましたけどね」
「落ちてもしゃべってたんだろ?」
「実況は止めないんで」
ガルドさんが吹き出した。
「……お前、配信向いてるな」
(――向いてる、か)
前世じゃ、そんな風に言われることはなかった。
数字に追われて、焦って、自分を見失って、
気づいたらバズらないまま終わってた。
でも、今は違う。
画面の向こうには、確かに“誰か”がいた。
コメントがあって、声があって、反応があった。
そして、誰かがこう言ってくれた。
『お前、配信向いてるな』
それだけで――今までの全部が、ちょっとだけ報われた気がした。
私は空を見上げた。
そこには、広告用のホログラムがふわりと漂っていた。
「……また、見てくれるといいな」
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