第14話 落とし穴の底で実況中です
「え、ちょ、ちょっと待って……!」
落ちた瞬間、魔導石のスタビライザーが自動で緩衝魔法を展開してくれたおかげで、ケガはなし。
けど、埃まみれ。足元はぐしゃぐしゃ。何より――
「これ、まさかの落とし穴……!?」
照明代わりの小型魔導灯を取り出して周囲を確認。
崩れた足元の先には、小さな通路のような横穴が続いていた。
どうやら、ダンジョンの“下層”に落ちたらしい。
魔導石はまだ通信状態を保っていた。
コメント欄にも文字が流れている。
> 《うわっ!? 落ちた!?》
> 《だいじょぶ!?》
> 《なんで実況続いてんのw》
> 《これは事故…?事件…?》
「えー、こちらリオナ・アメシスです。
現在、配信中に落とし穴へ落下し、絶賛孤立中です!」
どっとコメントが流れる。
> 《実況続行www》
> 《この子つよいな…》
> 《もはやプロ意識》
> 《ガルドは!?どこいった!?》
「現在位置、たぶん本来の通路よりひとつ下の層。
通信はギリ通ってますが、ラグが出るかもです!」
一瞬、頭をよぎった。
(これ、前世だったら絶対パニックだったな)
でも今は、違う。
誰かが画面の向こうにいて、コメントしてくれる。
“繋がってる”って感覚が、私を冷静にしてくれる。
「落ち着いて行動します。
まずは……上へのルートがあるか探してみます!」
通路を照らして進むと、壁に小さな足場が見つかった。
人ひとり分の幅しかないが、登れなくはなさそうだ。
> 《慎重にー!》
> 《これ配信で見るの緊張するやつ》
> 《落下配信→登頂配信に》
> 《ガルドどこいったんだよw》
「……ガルドさんとは、分断されたみたいです。
でも、連絡は取れるはず……って、あ。通知きてる」
《ガルド:無事か?位置確認中。動くな、迎えに行く》
「……はぁ、よかった……!」
安堵の息をついて、私はその場に座り込んだ。
魔導石のカメラが、少し上を向いて空洞の天井を映している。
「えー、というわけで、ただいま“救出待ち”モードです。
実況は、続けます!」
> 《鋼のメンタルw》
> 《でもその姿勢好きだわ》
> 《ここからが本番だな》
> 《落ちた先でも配信続けるストリーマーの鑑》
私は、カメラに向かって小さく笑ってみせた。
たとえ落ちても、
それを“ネタ”にできるなら、きっと大丈夫。
「だって、実況は止めないんだから」
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