第11話 冒険の前に、まずは装備を揃えなきゃ
《新規業務依頼が追加されました》
朝。
魔導石に浮かんだ通知に、私は思わず身を乗り出した。
画面には、昨日フィーネから受け取った依頼内容がしっかり表示されていた。
《【配信案件】Dランク討伐任務 同行レポート》
《日程:明後日 出発/帰還予定:当日夕刻》
《任務内容:草原帯の亜種ボア討伐》
《同行者:現地で合流(指名なし)》
《支給金:冒険準備資金として50リル支給済》
(……マジで来た)
もちろん自分で了承した案件だ。
でも、実際に“任務”として表示されると、急に現実味が出てくる。
私は寝ぼけた頭を軽く叩いて、立ち上がった。
「とにかく、装備揃えなきゃだよね……!」
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数時間後。
私はギルド近くの商業区にある防具屋にいた。
「新人用セット……たしかこれかな」
レザーの軽鎧、動きやすそうなブーツ、簡易の冒険者用ポーチ。
並んでる商品を見ながら、値札とにらめっこする。
(高っ……マジでこんなにすんの!?)
転生してきてから、ずっと素のままで生活してたから実感なかったけど、
この世界の装備って、びっくりするくらい“現実的に”お金がかかる。
支給された冒険準備資金――50リル。
これがこの街の平均1週間分の生活費らしいけど、装備揃えるにはギリギリ。
「……防具削ったら配信でバズる前に退場だし、武器は……うーん、杖? いや、短剣?」
迷いながら、私はショーケースの中にあった一本の魔導短剣に目を止めた。
軽くて、初級者向けのサポート魔法が刻印されている。
攻撃力は低いけど、“絵面映え”はする。
(これ、実況映えするやつだ……!)
武器ひとつ選ぶにも、“見せる意識”が抜けないあたり、もう配信者脳だなって思う。
結局、魔導短剣と最低限の軽装を購入。
あとは薬草入りポーチと、小型の魔導通信スタビライザー(※電波安定装置)をひとつ。
「――っと。これで、予算ピッタリ」
財布の中には、リルが一枚も残っていない。
支給金をフルで装備に突っ込んだ、ぎりぎりのスタート。
(やれることは、やった……あとは、やるだけ)
私は装備を手に、ふっと深呼吸した。
明後日。初の実地レポート配信。
もちろん不安はある。でも、それ以上に――
「……ちょっとだけ、楽しみかも」
手にした短剣が、かすかに光を放った。
それは、これから始まる“異世界ストリーマー”としての冒険の、最初の一歩だった。
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