第10話 ギルドで再会した彼女、そして“お仕事”の話
翌日。
私は、少し早起きしてギルドへ向かった。
「……たったひとりの雑談配信で、こんなに疲れるとは思わなかった……」
全力でしゃべった翌日は、全身が筋肉痛みたいな感覚。
でも、それも悪くなかった。
魔導石のステータス欄には「フォロワー:89」の文字が残っている。
数字って、目に見えるから嬉しい。
だからこそ、ちゃんと次の準備をしようって思えた。
目的はひとつ。**配信の収益化申請**。
ギルドを通して申請すれば、今後は投げ銭もアイテム提供も正式に受け取れる。
つまり“この世界で配信者として食べていく”ための第一歩。
案内を受けて、私は奥の窓口に通された。
そこにいたのは――
「また会ったわね」
金髪ボブに眼鏡。冷静で、ちょっとだけクセのある声。
フィーネ。ギルドのストリーマー審査担当。
「あっ、えっと、おはようございます!」
「リオナ・アメシス。フォロワー89人、視聴者推移良好、コメント密度平均以上。
昨日の配信、データ確認済みよ」
「えっ、見てたんですか!?」
「業務ですから」
無表情に言いながら、彼女は魔導石のデータを操作していた。
でも、昨日よりほんの少しだけ……声が柔らかく聞こえる。
「ひとりでよく喋ってたわ。耳もよく動いてたし」
「えっ、そっちの評価ポイント!?」
「コメント欄でも好評だったから」
「やめてくださいほんとに!」
少し笑いが漏れた。
フィーネも口元だけで、ほんのわずかに微笑んでいた気がする。
「申請は通すわ。今日中に認可が下りると思うから、次から正式に収益化できる」
「ありがとうございます!」
魔導石が光り、“Monetized”のアイコンが追加される。
それを見て、私は思わずガッツポーズを取った。
「それと……一件、提案があるのだけど」
「提案?」
フィーネが机の引き出しから、一枚の書類を差し出した。
《募集:ストリーマー連携冒険者レポート》
《内容:Dランク討伐依頼に同行、現場の様子を配信》
《報酬:ギルド報酬+配信収益加算(視聴数連動ボーナスあり)》
「これは……冒険者と一緒にクエストに行くってこと?」
「ええ。実地に近い配信が求められてるの。
いわば“ダンジョン実況”みたいなものね。現場で何が起こっているかを、リアルに届ける」
「……ちょっと楽しそうかも」
現場実況。臨場感。汗と空気と戦いの音。
やったことはないけど、ちょっと惹かれる。
「ただし、現地では回線が不安定になったり、機材の制限もある。
それに、あくまで安全第一。あなたはまだ新人なんだから、無理はしないこと」
「了解です……でも、やってみたいです」
「そう。なら、申し込んでおくわ」
書類にサインすると、フィーネはそれを受け取って書類棚に収めた。
その動作まで、なんとなくスタイリッシュに見えるのがちょっと悔しい。
「リオナ。あなたの“面白さ”は、まだ始まったばかりよ」
まっすぐにそう言われて、私は少しだけ背筋を伸ばした。
「じゃあ、現場実況ストリーマー――はじめてみますか」
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