第1話 バズらないまま、人生が終わった
――死んだ。
それが最初に浮かんだ言葉だった。
目が開かない。
手足が動かない。
でも、意識だけはどこかに漂っていた。
まるで、長時間配信のあと、そのまま椅子で寝落ちしたときみたいに。
脳だけが現実に取り残されたような、奇妙な感覚。
『はいっ、今日も配信おつかれさまでした~!』
『また次の枠でお会いしましょう~!』
頭の中で、自分の声がリフレインする。
――そうだ。私は、ストリーマーだった。
名前は、天城 理緒。
30歳。中堅どころのVストリーマー。
顔出しなし、トーク多め、そこそこの登録者。
「底辺」とは言われないけど、「人気」とも言われない。
そんな微妙な位置で、配信歴はもう6年目に入っていた。
毎日続けた。
深夜のゲーム配信、朝方の雑談、睡眠導入BGM風の耐久配信まで。
地味に伸びて、数字もそこそこついてきた。
でも――
(“バズる”ことは、結局なかったな……)
最後にやってた配信は、記憶がぼやけてる。
深夜3時、寝ぼけた頭で耐久企画の雑談をやっていた。
部屋は散らかっていたし、体調も万全じゃなかった。
けど、画面の向こうには誰かがいて。
コメントが数個流れて、それに返して――
……あれ?
そこから、何が起きたんだっけ。
画面がフリーズした気がする。
マウスを握ったまま、体が動かなくなって――
(……あれが、最期だったのか)
あまりに静かな死だった。
特別な事件も、大きな苦しみもない。
ただ、部屋の片隅で、配信をつけたまま息絶えた。
それを誰が気づいたのかも、もうわからない。
でも、たぶん数日後には話題になる。
「Vストリーマー、配信中に急死」なんて見出しで、
ようやくバズる。皮肉な話だ。
(もう、遅いけど)
そう思った瞬間――
視界が、ふっと白く染まった。
音も、匂いも、重力すら感じない。
代わりに、なぜか懐かしい“ログイン画面”のような光が、
目の前に浮かんでいた。
(これ……どこかで見たことある?)
画面に浮かぶのは、確か――
私が昔プレイしていた、とあるゲームのUIにそっくりだった。
配信でも何度か取り上げて、
地味に固定ファンがいた、あのゲーム。
「なんでこれが……?」
問いかける声は、誰にも届かない。
でも、ログイン画面は淡々と展開される。
【新規アカウント作成を受け付けました】
【配信者名:リオナ・アメシス】
【外見設定:ケモ耳・銀髪・18歳女性型】
【配信カテゴリ:冒険+雑談】
【初回ログインまで――5秒】
(は?)
何それ。
なにこの“人生の再スタート感”。
なんで“外見設定”がアバターなんだ。
え、ていうか――
私、**またストリーマーやらされるの!?**
気づいた時には、すでに体が落ちていた。
光の中に――真っ逆さまに。
本日5話一気更新!次回は17時!よろしくお願いします!
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