全身青色のコーディネートで身を包んだ女性
時間は過ぎ、空は青色からオレンジ色に、そして火が弱まるように、少しずつ暗くなっていきました。
青い鳥は、今日はもう終わりにしようと、街路樹に停まっていました。
その時、何気なく歩道へと視線を向けると、全身青色のコーディネートで身を包んだ女性が歩いているのを見つけました。
すると、青い鳥は再び飛んで、その女性の肩に停まりました。
「あら! 青い鳥さんじゃない! こんばんは!」
「青いお姉さんこんばんは! 僕に負けず劣らずの青の多さだね!」
「そうでしょ! わたし青が好きなの! 似合ってるかしら」
「もちろん! どうして数ある色の中で青色が好きなの?」
「そうね~、なかなか言葉では言い表しにくいのだけれど、好きっていう感情の前に青があるのよ」
「心そのものが青なのかな! 筋金入りの青色好きだね! そんなお姉さんに聞いてもらいたいことがあるんだけど、いいかな?」
「お姉さんになんでも言ってらっしゃい!」
「ありがとう! ちょうど昨日の夜のことなんだけど、僕は真っ暗な空に青い星を見つけたんだ」
「すごいじゃない! 簡単には見つけられないものよ!」
「それから、その青い星のことがずっと気になっていて、今日は一日中そのことについていろんな人の考えを聞いて回っていたんだけど、どうやらその答えは心の中にあるみたいなんだ」
「そうだったのね。それでそれで?」
「今度はその心がなんなのかわからなくて。わからないのが心だってところまではわかったんだけど、まだ肝心の答えにはたどり着けていないんだ。それで結局、何もかもわからなくなっちゃった」
「それは大変ね……。ところで、青い星はどうして青色なのか知ってるかしら?」
「温度が高いからだよね?」
「正解! もう少し詳しい話をすると、その温度っていうのは表面温度のことで、内部はもっと高い温度なの。たくさんの質量を核融合反応でエネルギーに変えて、それを出し惜しみせず外に放出するから青く見える。内側にそれほど高い温度を保っているなんて、とっても苦しそうだと思わない?」
「確かに……。内側にそれだけの苦しみを抱いているから、かえって外側は静かなイメージの青になるのかな……。もしかして、心っていうのも……」
「そう! わたしにとって心とは苦しみのことなの。苦しいから人の苦しみがわかるし、命の底から全てを救いたいと思って行動できる。せっかくある命も、不完全燃焼よりは完全燃焼で終わる方が良くないかしら?」
「そうだね。心という苦しみをエネルギーに変えて、命を使い切る。そうなると、そのためにはまず苦しみに向き合わないといけないな……」
「そういうこと。近頃の人たちは苦しみという闇から目を背けようとしている気がするわ。無限に続くような感じがして怖いのね。でもだからこそ無尽蔵のエネルギーになるの。青い空も綺麗だけど、夜空じゃないと青い星は見つけられないし、夜空がどこまでも続くから、その光がわたしたちの元まで届くのよ」
「そっか~。ということは、わからないからこそ知ろうとし続ける必要があるんだね」
「そういうこと!」
「お姉さん、答えてくれてありがとう! お礼に、僕が見つけた青い星を見せてあげるよ!」
「いいの?! 嬉しいわ! それならわたしの住んでるマンションの屋上に行きましょう! 空をさえぎるものが何もないの!」
青い服の女性と青い鳥は、女性の住むマンションに行きました。
マンションに着いてからは、今までのことを話しながら階段を上がり、ゆっくり屋上に向かいました。
屋上に着いた頃には、辺りは真っ暗で、空は黒のインクで浸されているように真っ黒になっていました。
青い服の女性がデッキチェアに座ると、肩に停まっていた青い鳥は、女性の手のひらの上に移り、青い星の見つけ方を教え始めました。
「目を閉じて、心の目を開けば見えるからやってみて」
「わかった、やってみるわ」
しばらくの間、一人と一羽は目を閉じて、ただ静かに同じ方向を向いていたのでした。