爆弾処理班の男
青い鳥は、のんびり空を飛んでいると、ショッピングセンターに囲まれた広場のベンチに、重装備の人たちが集まっているのを見つけました。
すると青い鳥は、その集団の中央目掛けて滑空し、ベンチに停まりました。
「青い鳥さん! ここは危ないから、どこか遠くへ逃げるんだ!」
「お兄さんたちはどうして逃げないの?」
「この爆弾を解除しなければならないんだ!」
「でも手が止まっているよ」
「この赤のコードと青のコード、どちらを切ればいいかわからなくてな」
「だったら青を切ろう!」
「どうして青なんだ?」
「根拠はないよ。でも、もう時間もないんでしょ? 迷ったままタイムリミットを迎えるくらいなら、どっちかを選んだ方がいいと思う」
「……。そうだな、そうしよう。(私は今から青のコードを切ります! 近くにいる皆さんは離れてください!)…………。みんな離れられたようだ。青い鳥さんも早く離れるんだ!」
「いいや、僕は残るよ」
「どうして?!」
「これは僕が提案したことだし、せっかく命をかけるなら、一羽でも多い方が心強いでしょ?」
「青い鳥さん……。了解した。(それでは今から切ります! 3! 2! 1! 0!)」
「……」
「……」
ほんの一瞬、昼間であるにもかかわらず、広場全体の時が止まったように誰もが静止しました。
その後、爆弾処理班の男がゆっくり目を開けて、恐る恐る爆弾に取り付けられたタイマーの方に視線を向けました。
不気味な赤い光で細かく時間を刻んでいたタイマーの時は、止まったままでした。
「……止まった。止まったぞ! (解除、成功しました!) 青い鳥さん、本当にありがとう!」
「これはお兄さんの手柄だよ! いや~ほんとに良かった~」
「どうしてこんな危険な賭けに出ることができたんだ?」
「僕は青い鳥だよ? それに、命は守るべきものでもあるけど、大事な局面では使うべきものでもあるからね! そして、全身全霊の行動は、実を結ぶものだ!」
「青い鳥さんには敵わないな。それにしても、ほんとに良かった……。」
青い鳥は、緊張が溶けて地面に座り込む爆弾処理班の男の肩に移動しました。
「実は、お兄さんに聞きたいことがあるんだ!」
「どんなことだ? 青い鳥さんにはいまさっき借りができたばかりだからな」
「実は昨晩、夜空に青い星を見つけたんだけど、それがすごく気になるんだ。お兄さんから見て、それはどうしてだと思う?」
「青い星か。 俺も何度かは見たことがある。 知りたいのはそれが気になる理由……か。俺は仕事柄、命を起点に考えることが多いんだが、何かが気になるのは、その対象の中に命が求める何かが含まれているからだと思うんだ」
「命が求めるもの……」
「そうだ。命が求めているから惹かれる。逆に、命が求めていないものは気にならないどころか、気づくことすらできないんじゃないだろうか」
「言われてみたらそうかもしれないな~」
「現代ほど命を大事にしている時代はないが、現代ほど命を軽視している時代もない。俺は、命と心は表裏の関係になっていると考えている。命であり心であるものは目に見えないために、現代では全く存在しないことにされてしまった。青い鳥さんの知りたい答えは、その存在しない存在の中にあるんじゃないか?」
「存在しない存在か……。探してみようかな」
「そうするといい。 きっと見つかるはずだ」
「お兄さん本当にありがとう!」
「いやいや、命を救ってもらった借りは、まだまだ返し切れていないさ」
「そんな、貰いすぎたぐらいだよ! それじゃあお兄さん、これからもご無事で!」
「ああ、青い鳥さんも」
「じゃあまたね!」
そう言うと、青い鳥は旋回してから遠くへ羽ばたいていきました。