理科の先生
青い鳥は次に、近くにある中学校の開いている窓から教室に入りました。
中では、白衣を着た先生がガスバーナーで火をつけていました。偶然入った教室は、理科室だったようです。
青い鳥は、机の真ん中の蛇口に停まりました。
「おはようございます先生! 先生は今何をしているの?」
「青い鳥さん、おはよう! 今は実験のリハーサルを始めたところだ!」
「そうなんだ! どんな実験をするの?」
「食塩の溶解度が温度を変えてもあまり変化しないのを確認した後、そのまま食塩水を蒸発させて、食塩を回収しようというものだ!」
「マッチポンプな実験だね!」
「学校の授業は基本的に出来レースだから、これもその一種かもしれないな!」
「ところで、青い炎って、そのガスバーナーもだけど、すごくよく燃えるよね!」
「青い炎は空気とガスが調和しているんだ! だから完全燃焼できる! そして温度が高い! 何事もすべてが調和した状態で最も力を発揮できるのかもしれないな!」
「いや~、それほどでも~」
「青色は命の色であるとも言えるぞ! 植物が緑色なのは、主に青い波長の光を吸収して残った緑色の光を放出するからなんだ。だから青い光とは、太陽から命を届けている光だと言えるわけだ!」
「じゃあ青いものは、命を完全燃焼しているってことになるよね! 青い鳥の身からすると、鼻が高いな~」
「青い鳥さんは、命を運ぶ天使なのかもしれないな!」
「あの〜、命と一緒に疑問も持ってきちゃったんだけど、聞いてもらってもいいかな?」
「もちろんだ! なんでも聞いてくれ!」
先生は、ガスバーナーを静かに止めました。
「昨日のことなんだけど、夜空に青い星を見つけてから、それがすごく気になっているんだ。 あの星は一体何者なんだろうって」
「青い星か! 近頃は科学技術や情報技術が発達したことで、簡単には見えなくなってしまったな。今や多くの人にとっては、知識の中にしか存在しないものだ。その青い星について、科学的な説明はいくらでもできるが、もっと違うことが知りたいんじゃないか?」
「そうかも! 今は科学の先生が科学でないことに抱いている考えが気になるな!」
「いいだろう! そもそも、科学は現象を解き明かすものだ。しかし、現象は現象でしかない。線が引かれているだけの塗り絵のような状態だ。それにどんな色をつけるか、どんな意味や価値を与えるかは、各々が自分で決めるものだと思う。だから、その答えは、いろいろな人と出会って、いろいろなものを学んで、それを基に自分の中で創り出すべきものなんじゃないか?」
「自分の中で創り出す……。そこが重要なんだね」
「その通り! 自分の中で大きな存在であればあるほど、その意味や価値の決定を他人に委ねてはいけないんだ!」
「そうだね! 僕も、いろんな人に会って、自分の答えを生み出すとするよ! 先生、色々と教えてくれてありがとう!」
「先生は教えるのが仕事、お安い御用さ!」
「それじゃあ僕は行くよ! ありがとう先生! 実験、気をつけてね!」
「お気遣いありがとう! そちらも気をつけて!」
「じゃあまた!」
青い鳥は、一枚の羽根を残して、入ってきた窓から外へ出ていきました。