歴戦の釣り人
まず手始めに、朝が早い歴戦の釣り人に聞いてみることにしました。
「釣り人さん、おはようございます!」
「青い鳥さんじゃないか。おはよう」
青い鳥は、釣り人の前にあった手すりに止まりました。
「今日はお魚さん釣れてる?」
「いいや。今日は水面が穏やかで、あまり釣れていないな」
「そっか〜。たしかに波打ってなくて、下にも空があるみたいだもんね」
「さすがは空に生きる者の言葉だ。では、なぜ海は青いのだろうか」
「そうだな〜。お魚さんたちにも、青い色を見せるためじゃないかな!」
「なるほど。青い色に意味があるのだな」
「釣り人さんはどう思う?」
「……難しいな。青い鳥さんが来るまで考えていたことなのだが、どうやら私は今までの人生、考えてもすぐには答えの出ないものを、初めからなかったことにして生きてきたようだ」
「そうだったんだ〜。じゃあ、今から考え始めようよ! 釣り人さんの人生はいつも釣り人さんが先頭だよ! 今から始めても一番乗りだ!」
「それもそうだな。手遅れなことなど何一つなかったのか」
一人と一羽は、少しの間、海を静かに眺めていました。
その静寂を破ったのは、青い鳥の方でした。
「そうだ! 聞きたいことがあったんだ! 釣り人さん、僕は昨日、夜空に青い星を見つけたんだけど、それって一体何者だと思う?」
「夜空に星か。昔は時折見ていたような気がするが、気付かないうちに夜空さえ見上げないようになっていた。青い星がそんなに気になるのか?」
「そうなんだよ〜。自分を無理矢理納得させることもできなくて」
「そうだったか。だが、私はついさっき閉じていた目を開き始めた身だ。悪いが力にはなれそうにない。それでも、丸め込めないどころか、突き動かしてしまう衝動だ。そこに青い鳥さんにとって大事な何かがあることだけはわかるぞ」
「大事な何かか〜。たしかに、目を背けたらダメな気もしてたんだよね。はっきり言ってくれて、救われた気がするな!」
「そうか。それは良かった。私もこれから探すとしよう」
「きっと見つかるよ! それが見つかったら、海が青い理由と合わせてぜひ聞かせてね!」
「もちろんだ」
「じゃあ僕はそろそろ行くよ!」
「そうか。ではしばしの別れだ」
「そうだね! ありがとう! お達者で!」
青い鳥は、歴戦の釣り人の元から青空に向かって飛んでいきました。