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サンセットビーチ

 国立競技場では要人を避難させた後安全確認の時間を取ってからプログラムを大幅に短縮され開会式が終了した。お陰で観客はマイバッハ会長の長いスピーチを聞かなくてすんだ。マイバッハ会長を狙った狙撃があった事は伏せられ爆発は開会式演出上の手違いという事にされた。

 甲武ヒロシは極度の疲労のため入院中だ。バイオメカトロニクスサポートマシンの機械体操は評判を呼び、またとないプロモーションとなった。甲武氏はまたマシンに乗ってテストしてくれるだろうか東博士が心配している。

 首都高のトラックをパルクールする謎の集団が現れたという噂が流れ映像も流出した。これは甲武ヒロシだと推測する者もいたが開会式後マシンの調子が悪くなりメンテナンス中という事にして無関係だと言い切った。

 スカイツリーにパトカーが集結した騒動については爆破予告の通報があったがイタズラだったという事にした。

 とまあ騒ぎが拡大しないようにマスコミやネットにあらゆる対策が取られた。

 タカシは自分の映っている画像をプリントアウトして警備チームの詰め所の壁に貼ったが小出康夫にすぐ剥がされた。


 肝心のバイオメカトロニクスサポートマシンの調査だが 保管してあるマシンの残骸のコントロールユニットからAI部分のチップが無くなっていた。それは密封された容器で落下したぐらいでは外れないと東博士は主張した。そのチップが無ければ何が原因で暴走したのか全くわからない。事件の解明は暗礁に乗り上げた。残骸を保管していた楝の監視カメラに見慣れない初老のビルメンテナンススタッフが映っていたが何も分からずじまいだった。


 オリンピックも終了し世間が事件を忘れかけ秋も深まって来た頃、マイバッハ会長がオリンピック誘致に関わる汚職で逮捕された。逮捕は連鎖を呼びオリンピック存亡に関わる一大スキャンダルに発展した。とある女性平和活動家が再発を徹底的に防止すると言って事態を収拾した。そして彼女が次のIOCの会長になった。しかし彼女も背後に後ろ暗い連中がいると噂されている人物だ。


 日本から遠く離れた外国のどこか、黒の大型セダンが海へと続く一本道を走っていた。昼をだいぶ過ぎ夕方にも届かない時間だ。すれ違う車も歩いている村人もいない。

 後部座席に座っているスーツ姿の男が隣に座っている男性に話しかけた。

「その筐体は気に入ってもらえたか?」

 AIノバディは東博士の作ったマシンよりも格段にパワーが劣っているがほぼ人間そっくりの見た目のその身体の感想を述べた。

「まあまあ。」

「まあまあか。」

 スーツの男は返答に不服そうだった。なんとも特徴の無い顔だとAIノバディの新しいボディの顔を見て思った。

「アップデートは別料金だ。」

 男は言ったがAIノバディは何も答えなかった。代わりに言った。

「その辺で降ろして下さい。海まで歩いて行きたいから。」

 男は車のドライバーに止めるように言った。ドアを開けて外に出ようとしたAIノバディに一枚の写真を見せた。

「これ何だか知らないか。」

 写真にはトラックの屋根にしがみついている妙な昆虫の様な覆面をした人物が映っていた。

「わかりません。」

 と答えスーツの男に別れを告げAIノバディは海に向かって歩き始めた。スーツの男はしばらくその後ろ姿を見ていたが車に乗り込み来た道を引き返して行った。

 AIノバディは潮の匂いが濃くなってきたのを感じた。海岸に着いたら砂浜に座り海に夕日が沈むのを見ようと思った。明日の事はそれから考えよう、そう思った。





最後まで読んでいただきありがとうございます。よろしければ感想などいただけましたら幸いです。

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