警察
翌日新たな警察の捜査チームが科研を訪れた。
昨日訪れた刑事も引き継ぎのため来ていた。
科研側に同席したタカシを見てぎょっと驚いた。防犯カメラに映った覆面の空き巣犯がスーツを着て座っている。
東博士は科研から失踪したのは2名で1名は著名な甲武ヒロシ氏でもう1名は然る大物政治家の親族で名前は明かせない事。その彼は昨夜帰って来たと報告した。
治療のストレスで脱走したのだとタカシはボイススピーカーを使って喋り謝罪した。
東博士は彼は先天的免疫不全症でこれは抗菌ルーム外活動用のバイオスキンだと説明した。
昨日はその事について何も話さなかったし脱走の時は着ていなかったと刑事は指摘したがその声は科研上層部の政治力にかき消された。
強化STAP細胞の実験と本郷タカシについては秘密にしておこうという意向だ。
実験の倫理上の問題と変身後の能力について世間に知られたらパニックに成りかねない。
甲武ヒロシの捜索に集中する事になった。
東博士は甲武ヒロシの乗っているマシンについて説明し外部からのリモート操縦ではなくAIの暴走だという見解を述べた。
非常停止スイッチはマシンの手の届かない背中にあると説明した。
捜査本部は警視庁に置かれる事となり進展があれば連絡するという事でその場は解散となった。
刑事は不満そうだったが警察上層部からの圧力では自分の首に関わるのでそれ以上の追求は諦めた。
警察が帰ったあと本郷タカシの身体検査が始まった。
とりあえず採血、レントゲン、CTスキャンが取られた。その後身体能力の測定をした。
その身体の構造の変化に緑川博士は目を見張った。
皮膚が昆虫のように外骨格化し骨も残っている。そしてこの筋力の源は何なのか。
生物学上ありえない全く新しい生物が誕生してしまった。ある程度こうなると予想していたからこそ抑制装置を付けていたのだがまさかここまで変身するとは。
人間を遥かに上回る身体能力は使い方を誤れば人類に危険を及ぼすかもしれない。
意識はまだ人間のままの様だがこの先変化するかもしれない。
怪我の治療目的の研究だったが軍事にも転用可能な技術になってしまった。
捜査本部は甲武ヒロシの乗ったバイオメカトロニクスサポートマシンの消息を追っていた。
相模原市内の自動車ディーラーから盗まれた盗難車の軌跡をNシステムで用賀PAまでは追う事ができ、そこから顔認証防犯カメラで渋谷止まりの田園都市線に乗るところまでは確認できた。
その後の足取りは掴めなかった。都内に潜伏してしているのだろうか。見失って数日が経とうとしていた。