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科研再び

 緑川博士と東博士は午前中から来所した警察の対応に追われていた。研究所の破損箇所の実況見分の傍ら刑事が二人に写真を見せた。

 それは最近頻発している空き巣の被害にあった店の防犯カメラに映った不審者を抜き出したものだった。写真には別々の店で窃盗を行うヒロシを乗せたマシンと妙な服装の人物が写っていた。

 何か知らないかと聞く刑事は写真を見る両博士の表情を伺っていた。

「このマシンはうちのです。」

 東博士はもう隠す事は出来ないと観念して事態の経緯を刑事に説明した。険しい表情で説明を聞く刑事は今まで隠していた事を咎め捜査に協力する様要請した。

 写真が荒く乗っている人物の表情は確認出来なかったがヘッドセットが首に掛けてある事に気づいた。

 もう一方のなにやら正体の分からない服装と覆面をした者については分からないと答えた。緑川博士は何か察した様でその表情は刑事に見られていた。

 とにかく極秘の研究に関わる被験者の失踪という事件に変えて捜査チームを編成する必要があるので改めて出直すと告げて刑事達は去った。

 次々と起こる問題に両博士は焦燥していた。

「マシンが勝手に動いている。」

「強化STAP細胞の進行で変身してしまった。」

 頭を抱える二人だった。


 タカシは山の中に潜んでいた。日中の暑さを凌ぐためだ。バイクは警察に持っていかれてしまったから特にやる事も無く夕方からの交渉のため準備するつもりだった。

 とはいっても仲介役の穂高夏子の交渉力に期待するのみで特に準備する事はなかった。

 リュックの中から夏子が持たせてくれたフルーツケーキを取り出しかじった。ブランデーが染み込んだそれは固く重量感があった。せっかく名人が作ったケーキだがうまく食べられない。タカシは食べかすが散らばらないように手を下顎に添えて食べた。

 相変わらず研究所でリハビリしている前の記憶が無い。心の中に巨大で真っ暗な空間がある。いつか記憶が戻って来るだろうか。


 日が傾き始めタカシは科研の正門の前の太い木の枝の上に移動した。

 夕方暗くなり始めた頃、夏子の車が向かって来るのが見えた。タカシは夏子にだけ見えるよう木陰から手を出して振った。夏子は気付いて小さく手を上げた。

 スマートフォンを取り出し緑川博士を呼び出した。


 すぐに緑川博士は研究室から降りてきて夏子を見つけると小走りで駆け寄って来た。

「いやぁ今日警察が来てね。」

 緑川はタカシが変身して空き巣をしているらしい事を話した。

「知っています。」

 夏子はタカシの隠れている木に向かって目配せすると人影が降りて歩いて来た。容姿が確認できるほど近くまで来ると緑川は言った。

「あ、いた。」

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