実況29 HARUTOと決着をつける方法(解説:鞭使いINA)
【システム:RYOさんとのロマンス関係が承認されました】
今晩の夕食を食べる為のお店を予約した瞬間、そのメッセージが脳に捩じ込まれた。
いや、これを読んでいる老若男女諸君、勝手な想像は止めて貰おう。
あたしとRYOの間に、世間一般で“恋人”と定義されるような事はナニも無い。
……あたし達の“相棒”は、そんな安い関係では無いのだから……と、あたしの方は思ってる。
まだテンプル騎士団に居た頃だったかな?
あたしから言ったのか、彼の方から言い出したのか、ちょっと思い出せないのだけど、成立すればスキル優遇が受けられて儲けもの、と言う理由で申請だけはしてあったんだった。
所詮は運営AIが、機械が勝手に定義したロマンスだと言う事。
恐らく、これまであたし達が二人きりで戦って来た事実が、そう判定させる大きな材料だったのだと推測する。
前ゲームからの付き合いであると言う情報も、当たり前に取得されているだろう。
そして、今しがた、久々に二人だけで食事でも、と思って店を取った瞬間に“ポイント”がロマンス承認の水準に達したのだろう。
……どんなお店を予約したか?
倶利伽羅竜だとか、五頭竜だとか、最高級和竜のフルコースが食べられるお店。
同価格帯なら、あたしはスレイプニルの馬刺とかペガサスの手羽先の方が好きなんだけど。
相棒が竜肉好きだから。
あたしと彼も、これから生命樹本体を攻める。
その前の景気付けって所だ。
「メッセージ、そっちにも届いた?」
相棒と合流してすぐ、あたしは訊いた。
「ああ、ばっちり来たよ。ちょっと今更感はあるが、もらえるモンはもらっておこう」
彼もまた、軽々と答えた。
「ヤツと、ケリを付けるんだろう?」
流石、RYOだ。よくおわかりで。
「生命樹の鼻先で、やってやるよ」
そこでなら、あいつを襲っても、今更赤フォントがどうとか言ってられなくなる。
一度限りのチャンスではあるけど。
あたしは、このゲーム限りのラスボスになんか興味は無い。
あたしのーーあたし達のラスボスは、永遠にHARUTOただ一人だけ。
「……なら、良い案がある」
相棒が、とても手際よく、自分の仮想端末を展開し、あたしの鼻先に持ってきた。
まるで、あたしと落ち合う前から予定していたような、そんなスムーズさを感じるけど、それよりも、
「せっかくロマンス関係になったんだ。
こんなスキルスクリプトは、どうだ?」
彼の表示したスクリプトを読んで、数秒。
内容は、すぐに理解出来た。
これは……このスキルは、そんな、
正気なの? RYO。
今、この時だけ、あんたの事が解らない。




