実践練習前
あの後、エマと話をしたが、やはり双剣も不遇な扱いを受けているようだった。内容としては攻撃はともかく、防御はどうするんだ?というものだった。
エマ自身は双剣でも十分防御出来ると思っており、それを見せる場面がないのが、もどかしいと言っていた。
「せめて対人戦でもあればなぁ」
「あっ、それならあるらしいよ。うちのところの先生が言ってたよ」
「ほう。そりゃあ楽しみだ。両手盾を舐めてるとどうなるか、教えてやらないとな」
「双剣を操る者として、同じ気持ちだし、応援する」
その会話を最後に今日は寮に戻ることにした。部屋に戻ったが、タツノリがいない。不思議に思っていると、後ろから声をかけられた。
「よう、そっちも自主練終わりか?」
「ああ、ってことはタツノリも自主練してたのか」
「そりゃあ、意気揚々と自主練しに行くのを見せられたら、こっちもやる気になるってもんよ」
そういうものかと思いながら、寝床につく。今日一日だけでも、経験したことが多過ぎて頭の中で振り返るのもキツイ。まずは指先から炎を出しすぎてしまったこと。次にドラゴンの炎で的を撃ち抜いたこと。タツノリ、エマ、レナと一緒に進級したことだ。
朝。昨日は知らないうちに眠っていたようだ。タツノリももう起床している。
「朝飯食べに行こーぜ、ライト」
「おう」
朝食を食べに来ると、エマとレナを見かけた。
「一緒に食おうぜ」
とエマとレナに話しかける。
「良いよ」
「勿論です」
二人に許可を貰ってから、タツノリと一緒に席に着く。朝食は卵スープの良い香りがしてきた。バタートーストと一緒に食べるウインナーも美味しい。
今日は朝一から講義だの昨日の自主練は捗っただの会話しているうちに朝食の時間はあっという間に終わってしまった。
朝一の講義は火属性の仕組みに関してだった。火属性は水属性と反発しており、風属性と親和な関係だと教わった。地属性とはニュートラルな関係らしい。火属性と水属性は反発しているが、決して相性が悪いわけではないということも説明された。
「レナちゃんみたいな天才だと、組み合わせる魔法の数にも困りそうだな」
タツノリが話しかけてくる。
「逆じゃないか?天才だからこそ組み合わせる魔法の数にも困らないみたいな」
「なるほど、そういう考え方もあるな」
午後からは、魔法を用いない実践形式のバトルが行われると聞いた。内心、ガッツポーズなライトであった。タツノリは不敵な笑みを浮かべて、
「ライト、この俺に勝てるかな?その両手盾で」
と煽ってきた。
すかさず
「ああ、勝てるともさ。盾が防御するためのものだけだと思っていると、痛い目をみるぞ」
と言い返す。
午前中は各々の武器の整備に時間を割き、昼食の時間になる。
先ほどまでの整備の時間で「盾職人」と「刀職人」のレベルが上がっていた。そう、盾の間に仕込まれた刀を整備するために「刀職人」を取得していたのだ。
「二学年生全員で対人戦をするみたいね」
エマがそういってきた。
「望むところだ。盾がどれだけ攻撃に向いているか教えてやるチャンスだ」
「私もよ双剣の凄さを教えてあげなくちゃね」
「へー、エマちゃんは双剣使いなんだ。意外だね」
「そうよ。双剣でも防御くらい出来るんだから」
「レナはどんな武器を使うんだ?」
「私は杖を使います。魔法特化みたいなものなので、少しでも魔法の威力を上げたいんです」
「へえそれは良い考えだね。でも今日は魔法無しの実践練習みたいだけど、大丈夫?」
「じ、実は全然自信がないんです。攻撃も防御も上手くいかなくて・・・」
「そっか。それは大変だね。杖術みたいなのは習ったことないの?」
「はい。独学だけで、稽古みたいなことはしたことがありません」
それは大変そうだな、と思うライトだった。
「まあ、誰かしら杖術については知っていると思うし、弟子入りするのも一つの手じゃないか?」
「はい、そうしたいと思います」
決戦は午後からだ。昼食を軽めに取りながらライトとエマは闘志に燃えていた。