大蜥蜴討伐
エマにチョコレートを渡しに来た。
「おーい、エマいるかー?」
「いるよ。何か用?」
エマはちょっぴりクールな美女だ。
「ダンジョン踏破記念。お宝のチョコレートをお持ちしました。」
ライトが恭しく頭を下げる。
「そんな貴重なの貰っちゃて良いの?」
「勿論、エマになら特別にどうぞ!」
チョコレートを一粒手に取り、咀嚼するエマ。
「ほろ苦くて、中にはお酒の入っている、大人のチョコレートね」
「味はどう?」
「美味しくて大好きよ」
「それなら、後の分はエマが食べちゃって良いよ」
「そういうわけにはいかない。せっかくのお宝なんだから、ライトがもっと考えて使って」
「分かった。それならこっちはどうする?」
ライトが見せたのはブラックスライムの切り刻んだ一欠片だ。
「なあに、それ?寒天?」
「ブラックスライムだよ!エマも、鉄の胃袋もってたよね?」
「うん、持ってる。じゃあ一欠片頂きます」
そう言って、十分に咀嚼すると
「みずみずしくて美味しい。こっちの方が好きかもしれない」
と、興奮している。
「じゃあもう一欠片渡しておくね」
「ありがとう。とても美味しいわ」
この後は、管理センターへ行くことにした。管理センターではクエストと言って、モンスターの討伐依頼などが貼ってある。今回は先にスライムダンジョンについて報告しにいこう。
「すみません。ダンジョンを踏破したので報告しに来たのですが、どなたが担当者さんですか?」
「はい、こちらのお席へどうぞ。それでどのダンジョンをクリアされたのですか?」
「はい、スライムダンジョンを踏破しました。ダンジョン番号は、ええっと・・・」
「大丈夫ですよ。ダンジョン番号は78132番ですね。それでお宝はなんでした?」
「ブラックスライムのチョコレート(箱詰め)でした。もう口をつけてしまいましたが」
「それでも粒単位で取引も可能です。よろしければ何粒か売って頂けないでしょうか?」
「それなら10粒売ります」
「はい、ありがとうございます。オークションの後、金額が振り込まれるのでご確認下さい」
「はい、こちらこそありがとうございます」
ライトはクエストを見てまわることにした。掃除、護衛色々なものが貼ってある。
「おっ、これは」
大蜥蜴の討伐依頼である。紙を剥がして、カウンターへ持っていく。
「これお願い出来ますか?」
「はい、了解しました。期限は一週間後までです」
無事手続きも完了し、大蜥蜴の討伐に行くことにしたライト。大蜥蜴は山の中腹のダンジョンににいるらしい。
大蜥蜴のダンジョンは一言で言えば、蜥蜴と亀のダンジョンだった。蜥蜴の方は逃げ足が速く、特に攻撃もしてこない。一方、亀の方は好戦的で甲羅もあって守備力が高い。だが、頭を出してくる瞬間に盾の刃で首を切り落としたら一撃だった。カミツキガメみたいだなと思った。
大蜥蜴に会えたのは、十階層でのことだった。大蜥蜴の名に相応しく、全長は三メートルを越えている。ライトは真正面からぶつかっていった。大蜥蜴が油断していたのもあるのだろうが、ガシャンとぶつかった時、かなり怯んでいるようだった。逃げようとする大蜥蜴に盾の刃をくらわせる。すると大蜥蜴は倒れてしまった。死んだふりかもしれないので、何度も切りつけてやると、焦って動き出そうとした。やはり死んだふりだったかと思いながら首を切り落とした。
管理センターへ戻ると大蜥蜴討伐の証に頭だけ取られた。他の部位は好きにして良いらしい。
「はい、大蜥蜴討伐分の報酬です」
の言葉と共に300シルバーが置かれる。
「ありがとうございました。それじゃあ」
帰路に就く。
家に着いてから、大蜥蜴の料理を始める。皮を剥ぎ、爪を取ってから肉になったそれを一口大に切っていく。溶き卵と小麦粉を浸けたら、油に投入していく。そして出来上がったのは、唐揚げだった。
「よし、旨い」
ダンジョン産の食材は一応、鉄の胃袋をセットしている人にしか食べさせないようにしている。なにかあっても困るからだ。
盾のスキル、両手盾のスキル、鉄の胃袋、料理人のスキルが向上した。