『ノラネコの研究』――華麗なる猫ストーカー
『ノラネコの研究 たくさんのふしぎ傑作選』
伊澤雅子/文 平出衛/絵
福音館書店/発行 (1994.4出版)
◇ ◇ ◇
お休みのときに歩く散歩コースに必ず猫がいるスポットがありまして、でも絶妙に手が届かない植え込みの陰にうずくまっているので触らせてもらえず、チュー○と猫じゃらしを持参しそうになる自分と葛藤する今日この頃です。
月一更新を目標にしていましたが、まさかの隔月更新になってしまいました、すみません。来月は頑張ります。
今回は満を持して猫本を投入です!
これは初版が1994年、ということでずいぶん前の本なのですが、大好きなのでご紹介します。児童書で、大変良書だと思われます(私基準ですが)。
簡単にいえば猫ストーカーの本です。
ふふふ。身近にいたら引くレベルですよ。
近所のノラ猫をストーカーして、どんな一日を送っているのか調査する、というちょっとおかしな一冊です。小学生向けなので大変平易で読みやすく、絵がたくさんでかわいらしい。素敵。素敵本です。図書館には大抵あると思うので猫好きはぜひ読んでください。でも小学生にはあんまりおすすめしない。真似したら危ないから! 興味持って研究者になってくれたら、それはそれで嬉しいけれど。
真似するならご家族に必ずお知らせしておきましょう。なんならご近所にもよくよく事情を説明しておきましょう。万が一にも、警察を呼ばれないように。
さて、少しご説明をいたしましょう。
これはもともと福音館書店『たくさんのふしぎ』という月刊の科学雑誌で出版されたものを「傑作選」というシリーズとして再刊行されたものです。
福音館書店は『こどものとも』『かがくのとも』など各年齢別に月一で雑誌という形態で絵本を定期刊行しています。普通の雑誌のように様々な記事が載ったものではなく、一冊まるまる絵本として届けられます。雑誌のときはソフトカバー、そして人気があるタイトルは後にハードカバーで再出版されます。
『たくさんのふしぎ』は小学生向けの科学雑誌で、児童だけでなく、大人も楽しめる内容になっています。読んでいて楽しいです。とても。
今回紹介した本ももちろん、最初は雑誌として出版されています。1991年10月号です。雑誌の方は残念ながら読んでいません。私が初めて読んだのは傑作選のハードカバーの方でした。ハードカバーだとやはり絵本感がありますね。
九州の海辺の町に住む一匹のノラネコ、ナオスケの一日を追うストーリーとなっています。猫の後を気づかれないようにそっとつけ回し、猫が立ち止まればそこで待ち、見失えば必死で探し、夜は猫が寝るまで我慢して寝たら路上で就寝、新聞屋さんの自転車の音で猫と共に目を覚まし……、という。マジか。研究者、おかしいぞ。完全な不審者です。かわいらしいイラストが全面に描かれているおかげで不審者感は薄まっておりますが。自分なら、と想像すると世間の目が気になって、できる気がしません。さすが、研究者。すごいぞ、研究者!
さり気なく猫の行動の記録が記されると共に、随所に猫の習性が「ネコ社会のルール」として差し挟まれており、無理なく猫について学べるようになっています。
観察することで、なぜそういう行動を取っているのかがわかってくるのですね。
……うぅん。私が猫に嫌がられる理由がよくわかりました。
猫を見つけると、ついじいっと見てしまいます。だからか!
これ、一番駄目なやつ……。
だって、目を離した隙に逃げられそうだから、つい。うぅ。
しかし、この本。猫ストーカーの本なのに、不思議となごむのはなぜでしょう。
絵がかわいらしいからかな。
ここに出てくる猫が本当にかわいいのです。動きや時間経過も自然でわかりやすく、自分が一緒に猫を追いかけている気持ちになるのかもしれません。
お忙しい年末年始、お疲れの方にはぜひ絵本をお勧めします。
一冊読み切るのに十分もかからず、たいした時間も必要としません。
それでいて、頭を適度に柔らかくしてくれて、ほんわりゆったりした気持ちになれますよ。
お近くの図書館には大抵あると思います。
そして、大抵借りられてはいない。ひっそりと棚の隅にあるはずです。
よろしければ、ぜひ一度手に取ってください。