『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』――あれ、間違ってなくない?
『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』
福井県立図書館/編著
講談社/発行 (2021.10出版)
◇ ◇ ◇
数年前に同僚から、「福井県立図書館のホームページに『覚え違いタイトル集』というのがあって、面白いから見て」と勧められ、以来、時々覗いてはくすり、と笑って楽しんでいました。
最近ではニュースの特集やネット記事などにも取り上げられていましたので、ご存知の方も多いかもしれません。書籍化されるのもさもありなん、という感じです。
記念すべき連載1回目はこちらを取り上げたいと思います。
図書館には利用者の質問に答える「レファレンス」というサービスがあります。
「こんな本ある?」「こんなことを調べてるんだけど……」と気軽に尋ねると、図書館の司書さんが、ふさわしい本を探してくれます。なかでも特定の本を探す所蔵検索は一番よくあるレファレンスなのではないでしょうか。
福井県立図書館ではホームページでレファレンス事例を公表しているのですが、この「覚え違いタイトル集」(※1)もそのひとつでした。
なんですかね、人の間違いを笑うのはよくないのですが、でもセンスある勘違いって不思議と面白いのです。糸井重里さんの『言いまつがい』(※2)を読まれたことがある方はわかりますよね。この事例集も時々お腹が捩れそうになります。
本のなかからいくつか事例をご紹介しますと、
『100万回死んだねこ』
『衝撃の巨人』
『八月の蝉』
『背中を蹴り飛ばしたい』
……など。一瞬、あれ、間違ってなくない? と思ってしまいます。
でも、なんか微妙に違うかも? あれ、なんだっけ!? と、なります。
(どこが違うかわかりますか? 正解は、本を読んでくださいね)
今はインターネットでぼんやりとした検索語を入れてもヒットするので、特に困らない、という方も多いと思います。けれど、図書館でいざ検索しようとすると「あれ、合ってるはずなのにない?」となってしまいます。図書館の検索システムは一文字違ってもヒットしない、という厳しい検索方法を取っているところが多いのです。Google先生に慣れてしまうと、正しい本に行き着かなかったりするのですね。ですが、そこで帰ってしまうのはもったいない。見つからなかったら、ぜひ、司書さんに訊いてみましょう。
うろ覚えの時ほど、司書さんの本領発揮です。
名探偵のように、正しい本に導いてくれるかも。
さて、こちらの本ですが、覚え違いのタイトルだけが前のページに、次のページに正しいタイトルと司書さんの所感、本の紹介があります。
有名作品が多いのですが、私は思いのほかうろ覚えだったようで「あ、なんだっけ、これ? わかりそうな気はするんだけど……!」と若干脳トレのようにもなりました。もはや連想ゲームに近いものもあります。
どれだけ当てられるか、クイズ本代わりに使われるのもどうでしょう。
事例集だけでも面白いのですが、レファレンスや司書の仕事についてもわかりやすく説明されています。これから司書を目指す方も読まれると楽しいと思いますよ。
個人的にはこの本でも紹介されていた国立国会図書館の「レファレンス協同データベース」(通称:レファ協)(※3)もお勧めです。全国の図書館から寄せられたレファレンス事例をデータベース化したもので、Twitterで事例をピックアップして紹介もしています。小説を書かれる方は調べものもたくさんなさるでしょうから、ここに調べたいキーワードを入れてみると、自分では何時間もかかってもたどり着けなかった答え、あるいは参考文献に一発で到達! ということもあるかもしれません。
本当に多種多様な質問があり、世の中にはいろんな人がいるなあ、としみじみしてしまいます。
時々、きゅうっと視野が狭くなってしまうこと、ってないでしょうか。
そんな時、ちょっとこういうものを覗いてみると、少し肩の力が抜けるかもしれません。
この本で興味を持たれた方は、ぜひ、膨大に日々増え続けるオモシロ事例集、福井県立図書館のホームページで、元ネタの「覚え違いタイトル集」も覗いてみてください。これ以外の事例もたくさんあります。読んだことのある作品や好きな作家さんを見つけるとうふふ、となります。楽しいですよ?
※1 福井県立図書館「覚え違いタイトル集」
http://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/tosyo/category/shiraberu/368.html (最終アクセス 2021.11.13)
※2 『言いまつがい』(新潮文庫)糸井重里,ほぼ日刊イトイ新聞/著
新潮社/発行 (2005.3)
※3 国立国会図書館「レファレンス協同データベース」
https://crd.ndl.go.jp/reference/ (最終アクセス 2021.11.13)
伊丹市立図書館の事例にも「うろ覚え・覚え違い」があります。
検索語に「伊丹市立図書館 うろ覚え・覚え違い」と入れると出ます。
事務的な回答例の多いなか、ここは回答も可愛い。
※レファレンスをテーマにしたマンガはこちらがおすすめ。
『夜明けの図書館』全7巻 埜納タオ/著 (ジュールコミックス) 双葉社/発行