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『make animals』――緻密で地道




『make animals 羊毛フェルトで作る動物』


 YOSHINOBU/著 

 玄光社/発行 (2015.1出版)




◇ ◇ ◇ 





 小学生の時、手芸クラブに入っていました。

 といっても、別に特別手芸が好きなわけではありません。

 そのクラブも特に指導する方がいたわけでもなく、各自が好きなものを好きなように作るだけのクラブでした。提出も展示もしない。できあがったものの評価もしない。ただ好きに作るだけ。したがって、手芸の基礎はなんら身についてはおりません。


 型紙もなく適当にフェルトを切り、綿を詰めた(おそらく)馬(っぽい何か)とかキリン(かもしれない何か)などを好きにチクチクして怪しげなクリーチャーを作り上げていただけの活動でした。たまに編み物なんかにも挑戦しましたが、完成するには到らず……、という。家庭科の成績が壊滅的で授業も苦痛だったので、なぜ入ったのかは今思い起こしてみても謎でしかないのですが、まあ、たぶん好き勝手自由にできたので楽しかったのだと思います。


 今でも特に手芸は趣味でもなんでもありません。

 大人になってから、血迷ってマフラーくらいは編んだりしたことはありましたが、そもそも目をきちんと数えたりが無理な性分なのでシンプルに真っ直ぐ編むマフラーくらいしか完成しませんでした。


 しかしですね、自分では作らないのですが、手芸の本を眺めるのは実は結構好きなんです。作るためではなく、作品を眺めて「あーいーなー、こんなの作れたら可愛いなあ。素敵だなあ」と愛でるためだけにパラパラ捲るのです。

 手芸作家さんのその細かさとか執念深さとか、想像するだけで楽しい。

 世の中にはおかしな人がいるなあ、と感心するのです。

 こういう、本当に好きで好きでたまらなくて作ってしまう、その想像力と創造力が素敵だなあ、と思うのです。きっとあんまり世の中の実用性とはほど遠いところにあって、役には立たないのかもしれないけれど、その余剰というか余分なところが誰かの心を満たしている、そういう連鎖がいいなあ、と思うのです。



 ということで今回は、手芸の本。


 がま口のバッグとか刺繍の本も眺めるのが楽しいのですが、特に作品として眺めてて楽しいのは断然羊毛フェルトの本です。特に動物が好き。

 

 今回紹介する本は人から「好きだと思うよ」とお勧めされた本です。

 読んでみたら……はい、好きでした!


 表紙は本物と見紛うシロクマ。裏表紙はそのシロクマさんの哀愁漂う後ろ姿。

 もうね、心臓を撃ち抜かれましたよ。可愛いよ、何これ。


 どきどきしながら開けてみると、もう「可愛い……!」という感想しか出てきません。

 遠吠えする狼、山羊のキュートなお尻、ほのかな黒の混じる優しいピンク色のブタ、箱にみっしり詰まるふっくらしたぶちゃいく猫、ああそれに、小さなお手々でカヤにぶら下がるカヤネズミの可愛さったらない。なんなの。かわいい。


 もう、ほとんど作品集として楽しむ本です。素敵。


 あ、もちろん、後半には作り方もちゃんと載っています。前半の作品ではなく、もう少し難度が低い(といっても私にはたぶん無理な)ものです。シロクマの指人形とか猫のブローチとか。うぅん、かわいいぞ! そして、改めて、羊毛フェルトって根気のいる作業ですねぇ。でも無心になれそう。


 とても丁寧に写真で工程を説明してくださっていて、わかりやすいです。なるほどなあ、と作ってみたくなる……かどうかは人によるかとは思いますけど。


 緻密な作品を制作される作家さんだけあって「……?」となる描写が本の随所に見え隠れします。

 たとえば、猫のブローチ。顔をチクチク作っていくのですが、まず元となる型紙を用意するとのこと。猫の顔が描かれた型紙を切り抜き、合わせてはチクチク、合わせてはチクチク、を繰り返すらしいのですが。



『型紙は常に手元に置き、作業中100回くらい合わせて、各パーツの位置を確認。』



 と、書かれております。ふーん、100回……、え、100回!?


 そ、そうか、そういう緻密で地道な作業がこのリアルさを生むのか。うーむ。

 はあ、果てしないなあ……、と私は溜め息を吐いたのでした。 

 

 あとね、最後の方に動物園の象の前で象を観察しながら羊毛フェルトをチクチクしている写真があるんです。やばいな、この人。

 動物園で絵を描いてる人は見かけたことはあってもさすがに羊毛フェルトやってる人は見かけたことないよ。すげえ。でも、まあ、絵描く人がいるんだから、羊毛フェルトとか彫刻とかしてる人いてもおかしくはないよねえ……、と妙に納得したのでした。うん、好き。作る人ってすごいな。


 ご興味ありましたら、ぜひ読んでみてください。

 作るのはちょっと……、という人でも充分楽しめる一冊です。




 



 



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