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【メイン完結】転生悪魔の最強勇者育成計画~拾った赤子があまりにも立派に育ちおとうさん困惑してます~  作者: たまごかけキャンディー
第一章 転生悪魔の最強勇者育成計画

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【089】それぞれの旅立ち



 これはアルスが魔法大国ルーランスの問題を解決し、自らの母エルザの兄である、常闇の暗殺者エルガにダークエルフの里へと案内されていた頃のお話。


 彼等のパーティーは隠れ里でもあるこの場所で、里でも飛びぬけて優秀なダークエルフ、エルガが連れて来た客人として歓迎を受けていた。

 それもただの客人ではない。

 同じく優秀であり里の人気者でもあったエルガの妹、エルザの一人息子とその仲間達として、よくぞ参ったと歓迎会が開かれているレベルなのだ。


「がはははは! こいつはいい! 隠れ里だと聞いていたからよ、案内されるのに少し申し訳ねぇ気持ちはあったが、そんな遠慮はいらねぇみたいだな! ダークエルフってのはこんな気持ちいい奴らばかりなのか!」

「おうよ! あのエルガが連れて来た御客人が、そんな遠慮なんてするこたぁねぇ! もっと飲め! わはははは!」


 そう手に持ったジョッキへなみなみと酒を満たし豪快に笑うのは、既に酔いつぶれる勢いで飲み続けるガイウスと、この里の長である筋肉質なダークエルフ。


 挨拶がてら訪れた長の邸宅にてアルスが来訪の理由を説明したあと、個人的に語り合うこと三十秒で何か通じるものがあったのか、まるで数十年来の旧友もかくやという勢いで意気投合したのである。


 もはや完全に酔いが回り出来上がった巨漢コンビは、歓迎会の中心でどんちゃん騒ぎを繰り広げており、残りのメンバーたちは苦笑いをする始末であった。


「あ~あ、ガイウスのやつあんなに楽しそうにしちゃって。あれが男同士の友情ってやつなのかねぇ。アタシにはさっぱりだよ」

「いや、あれはかなり特殊な例だと思うぜアマンダ。俺様にもよく分かんねぇけどよ」


 そして宴会の片隅にて、酒にはそれほど手をつけず、まずはダークエルフ特製の異文化料理を楽しんでいるのがこの二人、アマンダとハーデスである。

 彼女たちは盛り上がりもそこそこに、文化の違いから生まれる特殊な住宅構造や食文化、そして気さくな里の者たちの歓迎に気を休め、どちらかというと観光気分で楽しんでいるのであった。


 S級冒険者として旅をするのが人生の醍醐味であったアマンダはもちろんのこと、魔界とはまた違った、人間界の様々な文化を経験することはハーデスにとっても新鮮だったのだろう。

 歓迎会を楽しむ彼女は「こういうのも、悪くねぇな」と言って、また一つ人の心を理解する。


 魔界でも飛びぬけて強かったハーデスの愛情は、既に数年前とは比べ物にもならないほどの成長を果たしており、アルスとの出会いや旅の経験を積むことで潜在能力を増々高めていた。

 もし、今再び完全体である魔王への覚醒が行われることがあれば、あの時とは比べ物にならない強さを持った魔王が生まれることになるだろう。


 そして最後に……。


「やはりあの者らは個性的だな、アルス。それに強く、心根の善い者達ばかりだ。妹の息子であるお前の伯父として、安心してこれから先を任せられる」

「うん。みんな、僕の自慢の仲間達だよ」


 宴会の席からだいぶ離れた場所で夜空を見上げ、一旦ここでお別れとなるエルガと語り合うアルスの姿があった。


 伯父と甥っ子という関係もあり、まだ出会ってからそう時間が経ったわけではないが、どこか家族のように親密な空気感の漂う二人からは、確かな信頼と思いやりが感じ取れる。

 エルガは妹の息子を思いやりながら旅の仲間である三人を高く評価し、アルスは自分を思いやってくれる伯父に信頼と、家族として接してくれることへの嬉しさを噛みしめていたのだ。


「確か、お前の父であるカキューさんは人間だったな。妹もそろそろ婚期を逃すのではないかと心配していたのだが、まさかダークエルフが人間と結ばれるとは……。人生とは分からないものだ」

「確かに、そうかもしれませんね……」


 その言葉の裏に秘められていたのは、種族として生きる時間の違う者同士が結ばれることに対する、少しの不安。

 もしかしたらこの時間の差が妹を不幸にし、自分より先にこの世から旅立ってしまう家族に絶望するのではないかと心配しているのだ。


 しかし、そんな懸念もアルスたちと一緒に旅を続ける中、全て払しょくすることができた。


「だが、アルスを見ていれば分かる。こうして真っすぐに強く、そして心優しく育ったお前の存在が全てを物語っているのだ。カキューさんと結ばれた妹はきっと、今も幸せなのだということがな……」


 妹はこの先もずっと、あの人を伴侶に選んだことを後悔はしないのだろう。

 それは兄である私が、誰よりもよく分かるよ。


 そう語るエルガの言葉にアルスも思うところがあったのか、ただ何も言わず、どこか遠くを見つめて夜空を見上げ続ける。


 そうしてしばらくの間、想いを巡らせるように夜空を見上げていたアルスが口を開いた。


「エルガさん。たぶんもうお気づきかもしれませんが、僕にも大切な女性がいるんです。まだ好きといって良いかは自分でも分かりませんが、それでもその人は誰よりも僕に想いを寄せてくれて、でもちょっとだけ強がりで、それで……」


 生きる時間の差、種族の差。

 そういった壁が存在していて、まだ先のことだと思って先送りにしていた問題。

 どうすればこの問題への回答となるのか、答えは今も見いだせない。


 だがそれでも、同じ境遇にある自らの母は幸せなのだと、今のエルガの言葉を聞いて、少しだけ元気を貰ったアルスは言う。


「愛情が強くて、優しくて、努力家で、そしてとても誠実で……。僕は、そんな彼女が大切な人たちとの幸せを望むのであれば、最後まで足掻いて見せます。たとえそれが強大な相手であっても、どうにもならないことであっても、絶対に救いのある結末を迎えて見せます」


 ありがとう、エルガさん。


 月の優しい光に照らされた少年の顔には、確かな決意と、勇気が宿っていた。





 時は進み、フランケル侯爵領での騒動が一段落した頃の、カラミエラ教国の皇城にて。

 とある情報屋から魔族と思われる者達の暗躍と、その情報を掻い摘んで説明された聖女イーシャは南大陸へと旅立つべく、国中の貴族が集まる謁見の間で自らの父である教皇と別れの挨拶を済ませていた。


「世界を救う旅へと向かう我らが聖女、イーシャ・グレース・ド・カラミエラ皇女殿下と、教国最強の騎士にして剣聖エイン・クルーガーに、敬礼!!」


 今日この日に旅立つ聖女と剣聖に向けて、ザッ、ザッ、という音を立てて敬礼する騎士達一同。

 彼らはそれぞれに聖女の奇跡に救われた者、剣聖エインの剣技に支えられた者と、任務の中で幾度となく信頼関係を築いてきただけに、表情からも強い敬意と尊敬の念が感じられた。


 この二人になら世界を任せられる。

 どこかにいる伝説の勇者すら見つけ出し、再び起ころうとしている魔族との衝突に終止符を打ってくれるはずだと、そう信じてやまなかったのだ。


 だが騎士たちはそうでも、聖女の親である教皇の気持ちは違った。

 長い期間世継ぎを授からず、ようやく生まれた一人娘である我が子を旅立たせるなど、どうしても親の情としては納得できなかったのである。


「本当に行ってしまうのか、イーシャよ。もうすぐでお前も成人だ。それを待ってからでも良かったのではないか?」

「はい。今回の件で、私にはまだ成さなければならない使命があるのだと、そう痛感しました。いまこの時を逃せば、きっと取り返しのつかないことになると思った次第でございます」


 父である教皇に返す娘の表情には甘えはなく、たとえまだ成人していない若輩者であろうとも、既に聖女として人々を救う使命と意識を持つ、揺るがない意志の秘められたものであった。

 そんな娘の成長を目の当たりにした教皇は、それ以上引き留めるための言葉を告げられず、ただ「そうか……」と腹を括ると宣言する。


「ならば行くが良い、我が娘、……いや。聖女イーシャよ。人々を救うその旅の先で勇者を見つけ、再びこの国へと戻ると良い。そして剣聖エインよ、この世界の希望たる聖女の守りを頼んだぞ。その剣で時に道を切り開き、時に守り、支え続けるのだ」

「はっ!! 王命、しかと承りました!!」


 そうして彼らは旅立つ。

 この国の人々に祝福されながら、騎士たちの誇りを背負いながら、教皇の、父としての願いを受け止めながら……。





次回、メルメルスーパードリーム編~幼女の夢は、超でっけえ!~


はじまります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 3年ぶりに読み返してるけど、めちゃおもろわよ!
[一言] 確かに(`・ω・´)
[一言] 教皇の命令が王命で良いのかと言う素朴な疑問
感想一覧
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