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【メイン完結】転生悪魔の最強勇者育成計画~拾った赤子があまりにも立派に育ちおとうさん困惑してます~  作者: たまごかけキャンディー
第一章 転生悪魔の最強勇者育成計画

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【084】とある情報屋の噂




 メルメルがチョコマシュマロを貰ってからしばらくの月日が流れ、アルスら一行が仲間を増やしつつ旅を続けている頃。

 ところ変わって、カラミエラ教国の皇都にて。


 聖女イーシャ・グレース・ド・カラミエラは教国の腐敗を正すため、いつか自らの友人であるハーデス・ルシルフェルが笑って訪れるような国にするため、今日も国の改革に精を出していた。


「あ~もう! どうしてウチの国はこんなに問題が山積みなのかしら! 人間至上主義の度が過ぎる子爵が起こした亜人売買の件が一つと、侯爵家に紐づいた悪徳商人が密輸している違法植物の件が一つ。……それと、どこかの教会で夜な夜な、キャンプファイヤーの火が上がっているという報告もあるわね……」


 とても怪しいわね、と聖女は語り手元の資料を眺める。

 豪華絢爛な自らの個室に用意されたあらゆる資料には、どこぞの貴族が起こした不正の証拠から、不確定ではあるもののそういった気配のあるものまで、様々な調査結果が用意されていたのだ。


 というのも、この国の皇女として権力もさることながら、正真正銘の聖女であるイーシャにはファンも多く、彼女の手となり足となり働く者達は無数に存在している。


 故に力は集中し、齢十三というまだ成人すらしていない未成年でありながらも、皇女という立場以上に動かせる手駒は多かったのだ。

 だからこそこうして教国の腐敗を調査することができ、様々な情報から今後の方針を決める事ができるのである。


「とはいえ、侯爵の件に関してはあくまでも商人の罪。証拠が見つからない以上大貴族を罰することはできないわ。悔しいわね……」


 ただ、それでも隠れて動いている者達を洗いざらい、という訳にはいかない。

 手の届かないところや目の届かないところなどいくらでも存在していて、歯がゆい思いをしているのも確かであったのだ。


 そんな毎日忙しなく動く聖女イーシャの姿に思うところがあったのか、彼女の傍で佇んでいた護衛の青年、近衛騎士エインが声をかけた。


「お嬢様、気持ちはわかりますがまずはお休みになられたらどうですか。この三日ほど、まともに寝ていないでしょう。それにもうすぐ十四歳の成人式。これからが大事な時期なのです」


 既に十八歳となり、聖女付きの近衛騎士団でも副団長を任されるほどに出世したエインは語る。

 十三歳も後半となり、これから成人式を控えている教国の皇女に何かあってはいけないと。


 だがそんな正論を語ろうとも、この暴走聖女超特急が聞く耳を持つはずもなく、真っすぐに自分の信念を貫き通すために首を横に振った。


「ダメよ。動けない理由を一々考えていたら、何も出来なくなる。私は私のやり方で、この国を正していくことにしたの」


 それに、と一息いれて聖女イーシャは続ける。


「最近この皇都で妙な噂を聞くのよ。本来城下町の者が知り得るはずのない、どんな情報にでも精通している、謎の情報屋が現れたっていう噂をね……」


 聖女イーシャが調査した限りではあるが、側近であるメイドが城下町で買い物をしている時にも、カラミエラ城の料理長が食料を仕入れた時に居た担当の業者からも、はたまた歴史教育係の先生が本屋に立ち寄ったときにもまた、同じ噂を聞いたり見たりしているというのだ。


 これは確実に何かある。

 本当にそんな人物がいるのかもと、そう思わせるだけの説得力があったのだ。


「確か、その情報屋は皇都郊外のとある掘っ建て小屋で一人暮らしをしていて、黒いフードと気味の悪い仮面を被った中級商人、チュウキューを自称しているらしいわ。一度行ってみる価値はあるわね」


 情報屋なのか商人なのかはさておき、場所まで特定できているのならば話は早い。

 近衛騎士である剣聖エインを連れて、目的の場所へと真偽を確かめに行くだけでよいのだから。


 護衛という面であれば、近衛騎士としても剣聖としても多大なる評価を得て認められているエインさえいれば特に咎められることもない。

 城壁の外にある田園地帯とはいえ、あくまでもカラミエラ皇都の一部だ。

 そのくらいの移動であれば、自由時間の捻出も含めて不可能な話ではなかった。


 そうして翌日。

 無理やりにでも暇を捻出した聖女イーシャとエインの二人組は、沢山の人が往来する整備された美しい街並みを抜け、城壁の外へと赴き予定通りに目的の場所を見つける。

 場所は皇都郊外にある田園地帯の中でも特に貧しい者達が住むところで、さすがにスラムほどではないが、ところどころ屋根が欠けている家も見受けられるかなり寂れた空気感の場所であった。


 そんな中に木材で出来た掘っ立て小屋が一軒だけあり、周りにある石材で出来た建築とは一風変わった風情を感じる、豪華ではないが妙に使われている建材が新しい新築の住宅。

 それこそが噂になっていた謎の情報屋が潜む場所なのだと、事前情報を知っていれば、なんとなく直感的に分かる作りになっていたのである。


「たのもー!」

「お嬢様、はしたないですよ」

「いいのいいの。このくらいじゃなければ、何でも知っているという情報屋に舐められるわ。ここは元気よく行くのがベストよ! アルス様がここにいたら、きっと怖気づいたりしないもの……!」


 などと、説得力があるのかないのか。

 いちいち聖女漫才を挟みつつもアルスを引き合いに出し、勢いよく扉を開けるのであった。


「やあ、いらっしゃい。元気なお客さんだね。本日はどのような情報しょうひんをお求めかな? 安くしておくよ。ククク……」


 そうして落ち着いた声と共に現れたのは、噂通りの黒いフードに、奇天烈な模様が描かれた仮面を被る情報屋。

 自称中級商人のチュウキューその人なのであった。







「さあ、洗いざらい情報を喋りなさいチュウキューとやら!」

「おやおや、これは元気なお嬢さんだ」


 やあ、どうも聖女ちゃん。

 中級商人のチュウキュー、もとい下級悪魔のカキューさんだよ。


 うむ。

 こうして予定通りにことが運ぶと嬉しくなるね。


 まあ、十中八九以上の割合で成功するつもりで動いてはいたけどさ。

 でもやっぱり、本人が来るかどうかは本人次第だし、絶対ではなかった。


 あの手この手で聖女ちゃんを釣るために、時には城へ食料を卸しにいく業者、時には街人、時には本屋の本の隙間に挟まっている置手紙で工作してみたのだが、うまくいったようだ。


 別にこの掘っ立て小屋に来ないなら来ないで、教国の腐敗を正そうと頑張る聖女ちゃんを応援するだけ。

 だけどもし、何かこの状況を打開する突破口や手がかりを求めているのであれば、ほんの少しだけではあるが助力してあげようと思った次第である。


 今回のこのチュウキューの存在は、それだけの為に用意したものであった。


 教国を正す物語の主人公は、あくまでも聖女イーシャちゃんと、剣聖エイン君のものである。

 俺はただこっそりと、少しだけ手を差し伸べてやるのがお似合いの、どこにでもいる下級悪魔ということなのだろう。


 むしろ、そうでなければならないのだ。





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― 新着の感想 ―
[良い点] カキューさんのネーミングセンス分かり易すぎて笑うw
[良い点] カキューが引退するときは、ロウキューを名乗ると見た
[一言] 大丈夫。カキューの攻略本だよ。 カラミエラ教国、完全攻略!悪徳貴族&聖職者は皆殺しチャート、メルメル放火MAP、etc... この先は君の目で確かめてくれ!
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