【058】敵の共食い、不穏な気配
そう、私は唐突に投稿をはじめる作者、たまかけ(`・ω・´)
本日二度目の投稿になります、読む順番にお気を付けください。
次の投稿は、深夜0時です。
ガタゴトと馬車に揺られること一日半。
ようやく現地についた僕たちは、付き添いで来てくれた父さん、母様、ガイウス、そしていつもの仲間達で祠の前に集まっていた。
「それじゃいってこいアルス。なに、中級魔族が多少いたところで、今のお前達の実力であれば決して勝てない相手ではない。頑張れよ」
「はい、父さん! 仲間達と力を合わせて頑張ってきます!」
中級魔族といえば、その中でも強い個体ならガイウスでも一対一でなんとか相手取れるほどの強さだと聞いたことがある。
今の僕でも、一人では相当に苦戦するだろう。
でも、それはあくまで僕が一人だったと想定した時の話だ。
周りには応援してくれる皆がいて、頼りになる親友のエインがいて、ちょっとお転婆だけどやる時にはやるイーシャちゃんがいて、そして何よりあのハーデスがいる。
もちろん多少の不安はあるけど、それでも最後まで絶対に、誰一人欠けることなくこの冒険を終えて見せるよ、父さん。
もう、そう決めているんだ。
たとえどんな状況下でも、こんな場所で大切な仲間を失うなんてことは許さない。
魔族の力がどれだけ強靭で、どれだけこちらが劣勢になろうとも、絶対に生きて帰る。
僕の力ならば、それができるはずなんだ。
だってそうだろう。
僕はあの、無敵のカキュー父さんが認めた唯一の息子なんだ。
やってできないなんてこと、あるわけがない。
「ああ、その意気だ。……しかし、最後まで油断はするなよ。冒険では何が起きるか分からんからな。もしかしたら、お前の思っている以上の強敵が現れるかもしれない」
「うん。分かってるよ父さん。それも想定して動くことにする」
「はははっ! おっさんは心配しすぎだぜ。たかだか中級魔族がこのハーデス様に敵うとでも思ってんのか? 全員まとめて蹴散らしてやる」
いや、それはちょっと油断しすぎだと思うよハーデス。
父さんはたぶん、こういう時こそ冷静になって局面を俯瞰しろって言っているんだと思う。
ハーデスは実力もあるしとても可愛いけど、ちょっとお調子者だよね。
その点、エインとイーシャちゃんは前回の反省もあるからか、気を引き締めているように見える。
うん、まあこれなら皆で補い合っていけるだろう。
きっと大丈夫。
それからしばらく皆とも言葉を交わし、心配性な母様、父さんと同じように気合を入れてくれるガイウス、任務達成の報告を期待してくれている騎士達と別れて祠ダンジョンへと進むこととなった。
「へぇ、祠の裏から洞窟が続いているとは思っていたけど、中は案外広い空間になっているんだね? 不思議だなぁ。どう思うエイン?」
「う~ん、そうだな……。まあ、アルスとそう知識に違いがある訳ではないけど、ダンジョンは異空間だという噂を聞いた事がある。きっとその類じゃないか?」
ああ、なるほど。
確かに昔、父さんから同じようなことを聞いたことがある。
魔族が潜む魔界と言う場所はこの大地とは違う異空間に存在していて、一種の別世界として成立しているらしいことを七歳の時の座学で学んだ。
たぶんここも魔族が作ったダンジョンになるわけだし、同じように異空間と深い関わりがあるんだろう。
いや、だとすると変だな……。
仮にこの話の通りだとすると、魔界と同じ環境を作れるほどの異空間、つまりダンジョンを作れるほどの魔族とはいったい何者だったんだ……?
この地上にダンジョンを形成するなんて、よっぽど力を持った魔族じゃないと不可能なはずだ。
僕たちがまとめて相手取れる程度の中級魔族が、こんなことできるはずがない。
それともなにか別の条件があったりするのかな?
もしくは情報がズレている……?
おかしい……。
僕は大切なことを見落としている気がする。
そしてそれは、ハーデスも同じ見解だったようだ。
「おい、おかしいぜここ。この規模の異空間を、たかだか中級魔族ごときが創造できるはずがねぇ。これは最低でも上級魔族、……認めたくはねぇが、今の俺様よりも数段強ぇ奴が作った空間だ」
「ハーデスよりも……? でも、それじゃあ」
それじゃあ、その上級魔族はどこに?
いや、それよりも今までいったい何をしていたんだ?
もし仮にハーデスよりも上位の強さをもった奴が存在するなら、結界が破れてからもここを見張っていた騎士達を蹂躙し、再び結界をはりなおすことなど造作も無かったはずだ。
しかし現状はそうでないとなれば、考えられることは一つ……。
「それは俺様にもわからねぇ。だが状況的にこれだけは言える。何かしらが原因でこの異空間を創造した上級魔族は既に滅ぼされているか、もしくはもう、ここに用が無くなったということだ」
「うん。全く同じ意見だよ。でも僕はどっちかというと、既に滅びているような気がするんだけどね……」
だとしたら、尚更まずい。
これはつまり、僕よりも力が強いハーデスよりもさらに強い上級魔族を滅ぼせる、そんな化け物が周囲にいるということに他ならないのだから。
「あの、アルス様……。さきほどから気になっていたのですが、そのハーデスとかいう女はそれほどまでに優秀なのですか? まるでアルス様の態度からは、この女がメンバーの誰よりも力がある前提で話しているように聞こえますよ……? 私にはとてもとても、このチッパ……、ではなく胸の薄い女が優秀だとは思えません」
「ああん? 喧嘩売ってんのかてめぇ」
今、チッパイって言おうとしたでしょ、イーシャちゃん。
あと、胸の薄い女はさすがにハーデスが可哀そうだよ。
僕は胸の大きさそのものが女性の魅力だとは思ってないけど、本人は気にしているみたいだからそっとしておいてあげよう?
なんにしても、イーシャちゃんって結構腹黒いよね……。
まあ、それはともかくとして……。
「ん? そうだよ。そう言っているんだ。この中で今一番力があるのはハーデスで間違いないよ。前衛は苦手みたいだけど、魔法の実力だけならたぶん人類最高峰なんじゃないかなぁ?」
「そんな!? ア、アルス様よりもですか!?」
「うん」
いや、なんでこの世の終わりみたいな顔しているんだろう、この子……。
ハーデスが強い分には仲間として頼れるんだから、別にいいんじゃないかなぁ。
もしかしてイーシャちゃん、まだハーデスが本当は邪教徒で、いつか僕たちに牙をむくんだと思ってる?
あはは、考え過ぎだよね、そんなの。
「大丈夫だよイーシャちゃん。ハーデスはこうみえてとても情に厚いから、一度仲良くなった相手を見捨てるなんてことできないし、ましてや敵に回ることなんてありえないよ」
「クハハハハハ! おう、そうだぜ! さすがによく分かってるじゃねぇかアルス。この俺様がそんな情けねぇ裏切りをするわけがねぇ。やるなら最初から、バッサリだ」
そう言ってハーデスは親指をつかって自らの首を掻き切るしぐさをみせ、ニヤリと笑う。
うん、君はそう言うタイプだよね。
気に入らないやつに裏切りなんてするくらいなら、最初から全面衝突するタイプだ。
そんな雑談をしつつも徐々にダンジョンを探索していき、しばらく経ったころ……。
ようやく長く続いた異空間の一本道が終わり、ついに石造りの大部屋のような場所に辿り着いた。
どうやらここが最終地点のようだけど、……いや、まさかね。
「む、待てアルス。この先から複数の強烈な気配を感じる。というより、お互いに共食いをしている、……ような? 気がするんだが?」
「いや、確実に共食いをしているね。いまもまた一つ、強い魔力を持つ存在が気配を断った。死んだんだよ、これ」
そう、僕たちが辿り着いた終着点の大部屋では、中級魔族の共食い合戦が行われていたのだった……。
それにあの中央に見える人型の灰、……いや、塵かな?
あれはなんなのだろう……。
なんか、昔父さんから聞いたヴァンパイアの死の特徴にそっくりだ。
アルス君、父さんにとって唯一の息子ではなく、父さんが「認めた」唯一の息子といいました。
はて……、これは。
今後をお楽しみに。




