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【027】下級悪魔、ドタキャンする

本日、二回目の投稿です。

読む順番にお気を付けください。

通常どおり、深夜0時にも投稿します。



「す、すみませんでしたァーーーー!!」

「…………」


 カラミエラ教国武術大会の予選会場にて、黒髪黒目の優男が行うスライディング土下座が冴えわたる。

 妙に洗練され謝り慣れたその華麗な体術は、見る者が見れば息を飲むほどに隙が無い動きであった。


 そんな華麗な土下座を一体誰が決めたのであろうか。

 その答えは、そう。


 地球出身の下級悪魔こと、カキュー。

 つまり俺である。


「あ、あの? エルザさん? あの?」

「……弁明を、お聞きしましょう」

「べ、弁明したら許しては、も、貰えるのでしょうか?」 

「……フンッ!!」

「ギャァーーー!?」


 痛ぁーーーい!?

 ハイヒールで土下座したままの手のひらを踏むのは反則ですよ!

 というか久しぶりに、本当に久しぶりにエルザママのお叱りを受けてしまった!


 まあ、全面的に俺が悪いのだけども!

 せっかくアルスのために一肌脱いで、勇気ある謝罪に踏み切ったというのに、あんまりだよエルザママ!


「もう一度聞きます旦那様。なぜ、武術大会を棄権なされたのですか? あなた様が出場なされば、優勝など赤子の手を捻るよりも簡単なことでしたのに……」


 そう聞くエルザの表情はどこか拗ねていて、納得いっていない気持ちがにじみ出ているようであった。

 いや、でもなぁ。

 俺が出てしまったらいま言われた通り、「赤子の手を捻る」のと同じ感覚で勝負が決してしまうんだよなぁ。


 だが、今や大切な家族である彼女をこんな顔のままにはしておけない。

 女性の扱いには疎い俺であるが、さすがにこの状況がまずい事だけは分かるからね。


 ならばどうしてこうなったのか、本心から語ってやるしかないだろう。


「……そうか。なら、分かっているようなので逆に聞くが、俺がそんな大会に出て弱い者イジメをしているところを、本当に見ていたいか?」

「なっ……。それは……」

「だよな。俺もそんなことするのが自分の親だったら、幻滅するよ」


 そう、こうなるのである。

 俺もアルスにカッコいいところを見せたくなかった訳じゃないが、実力差にここまでの開きがあると、真剣勝負の体を成さないだろう。


 であるならば、おそらく俺とアルスを優勝させて満足したかったエルザには申し訳ないが、大会は当日に棄権するという選択肢しか最初からなかったのである。

 まあ、最後までエントリーするかどうかは悩んだんだけどね。

 だがこのスライディング土下座をする勇気が生まれたのが、アルスのために一肌脱ぐと決めたさっきなのだから、致し方あるまい。


 以上の理由によって、今はこうして真剣に謝るしかできないのであった。


「まあ、この埋め合わせは必ずするから、機嫌を直してくれないか? 俺にできることならなんだってするぞ? な?」

「……うっ。……し、し、仕方ありませんね。では今晩、旦那様を私だけの貸し切りにするというのであれば────」

「────よしっ! それで手を打とう!」

「ひうっ!?」


 やったーーー!

 許された!


 言質は取ったからなエルザママ!

 そんな風に、顔を真っ赤にしてももう遅いぞ!

 これで俺が怒られるいわれはない訳だ!

 下級悪魔の大勝利、第一部完!


 なぜかオロオロと目を泳がせているエルザが気になるが、これで心置きなくアルスの応援に集中できるぞ。


「よし、それじゃあ二人で我が息子の応援をするとしよう。ガイウスのやつもどうなるか気になるが……。まあ、トーナメントを見る限り、あの聖騎士団長と決勝で当たるまでは勝手に勝ち進むだろう」

「え、ええ、そうでございますね……」


 聖女五歳のための武術大会とあって、この大会で実力をアピールするために訪れた人間は、大人よりも子供の方が圧倒的に多い。

 おそらく、他の国の貴族子弟やその他有力者の子供なんかがこぞって押し寄せてきているのだろう。

 お近づきになれたらメリットは計り知れないだろうしね。


 故に、人数の少ない大人の部は既に予選が終了しており、もう決勝トーナメントが開始される寸前まで来ていたのである。


「ん~。だが、見る限り子供の部の方もアルスのライバルとなるような子供はいないなぁ。やっぱり、あの剣の申し子と当たるまでは、こちらも同じく見どころがないな。どう思う、エルザ?」

「え、ええ……。そうでございますね……」


 あれ?

 なんだか心ここにあらずといった感じだな。

 どうしたんだいったい。


 ちょっと悪魔の能力で感情の揺れを見てみるが、完全に思考停止してしまっているのか考えが良く分からない。

 何かの魔法にかかっているわけでもないし、本当にどうしたのだろうか?


 う~ん。

 この俺のデビルアイを誤魔化すほどの魔法がこの世界にそうそうあるとは思えないし、謎だ。


「まあいいか。とりあえず息子の勇姿は夫婦そろって見れる訳だしな。これも親の仕事のようなものだし、楽しもうじゃないか」

「ふ、夫婦……。夫婦の仕事……。営み……。ウフフ……」

「お~い! 店員さん、エールひとつ~!」


 何やら急に機嫌がよくなったエルザを余所に、さっそく観客席で酒を頼みながら観戦を楽しむことにしたのであった。


 さて、まず最初にアルスと当たるのはあの少年か。

 歳の差は五歳と十二歳であるが故に、向こうの子は油断しきっているらしい。


 実力を発揮できれば一瞬で終わるだろうけど、しかし暴漢のようなろくでなしではない普通の子供を相手に、どれだけ戦う決心が決められるか見ものだな。

 この大会で、剣の申し子と当たる前にその決心が試せるのは大きい。


 教国に来るのはあまりノリ気ではなかったが、この大会で経験を積むという意味では、本当に来てよかったな。

 聖女サマサマってやつだよ、ホント。







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― 新着の感想 ―
[一言] 孕みtonightっ!!
[良い点] カキュー、見た目はイケメンだもんな……ギャグ要素多めだけど
[良い点] 初 め て の 合 体 [一言] ああそっか、子供は居るけど結婚してるわけじゃないもんな
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