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再転の姫君  作者: 須磨彰
69/79

チャプター68

T高・伝説の文化祭一日目







「あつぅいぃ。」



「もう、ボクの横でそんなセリフ良く言えるよね。」



ボクたちのクラスは、お化け屋敷の発表に向けて準備を始めた。ボクは白い着物姿なのだが、お化けらしさを出すために薄い布を使っており、正直この時期にこの格好ではかなり寒い。



それとは対照的に、大きな着ぐるみを着ている優花はかなり熱そうだ。



「うちもツン先生みたいに、幽霊にしておけばよかったよ。今からでも交換しない?」



「クラスのみんなを敵に回してもいいなら、ボクは全然かまわないよ?」



そう言って、準備をしているクラスメイトたちに目線を送る。当然ボクと優花の話を聞いていた子たちもその中にはおり、優花の方を見て首を横に振っている。



T高の文化祭の初日は午前中までが準備時間となっており、実際に始まるのは午後からなのだが、既に噂となっており、教室の前には長蛇の列が並んでもいいように、列を整理する係まで作られた。



このあたりの情報はどこからかもたらされたものなのだが、以前の浩太の時と違い、ボクには良く分からない。



「うち、中に入るわけじゃないんだから、こんな着ぐるみ着なくてもいいんじゃないかな?」



「そうだね。ボクも普通の服に着替えたいよ。」



ボクは絶対に中に入らないと言ってあるので、当然受付係なのだが、そうなると、ひとりでは心配だとクラスのみんなから提言もあり、ボク・優花・明実・和美・ミーちゃんの5人でローテーションを組んで受付等をすることになっている。



「ねね。入場料もう少し高く設定しない?」



「そうだね。あと、外では待ち時間の間、暇をしないように、お化けの写真なんかを売るから、その撮影を今のうちに撮らないとね。」



クラスのメンバーを一人ずつ森君がデジカメで撮っていた。森君は機械系が得意みたいで、プリントアウトも結構簡単にできるんだとか、なぜかボクの写真だけは数枚色々なアングルで撮ったりとこだわりがあるようだが、まぁいいだろう。



「森君。今回はクラスのために写真を許したけど、それで前みたいな悪さしないでよ?」



「も、もちろんだよ。ぼ、僕も、クラスのみんなに貢献したいだけだよ。」



冷や汗を垂らしていたあたりは信用ならないけど、まぁ自分で鑑賞するくらいなら許可するよ。変なところに出したりしなければ良いんだからね。



「お待たせ♪」



先に着替えたボクと優花の元に、和美達が現れる。



「「・・・」」



ボクと優花は口をあんぐり開けて唖然としてしまった。



「どうしてミーちゃんはドレスなの?」



明実には、魔女の衣装、和美には猫娘の耳と衣装・そしてミーちゃんにはメドゥーサの衣装を渡していたのだが、ミーちゃんはメドゥーサというよりも、ただの美人だし、和美にいたっては何故か猫耳メイドさんになっていた。



「えっとね。メドゥーサの髪被ってみたらわかるよ。」



明実がそう言って、ミーちゃんの頭にボクが作ったヘビの桂をつける。



「ひゃ・・・」



「はまり過ぎるのも問題なんだね。」



ボクと優花はそれぞれ、反応を示す。というよりも、ボクは純粋におびえているだけだけど・・・



「そうなのよ。やっぱり、これじゃあ本当に石化しちゃいそうだから、貴婦人の霊ということで、メデゥーサはやめておこうって話になったの。」



「う、うん。ボクもその方がいいな。ミーちゃんは切れ目だけど、まさかこんなに鋭いとは思わかなったよ。」



普段はその切れ目は美人に見えるチャームポイントになるのだが、妖怪の格好をしたミーちゃんの姿が頭から離れない限り、今後チャームポイントとして見ることはできないだろう。



「明日はお稲荷さんの狐の耳でも作ってくるから、今日はそれで我慢してね。」



「おーほっほっほ。蟹津さんも私の妖怪っぷりには勝てなかったようですわね。私と比べても全く怖くありませんわ。」



「うん。ミーちゃんの怖さには完敗だよ。」



「ヒソヒソ(あんな笑い方するやつ初めて見たぜ。それにしても、おっかなかったな。)」



「ごにょごにょ(ああ、それに比べて、ツンちゃんは幽霊の姿してても可愛いよな。)」



「ヒソヒソ(間違いねぇ。あんな幽霊だったら、夜中に出てきてもギュッと抱きしめたくなるぜ。)」



「ごにょごにょ(メドゥーサにあったら速効逃げるけどな。)」



後ろの方で男子の声が痛いよ。ミーちゃんは喜んでいるし、ボクは耳がいいから聴こえちゃったけど、聴かなかったことにしておこう。



「そ、それじゃあ、そろそろボクらは受付の準備の方に行くね。」



「え?受付の机とかも男子がさっき出してくれたわよ?開会式までここで待ってましょうよ。」



「あ、そういえば、竜にちょっと話があるんだった。」



ガシッ



「あの?和美さん・・・何でしょうか?」



「もうすぐケイティの着替えも終わるんだし、もう少しここでゆっくりとしていきましょうよ。」



「いや、竜のこと待たせるのも悪いし・・・」



「そういえば、ケイティが丁度半分だし、そろそろ部屋の中が普通の制服の子よりも妖怪や幽霊の方が多くなるわね。」



和美!!あんた確信犯でしょ。ボクが妖怪が増えてきたから、脱走しようとしているのを知っていて、態と足止めしてるな・・・



「和美・・・ボク怖くて仕方がないの。屋上で二人っきりにならない?」



「グハッ・・・わ、私が悪かったわ。竜くんのところへいってらっしゃい。」



「うん。」



ここから逃げられるのならばと思い、和美にお願いをすると、鼻血を垂らした和美から退出の許可が出た。



「じゃあ、開会式の体育館でまたね。」



ボクはそう言って、教室から逃げ出すのだった。



ボクは教室を出るとぶらぶらと歩きだす。竜に話があったといった手前、少し隣のクラスも覗いたのだが、竜はいないみたいだった。



「ツンちゃんのクラスはお化け屋敷なんだって?絶対に行くからね。」



「蟹津マネージャー!!俺絶対に行くから、優先して通してよ。」



「蟹津さん。女子専用のファンクラブできたって本当?私も入りたいんだけど・・・」



ボクが一年生のクラスの前を通ると、いろいろな子から声をかけられた。



やっぱり、幽霊の衣装じゃ目立ち過ぎるから、少し人目のつかないところに移動しよう。文化祭をきっかけとして色々な人と接する機会があるのは嬉しいことだけど、やっぱり色々な不安があるのだ。



「お?秋もサボりか?」



「こんなところで何してるのよ?」



美術室か屋上で悩み、今、美術室に行くとボクの隠れ家がばれてしまうような気がしたので、屋上へと足を運んだのだが、そこには竜がいた。



「俺はサボりやわ。どうも、今のクラスにおると、いろいろと面倒でな。」



「そうなんだ。ボクも今クラスの中にいることはできないんだよ。」



「クラスの奴らとは仲良くなったんやなかったんか?」



「いやぁ、ほとんどの人がファンクラブ会員だし、敵対はしてないんだけど、ボクにとってあそこは安息の地ではないんだよ。」



そこまで言って、竜はボクの格好を見て納得した。



「自分で作った衣装とセットにこわがっとるんか?」



「仕方がないじゃないか。手抜きの衣装を作るわけにもいかなかったから、仮面だって竜がみても驚くようなすっごい怖い仮面作ったんだよ。」



「明るい所で見ても怖がるんは秋くらいのもんやって、というか、開会式どうするんや?みんな衣装のまま開会式に行くんか?」



「そんなことしたら、ネタバレになっちゃうから、受付のボクら以外はみんな一旦上からジャージとかを着るんだよ。着替えに時間が、必要無い子は普通に制服で行くけどね。」



ミイラ男の子などは、今のうちに全身に包帯を巻いておかないと、開始と同時にお化け役をすることはできない。そのため、ジャージの下などにある程度の準備をしておくのだ。



「そっか、それでも秋にとっては恐怖やわな。そろそろお化け嫌いも卒業できたらええんやけどな。」



「良いんだよ。完璧すぎたら嫌だもん。最強美少女で芸術の女神なボクも、お化けには弱いんだもん。」



「もう一つ弱いもんがあるやろ?」



「ん?」



ボクが首をかしげると、竜はボクのことを抱きしめる。



「心友にお願いされると断れないだろ?もっと自分を大切にしろ。秋はもっとわがままになってええとおもうよ。」



「うん。」



ボクは小さくうなずくと、顔を見上げる。ボクよりもずっと大きな竜の体だから、晴れた空にぽっかりと竜の顔が見える。



そして、ボクと竜が唇を重ねるのだった。



「もしもし、二人の世界に入ってるところ悪いんだけど、会話全部筒抜けだったわよ。」



「ひゃ!!」



ボクは真赤になって竜の体から離れる。そして、声を掛けてきた和美の方を向く。



「ここには森君の盗聴器が設置されてるのを忘れたの?」



「でも、受信機の方を回収して、今はミーちゃんが持ってるんじゃなかったの?」



そう言うと、和美が受信機をヒラヒラとさせた。



「どうせ二人っきりになるなら屋上か美術室だと思って、スイッチを入れたらこれだもの。ミーちゃんから借りておいてよかったわよ。それよりも、そろそろ開会式行くわよ。」



「う、うん。」



「竜くんも残念そうな顔しないの。文化祭期間中は秋を一人占めできないことは決定事項だけどね。」



「せやな。受付するんやもんな。」



「そういうこと、わかったらさっさと行くわよ。」



「え?え?どういうこと?それより、竜、クラスで問題って言ってたけど、どうしたの?」



ボクの相談ばかり聞いてもらっている気がしていたので、ボクは体育館に向かう間だけでもと、竜の相談に乗ろうとした。



「そんなの決まってるじゃないの。竜くんのことを好きな子が秋ちゃんの悪口でも言って喧嘩したんでしょ。昔から竜くんも秋も自分のことになると平気なのに、お互いのことをけなされたりすると怒るんだから。」



「え?本当?」



「・・・」



竜は小さくうなずいた。中学の時までは浩太が色々な情報をボクや竜に伝えてくれていたので、こういった情報に困ることはなかったが、今は竜がきちんと話をしてくれないと、ボクは解らないんだというと、今度からはきちんと何でも話すと約束してくれた。



「うん。その方がボクも楽だよ。誰に好かれていて、好かれていないのか解り易いしね。」



「あんたら相変わらず相手を信頼してるのね。」



「ん?竜はおバカなこと言うことはあっても、約束は絶対に守ってくれるからね。」



「おバカなことってなんやねん。俺は頭はええ方やないか。」



「ん〜。なんかそれとは違うおバカさが竜にはあるんだよ。まぁそれが可愛いんだけどね。」



「男が可愛いとか言われても嬉しくないっちゅうの。もっとええところを見ろよ。たとえば、スポーツ万能なところをカッコ良いとかあるやん。」



「ボクと勝負する?相変わらず学習しないね。そんなところがおバカなんだよ。」



「秋個人と勝負して、勝てる奴みたい、おるんか!!陸上競技会俺が勝ったやないか。」



「そういえば、陸上競技会の罰ゲームなんだったのよ。秋に聞いても教えてくれないのよ。」



ここで和美が横から口を挟む。ボクはあんな恥ずかしい思いをしたこともあり、終わった後なら教えても問題がなかったにもかかわらず、誰にも何をしたのか教えていない。



「ああ、二人で山登りしたんやよ。それは大変やったんやから。」



「罰ゲームで山登り?しかも勝った竜くんが大変ってどういうことなの?」



「まぁその話はまた今度にしようよ。ほら、体育館も近付いてきたし、竜は自分のクラスに行きなさいよ。」



「ちょっと、もっと詳しく聞きたいわ。」



和美を遮り、ボクらはそれぞれのクラスの列に向かう。といっても、ボクと竜は隣のクラスで出席番号が近いので、結構近くにいるんだけどね。








ついに、文化祭の開催だ。ミーちゃんは執行部として前に出ていたけど、まだ一年生ということもあって、開会式は現二年生の先輩に譲り、裏方として活躍しているようだ。それでも美人なミーちゃんに視線が集まっているのが分かる。



「ミーちゃんの人気は上々だね。来年が楽しみだよ。」



「クーちゃん。それ本気で言ってるの?」



「え?だって、ミーちゃんの人気は確かだし、ミーちゃんにお願いして部費UPと陸上競技会を春にしてもらう予定だもん。」



「いいわ。私が間違っていたわ。」



川瀬と蟹津ということで、近くにいた明実が何故か頭を抱えてしまっている。そして、ボクらのクラスはお化けの衣装ということもあり、かなり注目されているので、ボクも自重して大人しくしていることにした。



『あなたが一番注目されてるのよ。お化けの衣装がなくたって、絶対に私たちのクラスに視線が集まってるの解ってるのかしら?絶対に自分が好意的な意味で注目されてるのには気づいていないわよね。』



ボクの後ろから溜息が聞こえる。すると、何故かとなりのクラスの竜も同じように溜息を吐きだした。



竜と明実がシンクロ?最近仲良くなっては来たけど、ボクを通してのはずだったんだけどな。



本当に無難で何の面白みもなかった開会式を終えると、ボクらは各自の持ち場へと向かう。T高の文化祭は学校外からの訪問もあるので、かなり大々的な文化祭である。


















「いらっしゃいませ。こちらはお化け屋敷のブースとなっております。冥界への道を進みたいお方は、列にお並びくださいませ。もし、列からはみ出しますと、そのまま冥界から帰って来れなくなるかもしれません。その時は私どもも責任を一切とることはできません。」



長すぎじゃない?受付の決まり文句を言いながら整列させているのだが、セリフが多すぎて、優花なんかは、適当に省略しているので、冥界に行っちゃってるお客様もいる。



「きゃぁぁぁぁぁ!!」



ビクッ!!



また一人のお客様が冥界へと旅立たれました。



「クーちゃん・・・悲鳴が上がるたびに私の服をつかむのやめてくれないかしら?最初は綺麗だった魔女の衣装がしわだらけになっちゃったわよ?」



「ごめんね。でも、それはボクの責任じゃないよ。か、壁が薄いのがいけないんだ。」



「悲鳴が聞こえるようにって、態と窓を少し開けて音を漏らしてるのよ。聞こえて当然じゃないの。」



「そ、そんなことボクは聞いてないよ。」



そうなのだ。既に10組以上の人が中に入っているのだが、ことごとく全ての生徒が途中で悲鳴をあげるため、ボクは毎回おびえながら受付の仕事をしなくてはいけない。



「結局最後まで声を上げずに通り過ぎた人は一人もいないわね。どうなってるのよ。明るい所で見ていた時はそれほどでもなかったけど、私も今自分のクラスの出し物に参加する気は起きないわ。」



「こんなに列になってるんだもん。ボクらがお客として参加する必要はないさ。それよりも、さっきから、写真の売れ行きがヤバイかも、そろそろ森君に追加をお願いしてくれるかな?」



「嫌よ。私だって中に入るの怖いって言ったでしょ?頼みのミーちゃんは執行部の仕事が忙しいからってまだ交代に来れないみたいだし・・・」



今受付のところにいるのは優花とボクと明実の三人だ。一番動きやすい格好をしているボクは脅えて動けず、明実はボクの手が離してくれそうにない。こんな場所で一人っきりなんて絶対にやだ。



「優花、ごめんなんだけど、森君に写真の追加を頼んできてくれる?」



「いいわよ。じゃあ、最後尾にツン先生言ってくれる?」



「解ったわ。」



ボクは声の聞こえない最後尾に行けることに軽く安堵しながら、優花と持ち場を交代して、中に行ってもらう。



「きゃ〜!!」



クラスの子たちは、優花と知っていて驚かせたんだろうな・・・あんなお化けの着ぐるみ着てはいってくるお客はいないって解ってるじゃないか。



おそらく優花の空手でコテンパンにのされた生徒がいるだろうが、そこに関しては、まっ直ぐ冥界に行けることだし、心配いらないだろう。



「秋ちゃん!!」



最後尾に着くと、見知った人がそこにはいた。



「花梨部長。来てくれたんですね。嬉しいです。」



「君たちがやっているからというのもあるんだけど、それ以上に私は昔からお化け屋敷というものが好きだから、楽しみにしているわ。」



「きっと満足していただけますよ。今まで入った組は声を上げなかった人は一人もいなかったんですから。」



「なるほど、それは楽しみね。」



「あの・・・先に声をかけたのは俺だよな?何で花梨とばっかり話をするんだい?」



「先輩も楽しんでくださいね。」



「お、おう・・・」



そう言って、お辞儀をして立ち去ろうとすると、泣きそうな顔をする河野先輩だった。



「ちょっとした冗談ですよ。せっかくですから、おしゃべりしていきましょうよ。」



「びっくりしたよ。俺だけ除け物にされたかと思ったよ。」



「そんなことするわけないじゃないですか。ところで河野先輩、中が暗いからって、花梨部長にいたずらしちゃだめですよ。」



「そ、そんなことするわけないじゃないか。」



「当然よ。第一、そんなことを私が許すと思っているの?」



「それはそうなんですが、なんだか今日の花梨部長はいつもよりも少し何かが違う気がして・・・」



そうなのだ、先ほど会話している時も何か違和感があったのだが、今日の花梨部長は普段ある絶対の守護のような雰囲気が薄い。



それに、言葉使いがいつもと少し違う気がする。気のせいかもしれないが、ちょっとした違いにも最近敏感になってきたボクの第六感が変化を感じ取ってしまっている。



「大丈夫だ。毎回失敗して懲りたからな。」



「え?前にもやろうとしたことがあったんですか?セクハラで訴えられますよ。」



「勘弁してくれ、ただでさえ、花梨の奴隷みたいな扱いになってるんだから、これ以上酷使されたらたまったもんじゃない。」



どうやら、花梨部長と河野先輩の仲は友人というよりも主従関係に近い存在になっているようだ。これならひと安心と思っていると、河野先輩から聞きづてならない話題が上った。



「そういえば、かなりレアな写真を配っているみたいだけど、大丈夫なのかい?柔道着を着た小学校のころの写真かな?かなり高価な値段とはいえ、秋ちゃんの写真ともなれば購入する奴もいるだろ?」



「あんたが言わないの。さっき優花ちゃんから買ってたじゃないの。」



「どんな写真ですか?」



河野先輩から写真を見せてもらうと、そこには小学校の大会の時だと思われる写真があった。その他の写真は今回ボクが許可したものだが、その一枚だけは値段も高く1万円という値段で裏メニューなんて言われているそうだ。



「森君・・・ちょっと、”用事”ができましたので、申し訳ないのですが、失礼させていただきます。」



ボクの用事に花梨部長が反応したものの、ボクはそんなことに構ってはおれずに、入口の方へと足を向ける。



そこには丁度写真をもらってきた優花が出てきており、明実と何やら話をしている。



「優花?ちょっと話があるんだけど来てくれるかな?」



ボクの笑顔に隠された黒い部分に優花が軽く悲鳴をあげる。しかし、断ることもできずに、この大量のお客を明実に任せると、優花を連れ出す。



「とりあえず、今回もらった分の写真を全部見せてくれるかな?」



「は、はい。」



優花は写真を封筒から出してボクに見せる。そこには予定していた分の写真しか入っていなかった。



「ポケットの方も見せる。明実がかわいそうだから早いこと戻らなきゃいけないから手間をかけないの。」



「ごめんなさい。」



優花は誤魔化すことをあきらめて、ボクの小学校の時の写真を数十枚取り出す。



「取り分はいくらだったの?」



「三割あげるって言われて、しかもうちには特別に拡大コピーしたポスター版をくれるっていうから・・・」



「三割ね。ということは一枚3千円ももらってるじゃないの。それでいくら儲けたのよ。」



ボクがそう言うと、優花は先ほど写真を取り出したのとは逆のポケットから、3万もの大金を取り出した。



「まさか、もう十枚も売れちゃったの?」



優花はコクリと首を縦に振ると、申し訳なさそうな顔をする。



「とりあえず、このお金は没収ね。あと、森君からもお金徴収しておいて、そのお金で新しいデザインの服でも作ってあげるから、でも、これ以上の販売は禁止よ。守れないなら、その他ボクの写真はすべて販売禁止にするからね。」



「わかった。」



優花はしぶしぶお金を渡すと、写真をすべてボクに渡してバレたことを森君に報告にいった。しかし、ボクが売れたお金で服を作ってあげることを思ってか、微妙にニヤケ顔になっていた。



「相変わらず甘いわね。まぁ、今回は優花ちゃんも悪いと思っているみたいだから良いけど、もっと厳しくした方がいいんじゃないの?」



「和美、聞いていたんだ。」



「ええ、受付に行ったら、二人ともいないんだもの。まぁミーちゃんがいるから問題はないけどね。」



「そっか、交代の時間近かったんだったね。まぁ罰として優花にはもうしばらく受付してもらいましょ。」



「そうね。ただ、変な写真を売らないか私がチェックしておくわ。」



「よろしくね。」



「それくらい良いわよ。じゃあ、その写真は私が預かっておくわ。秋はちょっと休憩してらっしゃいよ。」



ボクは和美に先ほど優花から受け取った写真を渡すと、少し休憩も兼ねて美術室へと向かう。教室はお化けで一杯だし、こんな人が大勢いる時に屋上になんていけないので、唯一休憩できそうなのが、美術室だったのだ。





最後に森元気くんの陰謀を軽く止めた秋ですが、お化けは出てくるわ、ドジはする。そんな感じで、ちょっと今までよりも日常路線に近いお話を書けたかと思います。

今回のテーマは〜日常の復帰〜です。

え?AKIにとって再転の姫君の世界の日常ってあんな感じですよ。竜と秋はラブラブしてるし、秋の回りは秋信仰であふれているのに、秋は気付いていない的なそんな毎日を送っています。

ゆ・・・あははは。高校に入ってから多くなってきた女性からの絡みも少し今回は抑え気味です。

さて、次回は、読者様からのリクエストに一つ応えることができるかと思います。といいましても、完全に応えるわけではなく、ちょっと懐かしい風景を楽しんでいただく形になるんですけどね。

大半の読者様はどんなことが起こるのか予想がついてしまったとは思いますが、よろしければ次回も再転の姫君の世界に遊びに来てください。

それでは、今話も読んでくださいまして本当にありがとうございました。

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