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再転の姫君  作者: 須磨彰
63/79

チャプター62

対決竜VS秋




陸上競技大会の当日がやってきた。秋と竜は同じクラスではない体育祭はこれが二度目となるが、前回中学校の時は司などが竜と張り合っていたこともあり、秋と竜が久しぶりのことだ。



「今日はお互い頑張ろうね。」



「せやな。どうせやったら何か賭けるか?」



「そうだね。ここのところこうやって競い合うこともなかったし、何か賭けようか。」



「自分のクラスが勝ったら、次の週末デートで、何でも言うことをきくってのは?」



「小学校の時に同じことをやったじゃん。」



その時は個人戦だったが、それでも、同じ様な内容になることが秋には不服だったようだ。



「ええやん。正直良い罰ゲームが今おもいつかへんから、来週までに考えられるやん?」



「仕方がないな。」



秋はそう言っているが、自分も特に何も思いつかなかったようだ。学校に着くと、それぞれのクラスに入っていく二人だった。



「おはよう。」



秋が入っていくと、既にクラスのほとんどの生徒が揃っており、心友たちも準備万端と言った雰囲気だった。



「クーちゃん今日は絶対に優勝しようね。」



「明実は一番の戦力外なの解ってる?」



「うん。だから人事みたいに言えるんじゃないの。応援は任せておいて。」



「うちらの中で明実だけ唯一運動からっきしだもんね。和美だってテニス部で足だけは鍛えてるのに。」



「まぁまぁ、人には得手、不得手があるんだからしかたないさ。それより、今日は随分とゆっくり来たんだね。」



「バスケ部の朝練がないからって、竜がギリギリまで寝てたんだよ。」



「なるほどね。竜くんも気が効くじゃないの。朝早くお弁当を作っている秋を少しでも楽にさせようと、遅く出発したのね。」



「和美、それは言いすぎだよ。まぁおかげでゆっくりお弁当は作れたけどね。」



イベント事の時にはいつもお弁当をみんなの分まで作る秋のために竜が気を効かせたのかは定かではないが、秋の荷物はお弁当で膨れ上がっていた。



「優花の分はもちろんないからね。」



「ええ?ツン先生のお弁当楽しみにしてきたのに。」



「冗談だよ。でも、優花も今回は頑張ってお弁当作ったんでしょ?」



「そうだけど、やっぱりツン先生の方が上手でしょ?」



「料理は愛情。ボクは毎日作ってるから上手なだけだよ。優花だってきっと上手になるよ。今日はおかず交換してくれる?」



「うん。」



「なぁ、俺と優花って付き合ってるよな?」



「何を今さら?」



「秋と優花ちゃんの方がなんだか恋人みたいって言いたいのね。」



和美の言葉に秋と優花が硬直する。



「最近こんな話題が多い気がするんだけど気のせいかな?」



「気のせいじゃないと思うわ。」



そんなこんなで、お弁当を腐らないように保冷剤を入れ、ロッカーにしまうと運動場に出ていく。



秋に、和美が耳打ちをした。



「あれで敦君も優花のこと好きなのよね。」



「そうだね。最近覚えたんだけど、あれも一種のツンデレなのかな?」



「そうかもしれないわね。普段は男の友情とか言いながらも、秋を相手に嫉妬してるんだもの。」



「嫉妬か、お弁当腐らなければいいけどなぁ。」



「一口目は敦君に食べてもらえばいいんじゃない?」



「それって毒味?それは悪い気がするんだけど。」



「違うわよ。彼女の手作りお弁当を他の人が先に食べちゃ余計に嫉妬するでしょ?だから、一口目は敦君に食べてもらうのよ。」



「そうなんだ。竜なんていつも司たちに先に食べられていたから、気づかなかったよ。」



「相変わらず恋愛に疎いわね。今度竜くんに”あなたのためだけに作ったの”なんていって、ハートのお弁当でも渡したら?」



「そ、そんな恥ずかしいことできるわけないじゃないか。」



「あなたたちの関係が進展しないわけがわかったわ。竜くんが鈍感っての大きいけど、それ以上に秋が純過ぎるのよ。」



「いいの。ボクのお父さんは古風な人だから、そこら辺も昔風なの。」



「あら?昔は一二歳で成人よ?秋たちもそろそろ成人したら?」



「どれだけ昔の話なんだよ。とにかく、結婚するまでは、何もしないの。」



秋は真赤になりながらクラスの列に加わると、一学期とは違い仲が良くなったクラスメイトに招かれた。まだ学校全体に秋のことを守る雰囲気はないが、それでも暖かいクラスメイトに安堵するのだった。















「さぁ、今日は絶対に優勝しましてよ。みなさん覚悟はよろしくて?」



「「おぅ。」」



学級委員長でクラスのまとめ役である美香が皆に激励を飛ばすと、良い返事が返ってくる。あまりスポーツに力を入れていないT高は、二年生以降は文理選択と成績でクラスを分けてしまっているため、一年生が一番優勝しやすいらしい。



そして、対抗できるクラスといえば、隣の竜たちのいるクラスとなるので、ここに勝つかどうかが勝負の分かれ目になる。



陸上競技会は、トラック競技とフィールド競技が同時に進行するため、秋たちリレーに出るメンバーは午前中から予選に大忙しだ。



「フィールド競技の方はもう良くっての?」



「うん。砲丸の予選は一定距離を一回なげれたら終わりだからね。リレーがあるからって先に投げさせてもらってきた。ミーちゃんはリレーが終わってから高跳び?」



「ええ、私は逆に順番を飛ばしてもらって後から飛べるようにしてもらってきたわ。」



「うちはツン先生と一緒で先に飛んできたよ。とりあえず予選はクリアしたよ。」



「あんたたちの話を聞いていると、本当に私が何もできない子に思えてくるわ。」



「そんなことないよ。和美だって女の子で早い方だからってリレーの選手になるくらいなんだから自信を持って良いよ。」



「足だけね。秋みたいに何でも優勝できる運動神経が欲しいわ。」



「う〜ん。譲れるなら譲ってあげたいよ。」



こんな会話をしていたが、そろそろスタートの時間になったので各自散らばっていく。予選とはいえ、予戦のグループでも一番を取るとクラスの得点になるので、ここで手を抜くわけにはいかない。



「みんながんばってね。」



そんな四人をのんびりと送り出す明実、明実は100M走で既に予選敗退しているので、これからものんびり応援だ。



「位置について用意・・・・”パンッ!!”」



スタートの合図とともに優花が走りだす。一番外のコースを走っているのだが、予選ということもあり、その差は離れているように見える。



和美も引き離すことはできなかったが、1番で秋にバトンを渡すと、秋は本人は軽く流すような走りで、周囲から考えたら突き放される速度で走り美香へとつなぐ。



「ミーちゃんお疲れ様。予選は一番でバトンが渡ってきたし、見せ場がなかったね。」



「そうね。それじゃあ私は高跳びの予選に行ってきますわ。」



美香はリレーを力を抜いて走ることができたこともあり、丁度いい準備体操になって高跳びの会場へと向かった。



「優花と和美が頑張ってくれたから、ボクも楽だったよ。」



「私はそれほど速くはなかったわよ。それにしても、美術部なのに優花は速いわね。」



「元々アウトドア派だからね。それに美術部の先輩があんな人たちだから、良く外に描きに出かけるから、椅子に座りっぱなしってわけでもないのよ。」



陽子は人間観察に、静香と花梨は風景画にと、美術部の人間にはあり得ないほどの屋外での活動が多く、元々空手をしていた優花などはその雰囲気も悪くないらしい。



「次男子の予選だよ。竜たちと、被って無くて良かったね。」



「そうね。でも、あそこで手を振ってるのバスケ部の先輩じゃないかしら?」



「うん。あの人体力はないけど、リレーのアンカー選手になったんだね。絶対に目立ちたかったんだろうなぁ。」



秋たちのクラスの男子はサッカー部とバスケ部が集まっており、負けることはないとは思うが、二年生のクラスで河野たちが一緒に走ることが何だが不安だった。



「敦!!負けるなよ。」



アンカーの敦にバトンが渡された時、河野と敦は並んでおり、優花も声を上げてしまうくらい応援にも力が入った。



「お疲れ様でした。先輩も惜しかったですね。」



結果から言うなら、敦の勝ちだ。しかし、決勝はタイムで進むので、おそらくもう一度河野たちのクラスと闘うことになるだろう。予選の第二走者が走っている間に、秋たちはゴールの近くに寄ってきて、走り終わった敦と河野を激励する。



午前の予選が終わると、予選までの結果が張り出される。予想したとおり、秋たちのクラスと竜たちのクラスとさらに二年生の文系クラスが上位にいた。



「あそこで俺が坂本に負けなければ、俺たちのクラスが勝ってたのに。」



「日頃の練習不足がたたりましたね。午後も頑張ってください。」



「しかし、竜たちのクラスって意外と予選残ってるのリレーと少ししかないのね。」



「ああ、くじ運が良くて予選で一位だった子たちも、タイムで落とされたみたいだな。」



「なるほどね。じゃあ、午後からはボクらのクラスが有利ってわけだ。」



「解らないわよ。私たちが勝つかも知れないわ。」



「花梨部長のクラスこそ午後はダメなんじゃ?花梨部長と少しの子しか午後から勝てそうな種目がないですよ。」



「そうなのよね。リレーは一年生がいるし、フィールド種目は女子しか残らなかったから、あなたたちと完全に被っちゃってるのよね。」



「うちのミーちゃんはやればできる子なんで、花梨部長もうかうかしれられませんよ。」



花梨の出ている種目は100Mと高跳びなのだが、午前中とは違い、順位がつけられるフィールド競技は、今後差が出てくることだろう。さらに、リレーに関しては、女子は秋たちのクラスがタイムがダントツ高く、男子も結構接戦である。



タイムや予選通過者を確認し終えたそれぞれは、お昼ごはんを食べるべく、散らばっていく。



「いっぱい作ったからたくさん食べてね。」



「「いただきます。」」



ボクらはお弁当を囲んでいる。本来なら竜は自分のクラスで食べるべきなのだが、お弁当をボクが持っているので、こっちに呼んだ。



「上手そうやん。いただきます。」



竜はそう言うと、一番にから揚げを食べた。



「んまい!!」



「良かったよ。どうしたの?みんなも食べて良いんだよ?」



「いや、流石に彼氏より先に食べるのは悪いかなと思って。」



明実まで、先ほどの和美と同じことを言っている。さらに明実の隣では、敦が優花の作ったお弁当の一口目を食べようとしていた。



「どうかな?今回は上手くいったと思うんだけど・・・」



「普通に上手いぞ。優花も料理上手になったな。」



「良かったね。今度からは優花も自信をもって料理を作って良いよ。ボクも一口もらってもいい?」



「うん。先生にレシピもらって作ったお弁当だし、食べて。」



優花にとって、勉強、絵、さらに料理まで秋に教わる先生という立場は違和感がないかもしれないが、周囲からは、怪訝な顔をされる。



「ねぇ。その先生っていうのやめない?料理に関しては、もう十分ボクの指導がいらないくらい上手になったんだしさ。」



「いやいや、それはないでしょ。秋の料理は私だって教わりたいくらい上手よ?」



「明実ぃ。ボクを助けると思ってそこはフォローしてよ。先生って呼ばれ方はなんだか嫌なんだよ。」



「良いじゃないの。おかげで優花ちゃんといる時は不幸知らずなんでしょ?それだけ、愛されて必要とされてるってことよ。」



「まぁ確かにそうなんだけど、敦君はそれでいいの?」



「俺は別に、っていうか、今さらって感じがするしな。」



「そうね。結局私と優花が仲が良くって、一人占めなんてできなかったものね。」



明実の発言に、敦と竜はお互いに顔を合わせると、深い深いため息をつくのだった。



「女の子を一人占めしようなんて考えが間違ってるんだよ。」



「いやそれはちゃうやろ。秋と優花ちゃんがあまりにも特殊過ぎるだけやって、鈴や麻美のこと思い出してみ?」



「う・・・確かにそうだけど、でも、鈴も麻美も心友でいることが多かったよ?」



「秋と比べてどうや?きちんと彼氏優先やったんとちゃうか?」



「そんなことはない・・・ハズ・・・だ、だって、ボクだって竜を優先することはあるよ?」



「はいはい。そこでラブラブモードに入らないの。」



真赤になっている秋に和美が待ったをかける。



秋は秋なりに竜のことを大切に思っていたのだが、どうしても前世の記憶に引っ張られて、男友達的な対応をしてしまうことが多かったことが、一番の原因だろう。



「もう、お弁当のことはいいから、午後からも頑張るわよ。」



誰もお弁当の話などしていなかったような気もするが、秋の強引な態度に、お弁当を片づけられては困ると食事を再開すると、午後からの競技についての話題に変更される。



「そっか、じゃあ、やっぱり竜たちのクラスとボクらのクラスが対決するんだね。」



「せやな。男子は悪いけど勝たせてもらうで、タイム見た感じ俺らのクラスの方が早いみたいやったからな。」



それもそうだろう。アンカーの竜以外はほぼ変わらないが、竜に関しては、100Mを11秒台程で走る。バスケをやめて陸上選手になっても、かなりの好成績を残せるかもしれない。



「あいかわらず、つーちゃんに隠れて普段は気付かないけど、竜くんもお化けみたいな身体能力よね。」



「オバケ!!」



「どあほう。変な比喩を使うな。秋がおびえとるやないか。」



秋のお化け嫌いはもう病気のレベルに達しているかもしれない。和美のお化け発言により、竜に疑惑の目を向ける秋だった。



「せやけど、なんやおかしいねんな。秋と一緒に練習する度に身体能力が上がってる気がするし、秋と勉強するとわからんかった問題もすぐに解けるようになるんてな。」



「なるほどね。竜くんは、クーちゃんが見てる前だと自分の実力以上が引き出せるのね。愛の力ね。」



「ちょま、それは・・・」



実際は、確かに秋の前でがんばったことも大きかっただろうが、それ以上に何か不思議な力を感じていた竜だが、そのことにはまだ気づくことはできない。



「まぁ、ボクの周りって確かに異常に成績が良かったり、運動神経が良い子が集まってたきがするのは確かだよね。」



「せやな。というよりも、秋の影響でどんどん周りの人間の基本能力上がってるような気がするわな。」



「悪い方向に向かってるわけじゃないんだからいいじゃないの。そっか、ボクもみんなの役にたってるのかな?」



「役立つなんてレベルじゃないわよ。秋がいないと寂しいって人間なんて今じゃ両手じゃ数え切れないわよ。」



「和美、膝を撫でないでそれを言ってくれたらもっと説得力あるんだけどなぁ・・・」



「えへへ。スキンシップよ。スキンシップ♪」



そんなスキンシップいらないとばかりに、竜の後ろに逃げる秋だったが、残念なことに、秋の周囲で起きている変化には誰も気付かなかった。



臨死体験を繰り返すことによって劇的な変化を遂げている秋だが、それは自分一人のものではなかった。とくに、陸上競技大会では、実は秋のクラスの方が竜のクラスよりも運動が苦手な子が多かったにも関わらず、午前の結果では、みんな少しずつではあるが成長しており、結果として秋のクラスが少し優位に立っている。



「とりあえず、午後も負けへんからな。」



「俺だって、上田にばかり良い格好させておくわけにはいかないからな。」



敦と竜はお互いに火花を散らしているが、男子が負けても、女子が勝ち、フィールド競技で差がつくので、秋のクラスが負けることはもうないだろう。



午後の競技は午前よりもかなり過酷なものになった。というのも、リレーの決勝とフィールド競技の決勝が被っており、リレーを走る寸前までフィールド競技の待合にいる選手が多くなったのだ。



運動が苦手な子は一種目しか出ておらず、しかも予選で敗退しているため、応援席はのんびりとしているが、逆にトラックとトラックの中はかなり大慌てである。



「調子はどう?」



「あなたは本当楽そうね。」



「だって、高跳びと違って、一回投げて記録を取ったら優勝決まっちゃったからね。」



「うちも、うちより遠くに飛んだ子がいなかったから、リレーが終わった後にベストの更新だけになったよ。」



「高跳びは、まだ150CMを飛び終わったばかりでしてよ。まだ三名ほど残っているので、入賞は決まっても順位は出ておりませんわ。」



その三名のうちの一人が花梨部長であることは、遠くの方で見ていた秋には理解できた。こうしてリレーの前にみんなで集まることができたものの、中々打ち合わせもできないでいた。



「とりあえず、ミーちゃんが花梨先輩に勝ってくれたら、ボクらのクラスは優勝決定だから、がんばってね。」



予想以上に二年生の文系クラスは運動のできる子が集まっていたらしく、砲丸や幅跳びでも優勝こそ逃したものの、入賞者がいたことから、美香の優勝で突き放しておきたいのが現状である。もしこれで、リレーで敦たちが負けることがあれば、ひょっとしたら順位が逆転するかもしれない。



「さて、メインの男子リレーの前に、女の子たちの戦いと行きますか?」



「私がアンカーを務めるのに、敗北などありえませんわ。」



「うん。期待してるよ。」



秋としては、リレーという団体競技のタイムなので、自分の実力も隠せることから、かなり伸び伸びと走ることができ、いざという時はアンカーの美香の責任に押し付けるつもりでいた。



「位置について、よーい・・・・”パァンッ!!”」



女子のリレーが始まると、予選とは違い、優花もそれほど引き離すことができずに、和美へとバトンをつなぎ、和美のところで二位と三位の子との距離が近づいてしまった。



『ありゃ、こりゃまずいな。ちょっと引き離しておかないと。』



秋としては少し引き離す程度のつもりだったのだろう。だが、残念なことに、秋の隣のレーンを走っていた子は竜のクラスの女の子で、以前体育館にもやってきた子だった。彼女は足の速さに自信があり予選ではアンカーを走っていたのだが、秋たちのクラスを見て三走者目を買って出た人物だ。



竜たちのクラスとの差は大きく開き、美香へとバトンが渡される。隣であり得ない速さに翻弄された竜のクラスの女の子は実力の半分も出せずに、さらにバトン渡しでもたついてしまったため、竜たちのクラスは3位になってしまう。



「なんだか良く分からないけど、特したね。これで竜たちのクラスとの差が一気に離れたよ。」



「そうみたいね。うちらの敵は二年生のあそこのクラスに絞られたかな?」



走り終わって少し休憩と四人と明実のもはやいつものメンバーで集まり、男子のリレーの決勝の様子をうかがう。アンカーを走るのは、竜、敦、河野とさらに川本部長の姿まであった。



午前の時には確か200Mかなにかを走っていた川本が何故あの場にいるのかが分からないが、秋には嫌な予感がするのだった。



「位置について、よーい・・・”パンッ!”」



綺麗にスタートをする。フライングをした選手はおらず、どのクラスも一走者目ではあまり差がないように感じる。



第二走者になって、差がはっきりと見えだした。やはり部活などで足の速い子を四人集めきれ無かったクラスはあったようで、四人ほどが前に出て、他のクラスは少し置いて行かれる。



第二走者が第三走者にバトンを渡すとき事件は起こった。



「「あ・・・」」



応援していた秋たちは口を開けて驚く。なんとバトンを落としてしまい、なんと秋たちのクラスは最下位まで落ちてしまったのだ。



その後、敦の検討により、何とか最下位は免れたものの、得点圏内からは大きく外れ、竜・河野・川本の順にゴールに入って行った。



「敦!!なにやってるのよ!!」



「ちょま、俺は何も悪くないやん。」



「いや、リレーの負けは全部アンカーの責任だよ。ミーちゃんはきちんと一位でゴールしてくれたよ?」



「敦くん。もっと頑張らなきゃ。」



「そんなぁぁ。」



そう言ってうなだれる敦だったが、順位はもう変更されるはずもなく、竜や二年生のクラスに大きなアドバンテージをあたえることになった。



「やばいね。一位でなくても、入賞さえしてくれたら、何とか勝てると思ってたけど、これだとミーちゃんが優勝しても二位かもしれない。」



それだけリレーの得点は高く、午前までの順位を考えると、竜たちのクラスには既に追い抜かれており、花梨達のクラスには美香次第と言った様子だ。



「私が負けるはずありませんことよ。」



美香は自信満々だが、花梨部長の能力は未知数だ。秋たちのクラスが見つめる中、フィールド競技最後の高跳びが行われる。
















「惜しかったな。せやけど約束は約束やで。」



「解ったよ。来週末は何でもいうこと聞いてあげるよ。」



結果は、美香は無事に高跳びで優勝した。ところが、高跳びでも三位に竜たちのクラスが入っており、その他も予選を通過した人数がかなりいたため、秋のクラスは竜たちのクラスに続いて二位となり、惜しくも優勝を逃した。



「でも、エッチなお願いとかはやめてね?」



上目遣いで竜にそう懇願する秋に、竜は頷く。竜はどんな罰ゲームを用意するのだろうか。





たまには秋に負けてもらうのもいいかなと思いました。というよりも、団体戦でも少し秋の方が有利だったりするんですが、そればっかりで秋崇拝者にとって信仰のレベルに達してしまいそうだったので、一旦ワンクッションを置きますね。

今回のテーマ〜魔法使い〜でお送りしました。

結果的に負けてはしまいましたが、秋の魔法の効果が少しずつ発揮されようとしております。おそらく前世では竜も他の心友たちもこれほどまでに能力の高い人物ではなかったかもしれませんが、秋が覚醒に近付くにつれ、どんどん周りも影響されていきます。

それでは、またのご機会に、ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。



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