表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再転の姫君  作者: 須磨彰
6/79

チャプター5

再会?運命の出会い?




ボクも幼稚園に通いだす年齢になった。

ボクのすんでいる町はコンビニもない田舎町なので、町の中に幼稚園は三つありそこから小学校まで同じ仲間で通い、三つの小学校があつまって中学に、高校からは少し遠めのところに通うしかなく、大学に行こうと思うと県外にでる子が多くいる。


車で移動しないと娯楽施設がないそんな町だからみなすこしのんびりとした人が多いのが特徴といえるかもしれない。



入園式、制服のない幼稚園なので一回しか着ない晴着に身を包み、お母さんにポニーテールにしてもらい、遊技場に入っていくボク、今まで家族としか接していなかったからちょっと緊張している。


「痛い!!」


緊張して立っていると、ポニテを後ろからひっぱられた。


「なにすんだよ!!」


振り返って睨みつけると、そこには無邪気な笑顔の少年がいた。


「なんかさぁ。ひょこひょこしてたんやもん。」


「ひょこひょこってなんだよ!!」


「ごめんねぇ。僕は司って言うんだぁ。よろしくぅ。」


何とも気が抜ける挨拶だが、何となく前にもこんなことがあったような、なかったような、この感覚はきっと前世の記憶に関係するものだ。

これまでも何度かあった感覚なので、前世で仲が良かった人や大切にしていたものなどに出会うと胸の奥の方から湧き出てくるようなこの感覚にはなれてきた。


「司っていうんだ。よろしくね。」


そう言って笑うと、さっきまで臨戦態勢だったのを、柔らかいものに変えた。

この感覚があったということは、きっと前世の恋人とかなのかな?

いやいや、ボクの前世はおそらく男なんだから親友だろう。

まさか、同性愛者ではないだろう。


「どうしたのぉ?怒ったり、笑ったり、考え込んだり。なんか変なものでもたべたぁ?」


「いや、気にしないで、ボクは秋だよ。これから仲良くしてね。」


極上スマイルというやつを送っておいた。

司も笑顔になるともう既に友達ができていたのだろう、別の子の方に声をかけにいっていた。

ボクは緊張してお母さんのそばを離れられないというのに社交的な性格らしく司の回りには人があつまっているようだった。


「あらぁ、好美さん。こんにちは、この子が秋ちゃんかしらぁ?」


司の方を見ていると、なんだかお母さんに話しかけているおばさんがいた。

田舎町のことなので親たちはほとんど知り合いなのだろうから、

お母さんはよくいろんな人と話している。


「あらあらあらぁ。こ〜んな可愛かったなんてぇ、将来秋ちゃんが司のお嫁さんになってあげてねぇ。おばさんもこ〜んな可愛い子なら大歓迎よぉ。」


どうやら司のお母さんらしい。

間延びする話し方などは確かにそっくりだ、しかし、ボクは司のお嫁とかいきなり言われて


「お嫁になんかいかないから、司くんがボクのお嫁にきてくれるならいいよ。」


うーん、自分でも何を言っているのかわからない。

そういえばボクは女の子で司が男の子なんだから、お嫁はボクでお婿になるのは司なのだろう。

しかし、なぜかお嫁という単語だけに反論したくてへんなことを言ってしまった。


「ふふふ、からかってごめんなさいねぇ。でも秋ちゃんは本当にいい子ねぇ。将来旦那様がみつからなかったら本当に司のお嫁さんに欲しいわぁ。」


まぁ鏡でみて容姿が結構整っているのは知っていたが、まだ幼稚園に入ったばかりの女の子をお嫁さんにもらおうなんて気が早すぎるにもほどがある。

お母さんも冗談だとわかっているので、なごやかな様子でおばさんたちとの井戸端会議に話の花をさかせていた。


「おぉぉいぃ。秋ちゃぁん!」


遠くの方で間延びした声で司が呼んでいるので、ボクはそっちを見ると、友達を紹介してくれるようだった。

司のことは何となく信頼できるとおもっていたので、そっちに向かい、友達の輪の中にはいっていった。

幼稚園の友達はなぜかほとんどの人に即視感をおぼえたが、司ほど強く印象づいたのがいなかったので、おそらくみんな前世で仲が良かったのだと思い、その中でも司は特に仲が良かったのだろうと、勝手に解釈した。


実際幼稚園が始まると、結構広い通学路区分がされており、一緒に幼稚園に通うのは司と、麻美ちゃんという女の子の三人おらず、武兄ちゃんが通学団をひっぱっていってくれたので、いつもこの三人でいることが多かった。

麻美ちゃんは女の子らしい女の子だったので、たぶん前世の時には男友達である司との仲の方が良かったのだろう。

実際男勝りなボクは幼稚園から小学校にあがるまでずっと司と遊んでいたし、偶然女の子が少ないクラスだったので、司とばかり仲が良いボクも特に周りから意識されずに、過ごすことができた。


「おおい。秋ちゃん、ドッチボールしようよぉ。」


「いいよ。他のやつらは?」


「ボールを先生に借りにいってるよぉ。」


こんな風に女の子の中でも活発な性格なボクを男友達の中に引き込むのも司だったりするのだが、

正直武兄ちゃんと遊んだりしていたし、いろいろな事情もあって男友達と遊ぶ方が好きだから結構感謝していた。

前世でも、司はこんな風にボクのことを友達の輪の中にひっぱってくれていたのかな。

そう思うと、嬉しいような、懐かしいような気分がした。


「よぉしぃ。今日こそは絶対秋ちゃんに負けないぞぉ。」


「ボクに勝つならもうちょっと練習しておいで。」


これも原因かもしれない。

ボクは幼稚園にきて初めて気づいたのだが、運動神経はかなり同年代と比べて良いらしい。

それに頭もどうやら良いらしく、ドッチボールでも、ちょっとしたフェイントなんかを入れてボールをなげるとみんな当たってしまうことから、ボクは同年代では負けなしだし、負けん気の強い司は、毎回こうしてボクにいろいろなことでチャレンジしてきてはあとちょっとのところで負けている。

そんな司といて楽しいのでわざとギリギリの勝負にしたり、完全に突き放したりすることで結局遊び相手としてはなかなかいいらしく二人は仲良しだ。




「た〜だ〜いまぁ〜。」


一応声をかけるが、誰かいるわけではない。

父は仕事で当然ながら、出産後しばらくは家にいたお母さんも、ボクが大きくなってきたのでパートに出かけている。

小学校に通ってる武兄ちゃんもボクよりは遅く帰ってくるので、勝手口のげた箱の中にある鍵でみんな自由に出入りできるようになっているのだ。

幼稚園から帰るとリュックサックを置いて勝手口のかぎをさっき開けたばかりなのにまた閉めて、全速力で自転車にまたがり飛び出す。


「司、おまたせ!!」


「今日は何して遊ぶぅ?」


これがいつものボクの日常だ、田舎なので祖父母がいる家庭が多いなかボクの家は誰もいないので、司の家に毎日行って、家族が集まる晩御飯の時までに帰ってくるのが日課になっている。

雨が降りそうだったり家の用事があるときはそれを済ませるまで司に家に入ってもらうこともある。

今日は武兄ちゃんが帰ってくるまで雨も降りそうもないのでこのまま司の家にいって遊ぶつもりだ。


「今日は司も自転車乗れるようになろうよ。いつもボクしか乗れないから遠くにいけないじゃん。」


補助輪つきのものなら乗ることも可能だが、司はまだ自転車に乗れない。

というかボクが乗れるようになったのが早すぎるらしいのだが、前世の記憶の影響だろうから気にしない。

しかし、司も自転車にのれたらちょっと遠い友達の家にいったりできるので是非とも司には自転車に乗れるようになってもらいたい。


「ええぇ?秋ちゃん怖いからいやだぁ。」


「なんだよそれ、ボクがわざわざ教えてやるんだから感謝しろよな。」


「やっぱこわぃぃ。」


こんな会話をしているわりに司の顔は笑顔だ。

ボクのほうも司が本気で嫌がっていないのをしっているので容赦がない。

二人でこれからのことを話しながら、ちょっと舗装のはがれた田舎道をボクは自転車を押しながら、司は幼稚園のリュックサックを背負ったまま仲良くあるいていく。



『そうか、今度は秋ちゃんって言うんだね。本当に女の子になっても根っこの部分は和くんのままだね。これからも幸せな未来がまっているといいね。秋ちゃん。』


秋と司のことを上空から見ている鬼人がいた。

その顔には心底からの安堵が感じられた。

その鬼人に向かって飛んでくる鬼人がいた。


『洋司様』


『霞か、再転の儀式以降初めての休暇なんだ、ゆっくりさせてくれよ。』


『申し訳ありません。しかし、再転から5年たちましたし、落ち着いてきたとはいえ保存の珠玉を任された洋司様にはあと15年はまだこれからもお忙しい毎日が続くものと思われます。』


『そうだったな。再転した年の一年前までは世界の安定のために仕事が山ほどあるんだったな。しかし故郷くらいゆっくり見させてくれよ。』


『故郷をですか?私にはさっきの秋とかいう人物ばかり見ているように思われたのですが。』


『ははは、確かにね。再転前はずっと彼女の面倒をみていたからね。あと三年後またここに来る

までしばらくお別れだね。秋ちゃん。』


優しく、どこか懐かしそうに微笑む洋司の横顔を霞は黙ってみていた。

今回の再転は今までのものよりも安定しておりそれがシュミレーションできたからか、エンマや閻魔の縁者である自分ではなく洋司が保存の珠玉を使って記憶の保存をしたことは知っていたが、それでもなんとなく不安にならずにはおれない霞だった。

保存の珠玉を使うと一瞬とはいえ人格が二つ重なってしまうそれはかなりの実力をもつ鬼人であっても苦痛をともなう。

洋司はそれに耐えるだけの実力をもつとはいえ志願してやりたいものでは本来はない。

それでも保存の珠玉を使った洋司の背中に何かが見えた気がした。


『以前の私は保存の珠玉の影響を知らなかったそうですね。』


『そうだね、しばらく安定した時代が続いたのもあるし、以前の再転の儀式で多くの犠牲が出たため志願者がすくなかったからね。』


『第二次世界大戦ですか。あの時私のお父様と洋司様が世界を救ったと聞きました。』


『みなは英雄だというが、あんなにたくさんの犠牲がでるまで止められなかった世界の破滅をしってるものは、悔しいだけさ。あんな悲劇は二度と起こしてはいけない。それを防ぐためにも今回の再転はシュミレーターの最終確認の意味も大きいからね。失敗はしたくないんだよ。』


『シュミレーターシステムが安定して再転の回数が減ればそれだけで世界は平和になります。是非成功させてください。』







ご愛読ありがとうございます。

AKIは本当に皆様に感謝しております。


今回の話で秋のキャラクターと周囲の反応がある程度伝わったらという目標があります。


勝ち気で男勝りな秋は照れ屋だけど、友達をとっても大事にします。

のんびりとした口調の司はその口調とは裏腹に活発で社交的な性格で秋を今後も助けてくれることでしょう。

また、司のお母さんという完全な第三者をつかって秋の魅力を少しでも表現したつもりです。



小説を読んでくださった皆様に少しでも小説の中の世界が伝わればと、今後も努力していくつもりですので再転の姫君をこれからもどうぞよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ