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再転の姫君  作者: 須磨彰
55/79

チャプター54

夏合宿〜サイド河野〜




合宿はきつい。俺みたいに根性のないやつにとって、合宿みたいなイベントはやる気の起きないものの一つだ。まぁそれでも今年、参加したのには理由がある。



お、ゴールで天使マイエンジェルが微笑んでいる。ってなんで上田の奴が手伝ってるんだ?公私混同しているわけでもないが、上田と天使の仲が良いのは見ていたら分かる。二人とも隠そうとしているのだが、上田の様子を見ていたらそんなのは一目瞭然だ。



天使は、俺のタイムを書き込むと、タオルを渡してくれた。この時にみんな一言ずつだが話ができるのがうれしい。



「はい。河野先輩が最後ですよ。ちゃんと今のうちに体力付けておかないと本当にレギュラーなれませんよ。」



「そんなこと言って、今でもレギュラーは無理だろ?」



「え?河野先輩ってガードもフォワードもできるすごく器用な選手だから、実力はあるんじゃないんですか?あとは毎回体力がなさ過ぎて最初から出せないだけかと思ってました。



最近では朝練もさぼらずに来てるから、技術ではバスケ部でもかなり高い方だと思いますよ。三年生が引退したらレギュラーだと思ってたんですけど?」



まさか、天使がそんな風に思っていてくれたなんて、俺のことを結構しっかりみてくれているんだな。彼氏にくっついてバスケ部に入ってきた時は怪しんだが、今では天使がきちんとした子で、俺らのことを平等に見てくれていることを理解している。



「本当か?色々なポジションに転向しすぎてどれもいまいちだと思ってたんだけど、そういう考え方ができるのか。」



「確かにセンターとかは無理かもしれませんが、試合が始まったら器用な選手って一人いるとすっごく助かると思うんですよ。」



「この合宿頑張ってみるかな。本当に体力がついたらレギュラーなれるかな?」



「はい。先輩のネックは体力なんでいつも控えですが、ベンチからは外れたこと無かったじゃないですか。」



そうか、体力をつけたら、俺もレギュラーなれるのか。天使はいっつも俺らのことをきちんと見てくれてたから、この言葉は間違いないだろう。




「さて、先輩の記録も着け終わりましたから、体育館の中に移動しましょう。河野先輩は体力をつけるためにそれほど休憩を必要としないみたいですので、すぐに始めましょ。」



「そ、そんなぁ。」



「蟹津さんが言うんだから反論しないの。マネージャーはみんなの状態を見て言ってるんだから信頼しなさい。」



天使のこんな飴と鞭の仕打ちも悪くはない。実際文句を言いながらも、天使の言ったとおり体育館に向かう。俺はストレッチなどを軽くしながらも天使の言葉と今後の課題について考える。



俺らは準備を整えると、部長を待つ。合宿の時はいつもこの部長の挨拶から始まるのでこれは決まったパターンといったやつだ。整列をして部長の言葉が始まる。



「この合宿で俺たちは最後だ。合宿中に部長と副部長を含めた今後のメンバーの役割を決める。今年もマネージャーが一人になるので、レギュラー以外はできるだけ蟹津さんをサポートしてもらうことになる。レギュラーを取りたかったら、人の倍練習しろ。」



おいおい、これじゃあ今年はレギュラーを目指す奴は一人もいなくなっちまうぞ?天使と一緒にマネージャーなら悪くはないな。そんな風に思っていると、天使からありがたい一言が舞い降りた。



「ボクもレギュラーになった子たちが試合に向けて集中できるように目一杯サポートできるように頑張ります。努力する男の子ってかっこいいので、ボクにみんなの努力する姿を見せてください。きちんとマネージャーノートで評価します。」



「「おお!!」」



うんうん。これこそやる気がでるってもんだぜ。天使マイエンジェルきっと君のために俺はレギュラーを取って見せるぜ。



そのあと俺たちは練習を張り切った。先ほどの天使の発言により、どれだけ頑張っているのかを見せるために普段以上に練習に熱が入っていたため、途中でへばるやつも現れたくらいだ。



「お〜い。晩御飯を食べたらミーティングをするぞ。ご飯前にシャワー浴びて来い。」



部長の言葉で俺たちは練習を切り上げようとすると、もうみんなヘトヘトになっており、その場でへたり込みそうになる。



「綺麗に洗ってきてくださいね。ボクと先輩で一生懸命作った晩御飯を汚い手で食べたら怒りますよ。」



「「はぁ〜い。」」



くそう、良いタイミングで言葉を掛けてくるぜ。あんな風に言われたら夕ご飯が楽しみで仕方がないじゃないか。早くシャワーを浴びて、天使の隣の席を取らなくてわ。



俺は急いでシャワーを浴びに向かう。前までならこんな時もだらだらと過ごして周りに合わせていたような気がするが、いつになく積極的に合宿に参加している気がする。



シャワーを浴びて食堂に向かう。俺たちの高校には学生食堂があり、合宿の時はその施設を利用して三食を取るのだ。



「先輩、配膳手伝いましょうか?」



「もう終わりだから良いわ。それに、河野君に任せたら蟹津さんがかわいそうだから、私と蟹津さんは二人で座ることにするわ。それよりも、終わった後に洗い物を各自でやってよね。そうしたら蟹津さん喜ぶだろうな。」



「任せてください。女の子だけが家事をする時代なんて遅れてますよ。洗い物は俺らに任せてください。」



「去年はそんなこと言ってくれなかったじゃないの。」



「いや、去年は一年生は強制的に手伝わされたじゃないですか。」



「あら?そうだったかしら?」



この先輩は油断できない。なんだかんだ言って、俺たちのことを一番上手く操っている気がする。まぁ天使からの好感度があがるなら皿洗いくらい全然しちゃうけどね。



部長がいただきますを言ったところからは戦場だった。俺はまず、天使が給仕しているご飯から食べだす、当然ご飯をおかわりすれば、天使があの小さな手でおかわりを自分のためによそってくれるからだ。



もう少しで食べ終わっておかわりというところで、声が聞こえる。



「秋、おかわり。」



「はや!!竜ちゃんと噛んで食べてる?消化不良起こさないでよ。」



上田ぁぁぁ!!貴様あとで覚えていろよ。俺が一番におかわりを頼もうとしていたのに、給仕のことに気づいた連中が我さきにとご飯を掻き込みだした。



「蟹津さん。こっちもおかわりちょうだい。」



「は〜い。」



「つーちゃん。おねがい。」



俺が上田を睨んでいる間に川本と坂本の奴が立て続けにおかわりをお願いしやがった。坂本の方はおかずなども多少手をつけているので早食いなだけかもしれないが、川本は間違いなく俺と同じで天使の給仕をお願いするためにご飯から食いだしたな。



あ、今川本の奴俺に流し眼をしてきやがった。絶対に気づいてやがる。それじゃあ俺も、



「おかわり!!」



「あんたら、お味噌汁も頼みなさいよ。こっちだって蟹津さんの手作りですっごく美味しいんだから。」



しまった、そっちから攻める方法があったか、天使からの直接給仕してもらえるという魅力に負けて気づいていなかった。ご飯のあとはお味噌汁も、う、上手い。これはご飯だけ食べるよりもおかずを食べながらの方が逆に箸が進むかも。



このあと俺も含めたバスケ部員たちは、天使の手作り料理を堪能した。ちょっと食べ過ぎたかもしれんがいが、とっても美味しかったし、大満足の俺がいた。
















食事が終わるとミーティングが始まる。以前から川本の奴は次期部長にと言われ続けていたのですんなり決まったのだが、副部長に推薦された管崎が渋る。



「そんなに気負う必要ないぜ。俺たちだって部長と副部長に全部任せたりしないでサポートすっからさ。」



「そうだよ。俺も管崎が副部長になってくれたら、部長の仕事をサポートしてくれるとおもうから、推薦したんだから。」



川本と俺で説得をする。三年生の先輩たちはその様子をのんびり見物といった雰囲気だ。



管崎がやっとのことで納得をしてくれると、最後に新生バスケ部としてみんなが一言ずつ言っていく。これも毎年のことだ。



「上田竜です。ポジションはセンター・フォワードです。二年生の先輩からレギュラーを取るつもりで頑張ります。先輩たちの胸を借りて一生懸命練習します。よろしくお願いします。」



一年生の最後の方に上田が話した。上田は実際に技術でも体力でも去年まで中学生だったとは思えないような域に達しており、レギュラー確実といった雰囲気にも関わらずまだまだ上を見ている様子だ。



「上田はすでにレギュラー入り決定だろ。あの部長にマラソンで着いて行ったんだしな。」



「いえ、中学出たばかりの俺がまだまだってことを痛感しました。本当に死ぬ気でレギュラー目指します。」



あの部長にマラソンで着いて行ける奴が、中学卒業したばかりの人間だという時点ですごいんだぞ?管崎が渋るのもわかるぜ。確かにこいつがいたら、レギュラーが危ぶまれるから、副部長なんて大任を任されるのはつらいかもしれないな。



「坂本敦です。ポジションはガードです。先輩にガードが多くてレギュラーの層が厚い部分ですが、上田にだけ良いかっこさせられないので、俺もレギュラー目指して頑張ります。」



今年の一年は上田だけじゃないってか。上田は超級の逸材だと思っていたからその陰に隠れて目立っていなかったが、確かに坂本も二年生の補欠連中をしのぐ実力を持っている。本当にこれじゃあ俺のレギュラー入りはかなり難しいぜ。



一年生が全員話し終わり、マネージャーがみんなに話をしてくれる。もちろん天使の出番だ。



「ボクは、この三ヶ月間マネージャーをしてきましたが、皆さんの結論次第では実はやめなければなりません。」



は?何を言ってるんだ??天使は今まで何にも俺らに悪いことしてないだろ?上田と付き合っているのがそんなに後ろめたいのか?それでも俺たちは天使を応援してきたぞ?



「ボクの昔のあだ名を知っている人も多いと思いますが、ボクは本当に不幸少女です。ボクの周りには不幸が絶えません。その理由についても、ここにいるみなさんにだけ公開します。これについては、絶対に誰にも言わないでください。その訳もきちんと話します。」



どうやら、上田とのことは関係ないらしい。それ以上に天使の過去についての興味が俺たちの耳を天使の言葉に集中させた。



「そんなわけで、皆さんがボクのことを大切に思ってくださるのなら、不幸は起きないので、マネージャーを続けることができるのです。



もし皆さんがこんな子と一緒にいたらいつ不幸に会うか分からないと思われるのでしたら。今すぐマネージャーをやめなければなりません。」



天使はそこまで話すと、本当に申し訳ないといった様子で周囲を見渡す。天使の言葉に涙を浮かべている奴もいる。いてもたってもいられなくなった俺は気が付くと立ちあがってまくしたてていた。



ガタン



「んなの決まってるぜ。俺たちは秋ちゃんの笑顔に一杯助けられてるんだ。今日の晩御飯もすっごく上手かったじゃないか。みんな秋ちゃんを助けるよな?仲間だって認められるよな?」



俺の言葉に川本が同調する。



「河野の言う通りだ。部長になった俺が蟹津さんを認める。もし蟹津さんを厭う奴がいたら、仲間を見捨てるやつだ。そんな奴はバスケ部員じゃない。」



俺と川本はそう言いきると、みんなの顔を見渡した。確かに言葉を発したのは俺たち二人だけだが、その気持ちはみんなも同じらしい。もう、彼氏がいることから、天使のハートを射止めることはできなくても、彼女は俺たちにとって既に仲間であり、大切に守るべき存在だ。



「あ、ありがとうご、ざいます。ヒック」



泣き出してしまった天使に、俺は言葉を掛ける。なんて言ったらいいのか分からなかったが、俺たちが仲間として歓迎していることを精一杯伝える。



「泣くな。秋ちゃんは何も悪いことしてないじゃないか。秋ちゃんを嫌う奴がいたら。俺たちがそいつを秋ちゃんに近づけない。秋ちゃんの不幸を願う奴がいたら。みんなで説得してやる。だから、一緒にバスケ部に残ってくれ。」



「ふえぇぇん。」



天使の涙を見たくなくって言った言葉が、逆にとどめを刺してしまったらしい。嗚咽混じりに言葉を発しようとするが、上手くいかず、とうとう完全に泣き出してしまった。



「秋はいつも自分を犠牲にしてきました。甘えん坊の癖に誰にも甘えられへんかった時期もありあした。そんな時、俺ら心友は今まで支えてきました。今度からはバスケ部のみなさんにも秋のことを支えてやって欲しいんです。



これは、秋と秋を守ると心から決めた人たちに配るミサンガです。同意してくださった人はこれを手にとってください。もちろんまだ考えたいって思う人は考え抜いてください。さっき秋が言ったように、本当に危険なことも怒るかもしれません。



軽はずみに手に取るんじゃなくて、一生のもだと思ってください。ちなみに、ファンクラブにも公開してない極秘事項なので、このミサンガを持った人たちには特別に連絡を入れることがあるかもしれません。」



上田が泣き出して言葉を発せられなくなった天使の代わりに、みんなに言葉を紡ぐ。お前らの友情、愛情は絶対に俺たちが守ってやるよ。俺は川本と一緒に奪うようにして上田の手からミサンガを取り上げると、左の手頸に巻いた。



「さ、三年生の人たちまで。」



「当然だよ。俺たちは引退してもT高のバスケ部員だからね。蟹津さん。辛いこと一杯経験してきたんだね。俺らは仲間だから、絶対に一人で抱え込まないで相談するって誓ってくれ。そうしたら、俺らもきっと蟹津さんの力になれるよ。」



流石、俺たちの先輩だぜ、一年間この人たちの下でバスケ部をやってきて本当に良かった。先輩たちのその意思を俺たちは絶対にないがしろにしたりしない。そうやって、仲間を大切にしてきたバスケ部だからこそ、めんどくさがり屋な俺がこうして一年間続けられてきたんだしな。



その恩返しを後輩を守る。マネージャーだって俺たちの仲間として迎え入れることで、返させてもらうぜ。



そのあと、天使が落ち着くまでみんなで今後のバスケ部のあり方について話し合う。今まで以上の結束をそこに見た気がする。そういう意味では、天使が問題を持ってきてくれたことは感謝すべきかもしれない。



先輩達が引退して、右も左も分からない俺たちに、一つの指針のようなものを作ってくれた。



「もうこんな時間か、そろそろ明日の練習もあるから寝るぞ。」



「初日くらい良いじゃねえか。部長はせっかちだな。」



「部長って呼ぶなよ。なんだか変な気分だ。」



「これから呼ばれるんだから、今のうちに慣れておけよ。まぁせっかちではあるが、川本の言うことも一理あるな。」



川本との掛け合いも終わると、みんな解散して部屋に戻ることになった。三年生は受験もあるので、部長とマネージャー以外は明日からは合宿に参加しないので、最後のお泊まりとなる。部屋に帰っても、少しの間去年を懐かしがって話すことになるだろう。



部屋で思い出話をしていると、上田がこっそりと出口から出て行くのを見つけた。他の奴は気付いていないみたいだったので、俺もみんなにバレないように後を追いかける。
















「竜!!なんでここに?」



「いや、何となく、秋がいるようなきがしたんや。」



「そっか。今日ありがとう。ボク途中から何も言えなくなっちゃった。」



「気にせんでええよ。ホントみんなええ人たちばっかでよかったな。」



「うん。面と向かってお礼をいうのも恥ずかしいけど、やっぱり何度お礼を言っても足りないよ。ボクのわがままに付き合ってもらうなんて、ホント申し訳ないよ。」



「どあほう。秋がわがままなんやったら、世界中にわがままじゃないやつみたいおらへんわ。」



俺は、決定的な場面を目撃してしまったのではないか?上田と天使の合びき現場を影からみてしまっている。今更声をかけることもできずに、扉に隠れて二人の会話を聴いてしまっている。



「そんなことはないよ。本当だったら、みんなを危険にさらすかも知れないって解ってるんだから、マネージャーなんてやっちゃいけないと思うんだ。それでも、残りたいって思ったのはボクの甘えなんだよ。」



そんなことない!!



「んなわけあるか。普通の高校生が普通に部活に参加するんにそんなこと考えるやつおらへんわ。」



俺も叫びかけたが、どうにか抑えることができた。俺が言いたいことはおおむね上田が言ってくれた。



「普通の高校生か。確かにそうだよね。ボクも普通に高校生活送りたかったよ。」



天使の言葉に上田が、抱きしめた音が聞こえる。扉の陰になってみることはできないが間違いないだろう。



「秋は普通だ。普通に傷ついて、普通にこうして悩んどるやないか。悩み事が少し人とちゃうだけや。」



「ちょま、竜。待って。」



「いや、待てない。」



「そ、そうじゃなくて、そこ、扉の陰。」



どうやら見つかってしまったらしい。



「すまんな。盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど、出て行くタイミングをうしなっちゃってな。」



「い、いえ、所でどこから聞いていたんですか?」



「さ、最初からかな。」



「それって盗み聞きする気満々やないですか。」



上田はそう言うと、天使から体を離して、あきれたような顔を向ける。



「まぁそう言うなって。だけど、上田の言う通りだぜ。秋ちゃんはなんでも一人で背負い込みすぎてるんじゃないか?高校に入ったばかりで、頼れる人が見つからなかったのは仕方がないけど、バスケ部のみんなくらい信用してくれよ。」



「ごめんなさい。」



天使は謝っているが、今後改善されることはあまりないだろう。それだけ、自分が何でもできる人間というのは、自分以外の人間に何かを任せることが苦手なのだ。



「それよりも、何で体育館なんだ?それにボールって、秋ちゃんってスポーツしたらまずい体なんじゃなかったっけ?」



「そういえば、そんな誤解がありましたね。ボクはスポーツができない体じゃなくて、スポーツをして目立つと不幸が起きてしまう体なんです。」



そう言うことか、不幸な体質がこんなところでも天使の行動を制限していたらしい。ということはバスケもひょっとして?



「当然、できますよ。竜と一緒に1on1をしたりもしてましたから、竜にはまだ負けたことはありません。」



「え?上田が負けるって、そんなに上手いのかい?」



俺の気持ちを察したかのような発言に反応してしまった。上田はバスケ部でもかなり上位に入るくらいの上手さだ。その上田に負けたことがないといった言葉が信じられなかった。



言葉で言っても信じられないと天使も分かったらしく、ボールを軽くドリブルすると、スリーポイントの位置からシュートをする。その動きは流れるように滑らかで、思わず見入ってしまった。



「信じてもらえました?」



「ああ、すっごく綺麗だった。まるでボールが秋ちゃんの思うままに従ってゴールに吸い込まれていくような気がしたよ。」



俺はこの天使が決めたシュートを目に焼き付けた。今まで見てきたどんなフォームよりも、美しく、限りなく無駄がないそのフォームは俺の今後の目標となった。



「みんなには内緒にしておいてください。でも、バスケをしらないわけじゃないので、マネージャーからの助言はきちんと聞いてくださいよ。」



「おう。さぁ、秋ちゃんも明日早いんだからもう寝なさい。上田も、抜け出したのは俺が連れ出したことにしておいてやるから、一緒に帰るぞ。」



「「はい。」」



俺は上田と共にみんなが寝ている部屋へと帰って行った。多少何をしていたのか聞かれたが、俺が上田に話があったというとみんなも納得して寝る準備を始める。



俺は、先ほどみたフォームを何度も頭の中でイメージしながらその日眠りについた。








河野先輩はちょっとナンパキャラ的な立場なんですが、それでも信念をもって接してくれていたんですね。

秋を毎回のように口説く河野先輩・秋を狙う目線は実は他にも?といった話ではありましたが、結局のところ、心が高校生になってみんな成長して自制を聞かせることができるようになっているんですね


今回のテーマは〜あの時別の人から見た〜という表現方法をどのようにして書くかです。

今までも何度も挑戦してきたテーマではありあすが、高校生になって、同じ場面を違う人から見た時に、どれだけその人の空気を出せるかというのはとても難しいです。



それでは、再転の姫君をここまで読んでくださって本当にありがとうございました。



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