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再転の姫君  作者: 須磨彰
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チャプター49

美香の世界




なんで私がこんな子と一緒に病院なんているのかしら、しかも、なんで向こうだけ彼氏同伴なんて、私だって一声かければ男なんていくらでも集まるんだから。



「北条さん説明を先送りにしてごめんね。今からきちんと説明するね。」



「早くしてくださる?大した疑問でもないとはいえ、隠しごとを私にするなんて苛立つだけですわ。」



「う〜ん。話を最後まで聞いても同じことが言えるか分からないけど、きちんと説明するね。ボクってすっごい不幸体質で、今日の事故もこの前のイノシシもたぶんボクのせいなんだよね。」



「はぁ?じゃあ、私はあなたの不幸に巻き込まれた犠牲者じゃないの、じゃあ、先ほどまでの感謝の気持ちは無意味?ってことかしら?」



「そうでもないんが、一大事なんやけどな。秋?もう、教えたってええんか?」



「うん。大丈夫だよ。北条さんはプライド高いけど、悪い人じゃないからね。」



二人にしか分からないような会話をまだ続けるつもりなのですね。本当にこの二人は何かイラつきますわ。というか、車の中からずっとですけど、その男との間に態と体を入れないでくださるかしら?まぁ、顔は悪いとは言えませんけど、私はそんな男のことなんてどうでもよくってよ。


「プ、プライドなんて、全く、どこまでもイラつく人ね。」



「まぁ、そういうなや。秋がこんな態度とるん珍しいんやけどな。そんなことより、本題にはいるで、秋はな、相手に憎まれると不幸が起こる体質やねん。この意味分かるか?」



「え?相手に?」



「つまり、今回も前回も、北条さん。あんたが秋のことを恨んだから事故がおこっとるんて、せやから、確かに巻き込まれたっても言えるんやけど、原因はあんたにもあるっちゅうこっちゃ。」



この男ムカつきますわ。先ほどから蟹津さんの味方ばかりして、それではすべて私が悪いって言いたいのかしら!?



「ちょっと、待ちなさいよ。それじゃあまるで私が悪いみたいじゃありませんか。私そんなことしらなかったのに。」



「もう、竜はそんな言い方してあげないでよ。北条さんの言う通り、知らなかった北条さんに責められる理由はないんだから。とにかく、ボクのことを恨むと、今回みたいにその分北条さんに返ってくるから、気をつけてね。」



私を脅すなんて、良い度胸してるじゃありませんの。次に不幸が起こった時はあなたのたすけなんて借りずに自分で回避してみせますことよ。



「ちょま。お前ちゃんと仲直りする気あんのか?俺の言った言葉よりもひどいんやないか?」



「もう、鈍感なら最後まで鈍感でいてよね。変なところだけ鋭いんだから。ボクは北条さんと仲良くするつもりはないかもね。だって、北条さんとはライバルだからね。」



「はぁ?ライバルってどういうことや?」



「とにかく、北条さんとは永遠に争いあう仲ってことだよ。でも、今度からは陰で悪さしたり、足を引っ張り合うような関係じゃなくて、正々堂々戦いましょ。ボクは絶対に負けないんだからね。」



「ええ、私もその方がいいですわ。いきなり仲良くなれなんて言われるよりも、それに私は今日あなたに宣戦布告をするつもりであそこで待っていたのですもの。バスケ部の方に顔を出したら、あなたはいないし、帰ったかもしれないと思って自転車置き場に行ったらあなたの自転車はまだあるんですもの。」



「それで、電車と自転車置き場の別かれ道でボクを待ってたの?本当に電車で先に帰ってたらどうしてたのさ?」



「そ、その時は川瀬さんにでも連絡先を聞いて家まで押し掛ける気でしたわ。」



「プライド高いとは思っていたけど、そこまでだったんだね。竜はこんな子のことどう思う?」



「せやな。俺も昔あんな感じやったんかなとか思うと微妙やわな。」



「ふ〜ん。」



どういうことかしら?先ほどからやけに私に突っかかってくるかと思えば、彼氏に私の話題をふるなんて。しかも、昔の彼と私が似ている?



「なによ。私がこんな男と同じと思わないでいただきたいわ。今回の期末でわたくしは学年4番、今はまだ知られていないかもしれませんが、運動だって秋の競技大会では私のすごさをみせてあげましてよ。」



「ああ、竜はボクに張り合って切磋琢磨してきた人間だから似ているって意味だよ。あと、学年で二番の上田竜だよ。ついでに運動の方も、夏の大会から一年生ながらバスケ部のレギュラーになるくらいできるよ。」



「え?上田?・・・・が、学校の成績だけがすべてではありませんわ。わ、わたくしは私生活だって・・・」



「はいはい、負けず嫌いなのは分かったから、張りあうのはそこら辺にしてね。それよりも、さっきから看護婦さんが北条さんの名前を呼んでるよ。」



「北条さん、検査しますよ。」



「は、はい!!」



私としたことが、会話に夢中で周囲への配慮を怠るなんて、蟹津さんと一緒にいるとこちらの調子が狂ってしまいますわ。



「北条美香さんだね。こんな綺麗な子が怪我なんてしたら大変だ。事情は担任の先生から聴いているから、そっちのベットに横になってゆっくりしていてね。担当の看護婦が少しみるだけだから、一応レントゲンとかも撮るから、検査が終わったら移動してね。」



なんなのですか、これだから田舎の医者はいやですわ。馴れ馴れしい態度なんてとっちゃって、まぁ私のことを綺麗と誉めたあたりは見る目だけは確かの様ですね。



「先生久しぶりです。」



あら?蟹津さんも入ってきたみたいね。



「また秋ちゃんか、全く今度は事故だって?運転手が秋ちゃんの可愛さに見惚れて事故したんじゃないだろうね?」



「そんなわけないじゃないですか。角を曲がってきたところにボクたちが立ち話をしていて事故してしまっただけですよ。」



「そうか、秋ちゃんみたいな絶世の美少女がいたら先生なんて運転に集中できないもんだが。」



わ、私には綺麗としか言ってなかったのに、絶世の美女ですって?やっぱりこの医者の目はあまりあてにはなりませんわ。



「もう、お医者さんがよそ見運転で事故して自分の病院で入院なんて笑い話じゃないですか。先生も気をつけて運転してくださね。」



「ああ、もちろん気をつけるさ。入院している間に秋ちゃんが怪我をしたら、誰が秋ちゃんの治療をするんだい。」



「そうですね。先生には本当にいつも助けてもらって感謝してます。」



そうなの、そう言えば不幸少女って言ってたわね。じゃあ、さっきのは常連の客に対するリップサービスみたいなものなのね。



「いやいや、ところで、秋ちゃんの回復力について論文を書きたいのだが、やっぱり許可は出してもらえないだろうか?」



「それはちょっと、自分でも異常なまでの回復力に驚いていますし、先生以外の人に体を見られるのもちょっと。」



「秋ちゃんもそんな年になったんだね。今は彼氏もいるんだっけ?今日も外でまってるのかな?」



「はい、学校の帰りだったので、診察を受けている間に両親に連絡をしに行ってくれたので、お母さんも来ますよ。」



「あの美人のお母さんだね。しかし、秋ちゃんも日に日にお母さんに似て綺麗になっていくよね。前までは、可愛い感じだったけど、今はもう大人の女性っぽくなってきたね。」



そ、それにしても、やけに蟹津さんの診察だけ長くありませんこと?私の診察の時はこの看護婦に任せてさっさと次を呼んだくせに、この医者もなんだかムカついて来ましたわ。



「北条さん。異常は見つかりませんでした。一応レントゲンを撮るので、そこの角を曲がった撮影室に向かってください。部屋の前に着替えなども置いてありますので、それに着替えてください。」



私は指示された部屋へ向かうためにベットから降りて、診察室を出ようとする。すると、まだ蟹津さんとの会話は続いているらしく、笑い声が聞こえてくる。



「もう、ボクはまだ中学生ですよ。結婚なんて考えてませんよ。」



「いやいや、今どきの子は早いっていうじゃないか。秋ちゃんが16歳になったら先生と結婚しないか?」



「だから、彼氏いますって。」



やっぱり何だかムカつく。



レントゲン室に向かって歩き出すと、そこに上田くんがいた。先ほど連絡に行ったと言っていたが、ケータイをいじっていることをみるとそれで済ませてしまったらしい。



「ちょっと、院内ではケータイの電源を落とすのがマナーですわ。機器に障害がでたらどうしてくれるのよ。」



「ああ、わりい。高校に入って持ったばかりやから、ケータイって慣れんくってな。今からレントゲンか?」



「ええ、異常はないみたいだけど、念のためにって言われてね。」



「そりゃそうやろ。秋が抱えて跳んだんや、秋本人がどこかに当たることはあっても、あんたの体は確実に守ったやろうからな。」



「そ、それは・・・」



確かに足に怪我をした蟹津さんに比べて五体満足でいる私に疑問を持ちましたけど、それが彼女がかばったためであると現場を見ていなくても理解している二人の関係はどれほど強いものなのかしら。



「それより、先ほど誰かとメールをしていたみたいでしたが、何の話を?」



話題から逃げたくなった私は卑怯だとは感じながらも、違う話題を彼にふっていた。



「ああ、今回の事件のことを中学の時の心友たちにメールしとったんや。そしたら、あいつらこの前の期末でY高のトップ4独占したらしいわ。」



「Y高のトップ4?Y高ってT高以上の進学校じゃありませんこと?」



「せやで、自分でいうのも変やけど、俺や秋もY高受かるレベルはあるからな。特待生制度があったから、俺と秋は無料で通えるT高受けたんやけど、Y高受けてたらトップ6は俺らで埋めとったやろうな。」



「そ、そうなの。自信過剰もそれくらいにしておかないと、私がすぐに抜き去ってごらんにいれますわ。」



「ああ、がんばれよ。秋がライバルに認めたんやったら、ほんまに俺と同じかそれ以上になるかもしれへんしな。秋のライバルとしての助言やけど、そんじょそこらの努力じゃ秋に追いつくのは無理やで。」



「私が努力を惜しんだことなどありませんわ。それに、私だけじゃなく、勉強だけなら、私たちのクラスの森君や川瀬さんがいますしね。」



「ああ、川瀬ってのは心友やろ?絶対に伸びるな。森ってやつなんやけど、どんなやつなんや?この前の遠足の時におったってことは多少話したりはしとるんやろ?」



「森君?そうですわね。私もよくわかりませんわ。一時期蟹津さんについて良く聞いてきたことがありましたが、それ以外に話したことはありませんもの。」



「なるほどね。あくまで秋狙いやったってことか。しかし、その話し方、まるでどっかの御姫様か貴族のご令嬢みたいな話し方やな。」



「わ、私の家は本当に明治華族の旧家ですわ。」



「そうそう、そのわたくしって言うのが高貴な身分っぽいねんな。華族ねぇ。家のことでなんや大変なんやろうけど、秋に対して悪いように思わんといてな。ライバルなんて言ってたけど、本当は仲良くしたいんやから。」



「そ、そんなことは解ってますわ。こちらだって、良きライバルとして共に高めあいたいとおもってましてよ。」



「ああ、それは無理や。秋の成長速度は異常やし、現在でも置いてかれとるんやから、背中を追いかけるんで一杯一杯やで、小学校の時から見てきた俺がいうんやから、間違いあらへんわ。まぁそれでも頑張ってれば秋の方から手をのばしてくれるけどな。努力する人間好きやからな。」



「あなた、蟹津さんが努力している人が好きなのを知っていて、そういう風に見せて蟹津さんの気を引いたの?サイテーね。」



「結果的にそうなるかも知れへんな。秋に認めてもらいたかったんはほんまやしな。でも、努力したのは成績を見たらわかるやろ?本気で追いつきたかったんや。」



そう言った彼の顔は男の子の顔をしましたわ。なんていうのかな、無茶して登らなくても良いはずの山に挑戦して、それを登り切った後のような。そんななんだか良く分からない感覚ですわ。



「そ、そろそろレントゲンを撮らないと、蟹津さんが来てしまいますわ。」



「せやな。まぁ、同じクラスなんやろ?頑張ってな。」



「と、当然ですわ。」



私は何か分からないこの胸のドキドキから逃れたくて、レントゲン室に入っていきました。そこには専用の服とかごだけがおいてありましたわ。服を着替えて、撮影室にはいると、そこには蟹津さんがもう既に来ていました。



「ありゃ?診察室を出たのがずいぶん前だったからもうおわってると思ったのに、ひょっとして外にいた竜と話してた?」



「ええ、少しあなたについて話をしていましたわ。」



「ふ〜ん。じゃあ、やっぱり、恋の方でもライバルだね。ボクは竜のこと大好きだから譲るつもりはないからね。」



「そ、そんな、あんな男のことなんて・・・・」



「まぁ、竜が浮気するとは思えないけどね。こうなると思ったから、極力遠ざけてたのになぁ。先生の話長いんだもん。」



「か、勝手に結論を出さないでくださる?」



「じゃあ、竜のこと嫌いって言いきれる?無理しなくてもいいよ。きっと別にカッコ良い彼ができるよ。竜についてはあきらめてね。」



「あなたって、本当に私のことを馬鹿にしてますのね。」



「ボク嫌いな人は無視するよ?北条さんのことは嫌いじゃないよ。でも、竜のことがあるから、やっぱりライバルかな。絶対に負けないけどね。」



「ふふ、なんだか上田君のことなんてどうでも良くなってきましたわ。あなたと正式にライバル宣言をしますわ。絶対に追い抜いてみせましてよ。」



「ふん。とりあえず、ここはボクの勝ちかな?」



「ちょっと、いきなり何をするのよ!!」


いきなり、蟹津さんに女性の特徴を揉まれてしまいました。私としたことが、触られるまで反応すらできませんでしたわ。今日のことといい、テストのことと言い、確かに超えるのは中々大変そうですわ。



「私がやられっぱなしで終わるとでも?」



「ちょま。ダメぇ〜!!」



私がお返しにと蟹津さんの物を揉むと可愛い声を上げだした。あら、思っていたよりも柔らかい。癖になりそうかも。



「ぼ、ボクはそんな性癖はないんだから、うぅ・・・」



「ふふ、私でもこれは勝てるようね。あなたよりも忍耐力があるってことですわ。」



あとで友人に聞いたら、むしろ男性からしたら、良い反応を返した蟹津さんの方がポイントが高いことを聞いてしまいましたわ。




つ、次こそは勝って見せましてよ!!











AKIは物語の中にツンデレ要素と百合表現をいれないと生きていけないのでしょうか?

色々と執筆に関する疑問は残るものの、今回で北条美香との絡みは終了です。レントゲン室を出た後の竜の反応は皆様のご想像にお任せすることにいたします。まぁ、鈍感発言で秋を真っ赤にさせたり、北条さんとの絡みについて秋が言い訳をする様子など、様々な妄想をしてあげてください。

今回のテーマは〜北条さんと秋をライバルにする〜でお送りしてきました。

そのため、北条さんの気持ちを二重カッコで多量に出すか、北条さん目線にするかで迷ったのですが、あまりにも『』が多くなったので、目線を北条さんにしました。ライバル視した表現がいくつか出てきて、AKIとしては中々面白いキャラが増えてくれたと思っているのですが、いかがでしょうか?

北条さんは悪役ヒールではありません。今ここに宣言をします。

皆さんからの御意見・御感想楽しみに待っています。


それでは、49話にお付き合いしていただきまして本当にありがとうございました。


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