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再転の姫君  作者: 須磨彰
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チャプター4

第二部の開始です。

やっと主人公が転生しました。

産声と共に




「おめでとうございます。女の子ですよ。」


俺は気付くと、真っ白な布に包まれて誰かに抱かれていた。ゆっくり眼をあけると、そこには少し疲れたような顔をしているものの、何か満足したようなとても良いことがあったような顔をした女性がこちらにむかって微笑んでいた。


「はじめまして、私があなたのお母さんですよ。」


俺は何となく当り前のようにして聞いていた。この人物以外に自分の母親がいないことをまるで前からしっていたような、生まれてきてよかったと思えるような、そんな安心感がそこには存在していた。


しばらくすると、俺は看護婦さんらしき人に連れられてベットに寝かされ、俺のことを見ようと大勢の人が現れた。


その人たちを見ても先ほどの女性が母親だとわかったような既視感のようなものを感じるものは数名しかいなかった。なんだろう、さっき母親の顔を見た時はあんなに当然のように受け入れることができたのに、他の人たちをみても、この人たちが俺の家族なんだといわれるまで実感がわかなかった。でも、皆の顔は笑顔であり、俺が生まれたことを喜んでくれていることがわかりなんだか温かいきもちにさせられた。





しばらく病院にいたが、母親も二人目の子どもということもあり、落ち着いた様子で結構すぐに退院した。車に揺られてついた家は、どこか古めかしく、でも「ここが我が家だよ」と言ってくれているような気がする場所だった。やっぱり、俺はどこか前世かなにかの記憶を少し残した状態で生まれてきたようだ。それは鮮明なものではなく、どちらかというと第六感的な雰囲気で心の奥底から糸を紡ぎだすようなものだった。


「秋ちゃんはよく寝るいい子ね。」


「ああ、武満の時は俺たちも苦労したが、二人目ともなると案外気楽なもんなんだな。」

両親は俺が狸寝入りしているとは気付かず俺のことを話しているようだ。


「でも、夜泣きなんかも武の時よりも少ないのよ。オムツの交換もそれほど多くないし、なんだか秋ちゃんの方から育児しやすいように動いてくれてるような、そんな気が時々するのよ。」


俺はドキっとした。お母さんを助けようとできる限りのことをしていたのだがそれが他の子とは違っていて変な子だと思われてしまったら大変だ。


「こんな赤ん坊のころから気を使うなんて、これじゃあ親の立場がないな。秋、お前は俺たちの子どもなんだ。思いっきり甘えていいんだぞ。」


「もう、お父さんったら、それこそこんな赤ん坊の秋ちゃんにわかるわけないじゃない。」


俺は二人の会話を聞いているうちに何だか胸の中に暖かいものが流れ込むような気持ちになり、今度は本当にゆっくりとまどろみの中に意識が沈んでいった。




俺はスクスクと成長していった。両親の会話からいつくらいに立てるようになって、いつ頃に話せるようになったらいいのかわかっている俺はやはり少し周りよりも早かったようだがおおむね普通の子どもと同じようにして育っていったようだ。少しくらい周りと違ってもそんなことくらいのことに頭を悩ませる家族ではないのか元気に育ったことそれ自体をまわりは喜んでくれているようだった。


「お母さん、秋をだっこしていい?」


お母さんに声を掛けたのは武兄ちゃんだ。武兄ちゃんは俺が生まれてから兄としての自覚ができたのかすごくお兄ちゃんらしくなったとお母さんが喜んでいた。しかし、


「エエェェェン!!エェン!!」


俺は、ここで嘘泣きをしておいた。なぜかというと、武兄ちゃんは俺が軽い時はよかったが最近重くなってきた俺をだっこすると落としたり引きずったりと結構痛いのだ。結構年の離れた兄妹なので大事にしてくれるのは嬉しいのだが、痛いのはあまり好きじゃない。


「秋が泣いちゃったから、また今度ね。もうずいぶん言葉が分かるみたいだからきっと前に抱っこして落としたのが嫌でないちゃったのよ。」


正解ですよ。お母さん。


「ええ?じゃあ絶対今度は落とさないから泣かないで。」


武兄ちゃんも困ってしまったようで、でもあきらめがつかないのかこちらを覗きながらも抱っこしたくてうずうずしているようだ。


「じゃあ、今からお母さんは晩御飯の準備をするから、その間秋ちゃんがけがをしないように一緒に遊んであげて、それなら武もいいでしょ?」


そういうと、武兄ちゃんはパッと輝いたように笑顔になって、俺の手をぎゅっと握っておもちゃのある方に引っ張っていった。少し手が痛かったけど、俺は武兄ちゃんのひかれるままそっちにヨチヨチあるいていった。


「フフ、本当にお兄ちゃんになっちゃって。」


好美もそんな二人の様子を笑顔で見ながら台所の方へと向かっていった。


「秋はこっちな、俺はこっちの怪獣つかうから。」


武兄ちゃんはおもちゃをもってくるとお気に入りのヒーローのおもちゃを俺の手に渡すと怪獣のおもちゃを手に持った。前に同じようにおもちゃで遊ぼうとしてヒーローの必殺技が俺の顔面に直撃して、泣かせたことがあり、それからというもの武兄ちゃんはいつも怪獣を使って俺に攻撃されてやられる役をする。


本当は自分も正義の味方をやりたいのに、俺に譲る優しい武兄ちゃんに俺は笑顔になる。武兄ちゃんは正義の味方ができて喜んでいるんだろうと思ったのか悪役になりきっていた。


「がおぉ!!この蟹津家は怪獣バングラ様がのっとったぁぁ。がぉおぉぉ!!」


微妙にハイクオリティだ。武兄ちゃんがこんなのだったから俺がちょっと変でも家族はみな気にしなかったんだろうな。なんて考えていると、武兄ちゃんが怪獣の口から炎がでてきたのを手で表現していたので、俺は応戦することにした。


「俺は、正義の味方、キャラバンだぁ。必殺ビ〜〜〜ム。」


あまりしゃべりすぎるとボロが出るので、テレビでやっていたように真似をしてよくわからないビームを出した振りをして怪獣のおもちゃに向けて、ヒーローのおもちゃについているライトがつくボタンを押す。そうすると普段は「やられたぁ!」とか言いながら武兄ちゃんが怪獣といっしょに倒れ込んで俺は蟹津家の平和を守ることができるのだが、今日はアレンジを加えてきた。


「ふっふっふ、そんな攻撃はキカン!!俺の体は超合金でできているのだ。」


武兄ちゃんはテレビの影響かはたまた小学校の友達から教えられたのか、今までの必殺技は効かないちょっと強い怪獣を演出して、俺を困らせてきた。


「そんなぁ。卑怯だよぉ。必殺ビームがきかないなんてぇ。」


俺は新しい新必殺技なんてわからないし、パンチやキックをするとモメアイになっていつも泣かされるのがわかっていたので抗議をあげた。


「そこは新必殺技、デストロイカッターを使わなきゃ。」


どうやらテレビの影響のようだ、今度からお母さんに許されているテレビを見れる2時間は、俺の好きなペット番組のチャンネルを死守しようと心に誓いながら答える。


「そんなのしらないもん。」


そうすると、武兄ちゃんはテレビでやっていた、デストロイカッターなるものを、身振り手振りを加えながら俺にレクチャしてきた。それによると新しいおもちゃでは肩のところが外れるようになっていてそれを投げて敵を倒す必殺技がデストロイカッターなのだそうだ。しかし、両親は新しいおもちゃを買い与えるのではなく、今あるおもちゃで工夫をして遊べる子どもに育てたいらしくデストロイカッターは今後使われることはないだろう。


「そうだ、あそこにあるブロックでデストロイカッターが出せるやつを作ろう。」


武兄ちゃんはそういうと、おもちゃ箱の中からブロックを出してきて、「肩の部分がこうだとか、体はこんなだった」なんていいながらブロックでニューヒーロー製作に取り掛かりだした。俺は晩御飯ができた後にブロックやおもちゃが散乱しているとお母さんに怒られるので、武兄ちゃんがぶちまけたおもちゃ箱の中身から武兄ちゃんが使わなさそうなものから箱に戻していくのだった。


「武ぇ〜秋ぃ〜ご飯にするわよ。」


「「はぁ〜い。」」


武兄ちゃんは作りかけのブロックたちを放り出してご飯の前に手を洗うべく流し台の方へと歩いて行った。俺はそれらを片づけようか迷ったが、どうせ怒られるのは武兄ちゃんだし、これくらいならお母さんもそれほど怒らないだろうと放置して、武兄ちゃんのあとをおいかけて、ヨチヨチと歩きだした。


子どもたちの手が届くようにと置かれた台に乗って手をあらい食卓の方へ向かうとお母さんが武兄ちゃんに片づけを先に済ませてくるように言っていた。


「お母さん、俺も??」


武兄ちゃんが片付けに行くのだから当然俺も行くんだと思ってそう言うと、


「秋はちゃんと自分が使った分は片づけてきたんでしょ?」


さすがはお母さんだ、武兄ちゃんが片付けをしないことも、俺がそれをすることもきちんと理解しているようだ。それじゃあと俺は食卓の椅子に手をかけると、


「うん、お片付けしてきたよ。」


といって椅子に座った。すると、食卓の席にはすでに父がおり、


「偉いな、でも自分のことを俺って言うのはだめだ。」


すでに、食卓についていた父がたしなめてくる。このやり取りは俺がしゃべれるようになってからずっと続いているやりとりだ。俺は前世の記憶の影響か男っぽいところが多々あり、一人称は俺だし、他にも男みたいなところがたくさんあるので毎回それをとがめられている。


子どもらしからない行動をとがめられることはないが、女の子らしくないことに関しては結構古い考え方をする父は良しとはしないようだ。


「まぁまぁ、せめて僕とかならまだかわいいんだけどねぇ。」


「うん、じゃあボクにする。」


俺というのはさすがに男勝りすぎるということで、だめなようだったが、ボクなら男の記憶に引っ張られる感覚も抵抗がないからすぐになれるだろう。


「はぁ、俺の口真似をして覚えたんだろうが、もう少し女の子らしく育ててあげないとな。」


お父さんは、まだ納得していないようだがそれでも俺というよりもは良いだろうと考えたのか今日のところは承知したようだ。


「お兄ちゃんっ子だし、少し男の子っぽいところがあるのは仕方ないわよ。幼稚園にはいったりして、女の子の友達ができればきっと気にならなくなるようになっていくわよ。」


お母さんがお父さんを慰めていると、武兄ちゃんがもどってきた。家族四人が食卓につくと、お父さんの掛声を合図に晩御飯が始まる。


お母さんの料理はおいしいし、まだ歯がはえそろってはいないので少しみんなとは違うメニューだけど、両親の会話や武兄ちゃんがさっきのデストロイカッターのおもちゃをおねだりする様子をききながら、楽しい晩御飯を僕はすごした。この暖かい家庭が、こんな生活がずっと続くとおもうと、なんだか幸せな気分だ。


晩御飯が済むと、四人で一緒にお風呂にはいり、パジャマに着替えると寝室にむかった。祖父母が残してくれた結構大きな家に住んでいるので子ども部屋をつくってそこでねかせることもできるようなのだが、ボクがまだ小さいこともあって四人で布団を引いてそこで一緒にねる。ボクの布団のとなりにはお母さんがいて、逆側には武兄ちゃんが、僕ら兄妹を挟むようにしてお父さんが布団にはいっている。寝る前のお父さんのお話やお母さんの子守歌を聞きながら僕らは夢の世界へとはいっていく。






まずは先にお礼を、たくさんの方々がこの作品をよんでくださっているらしく、アクセス数がすでに三千に届こうかとしております。


このような作品に付き合っていただき本当にありがとうございます。



前回までのお話で不幸ながらも周りの人たちに愛されて過ごした和也を描いてきたつもりですが、転生をして女の子になってもそれは変わらないというところを表現したつもりです。


優しく理解もあるお母さん。少し頑固だけど家族想いのお父さん。妹想いのお兄ちゃん。


そんな家族の温かい風景を目指してみました。


AKIも今は大学で一人暮らしをしていますが、秋ちゃんの小説を書いていると実家が懐かしくなったり、あの頃に戻りたくなったりします。



プロローグにも掲載しておきましたがブログを作ってみました。まだつくりたてで何もありませんが、よろしかったら遊びに来てください。

http://tomodoragonn.blog46.fc2.com/blog-entry-4.html



まだ駆け出しのため至らぬところはあるとは思いますが、これからもどうかよろしくお願いいたします。


それではご愛読本当にありがとうございました。

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