表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再転の姫君  作者: 須磨彰
42/79

チャプター41

遠足パニック!?水面下の攻防




「ふ〜ん。じゃあ、”あんた”は、他人が不幸を願ったら、不幸になっちゃうんだ。」



「ちょっと、和解したからって、そんなことまで鈴木さんに言ってもいいの?」



「大丈夫だよ。優花はそれを使ってボクを陥れるようなことはしないよ。」



「何?それも前世の記憶ってやつ?」



「そうかもね。優花は前世の恋人だったみたいだからね。」



「女の子に前世の恋人だなんて言われても嬉しくないって。でも、前世で仲が良かったからといって、現世でも同じとは限らないんだから、あんまり言うもんじゃないわよ。」



「う〜ん。ボクそこら辺は分かるから大丈夫だよ。」



「ホントに甘いね。”あんた”そんなんで良く生きてこれたね。」



「ちょっと、さっきからあんたって何よ。秋には名前があるんだからちゃんと呼びなさいよ。」



「悪い。これ癖なんだ。あんまり、気にしないでよ。えっと、うちのことも呼び捨てでいいからさ。優花ね、よろしく。」



「ちゃんとクラスメイトの名前くらい覚えなさいよ。秋がそういうから仕方ないけど、呼び捨てはできないから優花ちゃんね。私は和美よ。」



「和美だって、昨日分からなかったじゃないの。」



ボクのその言葉に、和美は無理やり咳ばらいをする。お互い五十歩百歩と言ったところであるが、そこら辺はサバサバした性格の優花がさらりとスルーしてくれる。



「ちゃんとか、つけられるの微妙だな。よろしくな。和美。」



「呼び捨てにして良いのは、彼氏と秋だけなんだから。ダメ!!」



「和美、そこらへんにしとこうよ。優花はもう仲間なんだからさ。」



「まぁ、よくわからないけど、和美ちゃんでいいの?」



「ええ、よろしくね。秋のことを大切に思ってくれる仲間は大事だし、歓迎はするわ。納得はまだできてないけどね。」



「ツンケンしないの。こう見えても優花は、美術部に入ってて気も合うんだから。」



「ちょま、それは言わないでよ。こんな金髪美女が、おしとやかに絵なんて描いてるって恥ずかしいじゃん。」



「そうかな?優花には合ってると思うんだけどな。」



「先に自分で金髪美女とか言ってることに突っ込みましょうよ・・・・」



そんな話をしていると、教室に着いた。昨日まで敵対していたはずのボクと優花が仲良く話している様子をみて、クラスメイトは驚いている。心配した和美と昨日の電話で謎ばかりだったこともあって体育館まで押しかけて来た優花と朝練の間中話していたので、周りから見たら、突然仲良くなったように見えるだろう。




「おはよう。明実。」



「話しかけないでよ。優花は私の味方だと思ってたのに。」



ボクの前の席で様子をうかがっていた明実に優花が挨拶をすると、明実はそっぽを向いてこれ以上かかわるなというオーラを出した。



「前世の記憶ってのでどうにかなんないの?」



「馬鹿ね。さっき自分で前世の記憶があっても仲良くできない子もいるって言ったんでしょ。」



「ええ!?明実も!?秋の前世はプレイボーイだったの?」



突然大きな声をあげてしまった優花に視線が集まる。前世の話などは、あまりしない方が良いと注意すると、了承して優花は自分の席へと帰って行った。和美はまだ優花が信頼できるのか疑っているようだったが、深く追求もしなかった。




「おはよう。」



「おはよう坂本君。」



「蟹津さん酷いよ。片づけ終わらしたらすぐに教室に行っちゃうんだもん。俺のこと待ってくれてもよかったんじゃない?」



「ごめんごめん。優花と和美が来てたから先に抜けさせてもらったの。」



「別に仕事はきちんとしてくれたんだから良いんだけど、俺も同じクラスなんだし、待ってくれてもよかったじゃん。」



「竜が嫉妬するから、二人っきりじゃない時だけね。」



「お熱いことで、まぁ、こんだけ美人なら危機感かんじるかもしれないね。」



「坂本君だってモテるんじゃないの?」



「ああ、俺彼女いるから。ってか昨日も、朝も焦ったっつの。」



「ああ、なるほどね。坂本君と仲良くしてたから、優花ちゃんはあんなこと言ってきたのね。」



「え?どういうこと?なんで坂本君と仲良くすると、優花が?」



昨日のケンカの原因が坂本君と仲良くしていたからといわれてもお弁当を一緒に食べていただけで、何も悪いことはしていなかった気がするのだが?



「相変わらずこういうことには鈍感なのね。坂本君の彼女って。」



そう言って、和美が指を指した。その先には優花がおり、こっちを向くと、坂本君と目があい、照れたように顔を赤らめていた。



「なるほど、納得だよ。和美ってあれだけで良く分かったね。ボクにはさっぱりだったよ。」



「まぁ、伊達に悲恋を経験してないってことよ。早く私にも素敵な恋人ができないかしら。」



「それをこっちを見ながら言わないでくれないかな?こんなにたくさんクラスメイトがいるんだからさ。」



「もう、秋以上に素敵な人はいないもん。本当に食べちゃいたいわ。」



「ちょ、やめて!!」



教室の後ろで和美とじゃれあっていると、密かにこちらをうかがっている視線を感じた。昨日まで直接的に悪口を言っていた優花がいたので気付かなかったが、ボクに対する思念はぬぐいきれていないのだろう。



むしろ、昨日よりもずっといやらしい、ねっとりと粘りつくような嫌な気分がする。やっぱり優花のようなさっぱりした性格の子にいじめられてる方が、気分は悪くない。




キーンコーン




朝のHRで、来週、中間テスト明けに遠足があることを発表され、班を決める段階になると、優花が坂本君をつれて班員になってくれた。女の子3男の子1のアンバランスな班だが、一応男女混合という条件にも当てはまっているので先生に認めてもらえた。



中学生の時の遠足はとても楽しかったし、今度もそうなって欲しかったが、ボクの第六感はそうならないことを告げていた。和美たちにはきちんとそのことを伝え、上手く危険が及ばない距離を取ってもらうことにした。事情をしらない坂本君は疑問を浮かべていたが、優花の説得もあり、とにかく認めてくれた。




「美味しい♪あんたお店ひらけるんじゃない?」



「昨日の餃子も美味しかったけど、今日のパスタも最高だね。これはオムレツ?」



「ありがと。そう言ってもらえると作ったかいがあるよ。」



お昼の時間になり、昨日は三人で食べていたが、今日は優花も一緒に四人でお弁当を囲んでいた。優花のためにと多めに作ってきたのだが、坂本君という男の子がいることを失念していて、ペロリと平らげられてしまった。



「優花もこれくらいしてくれたらいいのにな。」



「無理。この美味しさはうちには不可能。」



「そんなことないよ。来週うちに来た時に作り方教えてあげるね。」



「あ、それ・・・」



「優花?どういうことだ?確か、親戚のおじさんが死んでお葬式に行くとか言ってたよな?」



「あちゃ。優花そんな嘘ついてたんだ。ごめんね。」



「じゃあさ、坂本君も一緒に秋の家に行けばいいんじゃない?」



「え?いいの?」



「ボクは別にいいよ。どうせなら竜とかも呼んじゃう?」



来週は予定がいっぱいになってしまった。月曜日から木曜日まで中間テストを受け、金曜日に遠足にいって、土曜日に優花と坂本君がボクの家にきて、日曜しか休みがない。



「蟹津さんの部屋か。どんな部屋なんだろ。」



「ちょっと、変な想像してんじゃないわよ。」



坂本君と優花が夫婦喧嘩を始めたが、どちらも本気で怒っているというよりも、じゃれあっているように見える。



「二人って仲がいいんだね。」



「まぁね。どうしようもないこいつをうちが助けてあげてるんだから。」



「そういうのは、蟹津さんみたいに美味しいお弁当を作れるようになってから言えよ。」



「良いわよ。じゃあ敦が驚くような料理上手になってやろうじゃないの。」



売り言葉に買い言葉?結局喧嘩してたのか怪しい終わり方だが、仲が悪いより良いので放置しておこう。夫婦喧嘩は猫も食わぬ。ってね。



「秋も人のこと言えないわよ。竜くんとの掛け合いこんなもんよ。」



「はぅぁ・・・」



和美に竜との仲を指摘されて、真赤になっているボクの様子を、優花と坂本君に目撃されてしまった。



「敦、可愛くっても襲っちゃダメよ。」



「あほ、彼氏持ちやしこっちも優花がいるんだからそんなことはしないっつの。でも、竜を殴りたい気分にはなったな。」



「うちも殴りに行こうかな?」



「優花ちゃん。気が合うわね。やっぱりあなたとは仲良くなれそうだわ。」



良く分からないが、和美と優花は仲良くなれたらしい。真赤になった顔を隠しながらも、二人が仲良くなれたことに喜ぶ。
















遠足の行先は、旧街道を歩き、小さな山を数時間かけて歩くという内容だった。目的の街道までバスで移動したのだが、ここでも先生から特別に後ろの座席をボクら四人のために確保してもらい、その様子にクラスからの懐疑の視線が絡む。



「着いたね。秋、早く歩いてお土産屋のたくさんあるところまで行こうよ。」



「ボクは構わないけど、この中で一番体力がないの和美だと思うけど?」



「優花と俺はもともとアウトドア派だからな。和美ちゃんにはちょっときつい道のりだとおもう。」



坂本君の言う通り、今日歩く街道はなだらかな部分が多いとは言っても、舗装されている部分とそうでない部分があり、少し山に入って行くと危険な場所まである。しかし、街道を渡り切ると、旧来の町並みが残ったお土産屋や、水場などがある場所に出ることになっている。



「と、とにかく頑張って歩きましょ。」



「無理しないでね。ボクも和美に合わせてゆっくり歩くから大丈夫だよ。」



基本的に班別での行動となっているが、竜と申し合わせて、一緒に行くことになっている。どうしても旅行先などでは、竜がいないと危険がある可能性が否定できないからである。特にクラスメイトと完全にいがみ合った今の状態では何が起こるか分からない。落石など本当に命の危険があるかもしれない。



「ありゃ、圏外だね。あんたの彼氏、どこで合流することになってるの?」



「上田も一緒に行動するんだろ?出発地点から移動しない方がいいかな。」



「でも、先に行って待ってるかもしれないよ。」



「とにかく先生たちをごまかす程度に牛歩で進んでみる?」



先生たちは混雑を避けるために、バスから降りたクラスから順番に点呼を取ると出発させている。竜のクラスはすでにバスがついていたらしく、先に進んでいるかも知れないと考えてボクらも移動を開始する。




もし、竜が同じ考えでいたら、途中で待つか、後から追いかけてくれるはずだ。そう考えてボクらは進みだす。



「う〜ん。たぶん、竜は前にいるかな?」



「分かるの?」



「あんた、犬か何か?」



「ちょっと、蟹津さん気にしないでね。優花は思ったこと言っちゃうタイプだから。」



「それフォローになってないよ。竜もそういう人間だから、気にしないよ。むしろ、あんな感じで陰で悪口言ってる方がボクは苦手だからさ。聞こえてないと思ってるんだろうな。」



「あんなって、どこの集団のこといってるの?」



「あれだよ。」



優花に視線と軽い動作で場所を指摘する。100Mほど先の開いた場所でおしゃべりをしながら歩いている集団があった。



「えっと、かなり距離あると思うんだけど、まさかなんて言ってるか分かる?」



「声マネ付きで解説する?」



「いや、良いわ。うちも前まであの集団にいたから、なんて言ってるのかわかるしね。」



「そうだな。大抵が”先生に優遇されてウザいとか、ちょっとかわいいからってお高くとまっちゃってとか”そんな内容だろ?」



「正解。最近はうちや敦の悪口も入ってるみたいだけどね。」



「ごめんね。ボクのせいで誤解させちゃって。」



「いいよ。それより、さっさと明実と仲直りしてほしいわ。明実とうちって同じ中学出身だから、このまま誤解されたままじゃ困るからね。」



「了解。まぁ、明実はすぐに大丈夫になるとおもうよ。問題はあのグループにいる。北条さんと森君かな。なんかあの二人からは関わっちゃいけないオーラが出てるんだよね。」



「ふ〜ん。というか、なんで森君なんてへなちょこが、北条さんみたいな可愛い子グループにいるんだろ?」



「そうね。北条さんってクラスでも秋の次くらいに美人よね。そんな北条さんが森君と話しているのが謎だわ。」



優花と和美の言う通り、北条さんは、鋭い目をした美人で、ちょっと怖そうなイメージがある。逆に森君はなよっとしていて、どちらかというと、クラスでは目立たないタイプの男の子だ。二人とも中学も違い。共通点と呼べるものがない。



「北条さんの下僕だったりして。」



「まさか。いくら女王様オーラがあるからって下僕なんてありえないよ。」



冗談を言っているが、それに近い雰囲気が二人には流れていた。北条さんは持ってきた小さなカバンを森君に持たせ、友達と談笑しながら歩いている。先ほどから森君は近くを歩いてはいるものの、会話などには参加せずひたすら話を聞いているようだ。



そうこうしていると、前に竜がいることを、何となくわかってしまっていたボク達が、牛歩作戦をやめて普通に歩いていたため、北条さん達のグループに追いついてしまった。そして、道もせまくなってきており、肩が触れ合わんばかりに近付いたため悲劇は起こった。




ガサガサ



「ぶ〜!!」




「危ない!!」



ボクは北条さんを突き飛ばし、そこを通り過ぎた物体に体当たりを食らってしまった。




『ありゃりゃ。猪にぶつかられたくらいで、気絶するなんて、ボクも修行が足りないな。』



『気絶じゃなくて、臨死体験でしょ。ってか、跳ね飛ばされて木に頭からぶつかったのに生き帰るなんてもう既に人間じゃないわよ。』



『霞さん久し振り。洋司さんとラブラブしてる?』



『最近構ってくれなくって、それに私もこの二年間冥界の図書館にこもりっきりだったしね。こらっ!?そうじゃないでしょ。もうちょっと危機感もってよね。』



『いやぁ、生き帰ることが分かってると、こんなにも気楽なんだね。』



『ああ、それで思い出したわ。ほんと、秋ちゃんは何者なの?前世の記憶が残ってる人間なんて、どの文献探しても分からなかったのよ。』



『う〜ん。洋司さんは教えてくれなかったの?』



『そうなのよね。何を聞いても、【エンマの奴に聞け】こればっかりよ。秋ちゃん、お姉さんに教えてくれないかな?』



『お姉さんねぇ。未緒さんですら、ボクが生まれる前からあの姿なんでしょ?エンマの娘で強い力を持った霞さんがそんな若くは思えないんだけど。』



『うるさいわね。これでも鬼人じゃ若い方なのよ。大戦中に生まれたから、60くらいかしら?』



『へぇ、何百年も生きてるんだと思ってた。なんでまた、大戦中なんかに生まれたの?』



『それが、再転の宝玉をあまりにも乱用してしまったために、鬼人が足りなくなったとかで、お父様とお母様は無理やり力がある者同士で結婚して私が生まれたらしいわよ。そのあと、洋司様の活躍で平和になったけど、お父様もお母様も必要無くなった私には構ってくれなかったから、さみしい思いをしたわ。』



『ひょっとして、洋司さんに育ててもらった?』



『ええ、それはもう素敵だったのよ。私が夜泣きしたら、朝まで付き添って見ていてくださったそうよ。』



『霞さんって洋司さんのこと好きだと思ってたけど、それって恋人じゃなくって、親に対するものだったんだね。それで、ボクが生まれて構ってもらえなくなったから嫌がってたんだ。』



『ちょ、違うわよ。昔はそうかもしれないけど、今は・・・・』



『今は?』



『あれ?自分の気持ちが分からなくなってきたわ。そう言えば、秋ちゃんのこと調べててここのところ会っていなかったんだけど、あんまりさみしくなかったわね。』



『自分にやることが見つかったら、親からは独立するからね。本当に親代わりだったのかもね。でも、大切な存在であることには変わりはないからいいじゃないの。』



『たかが、15年しか生きていないガキが偉そうなこと言わないの。』



『一応一回成人してるからね。社会人にはなったことはないけど、何度も臨死体験するうちに、前世の記憶もはっきりしてきたよ。』



『そうだったわ。話をそっちに戻しましょ。なんで秋ちゃんには前世の記憶があるの?』



『保存の珠玉で守ったからだよ。再転の儀式の時に洋司さん一人だけが珠玉に入って、保存の珠玉に余裕を持たしていたんだって、それで、空いた分でボクの記憶を残したらしいよ。』



『へぇ、なるほどね。そこは納得したわ。あとは、人体構造を含む人間ではありえない能力について調べたらわかるかもしれないわね。』



『うん。植物のエンマ帳があったらそれについて調べてみて。ボクも詳しくは分からないけど、転生前霞さんが教えてくれたことによればそれがキーワードみたい。でも、植物って筋肉ないよね?なんで動けるんだろう。』



『植物のエンマ帳?まさか・・・分かったわ調べてみるわね。ってヤバ。そろそろ回復するわよ。身体能力と一緒に再生能力も早くなってるんだったわ。』



『えええ?病院に行かないで復活するの?』



『説明は洋司様にでも聞いてちょうだい。とにかく、記憶の処理するわよ。二度目とはいえ、まだ慣れないんだからそろそろ始めないと間に合わないわ。』



霞さんの指示のもと、ボクはゆっくりと意識を取り戻していった。



「秋!!秋!!」



「おはよう。」



「おはようじゃないわよ。」



「あれ?猪は?」



「そんなのとっくの昔に逃げ出しちゃったわよ。」



ボクが起きると、和美が泣きながらボクのことを必死に呼んでいた。坂本君は先生を呼びにいったのか今はいない。



「秋ちゃん大丈夫?」



「明実!?」



そこには優花と一緒に心配そうにしている明実の姿があった。明実と一緒に歩いていたはずの北条さんはここにはおらず、明実と森君だけがそこにはいた。



「大丈夫?」



「うん。このとおり、復活したよ。」



そう言って笑顔を作ってみたものの、起きあがることはできなさそうである。



「無理しないで、前に私を助けてくれた時もそうだったけど、普通死んでるわよ。」



「そうだね。ボクも自力で復活できるとは予想外だったよ。これだけの怪我受けたら前だったら病院直行だったんだけどな。」



そんなことを話しているうちに、先生と竜が駆けつけてくれた。



「秋、大丈夫か?」



「動けないかも、受け身取り損ねちゃったかな。」



「そう言う次元じゃなかったわよ。」



「でも、受身とってたからこの程度ですんだのかも知れないわね。」



和美と優花が何が起こったかを竜と先生に説明する。その間にボクの怪我の具合を明実が見て、先生が持ってきた応急処置用の箱から出して丁寧に包帯などを巻いてくれた。



「あ、固定はテーピング使って、そう、そことあとそっちも止めて、刺し木とかは折れてるか分からないから、今はいいや。また帰った後で病院いくから問題ないよ。」



あんまりにも酷い事故だったらしく人だかりができていたのだが、慣れないことに四苦八苦している明実に指示をだしている様子をみて周りも大丈夫だったのかと散っていく。



「それで、その北条さんってやつはどないしたんや!?」



「あ、ボクも気になってたんだ。明実、北条さんは怪我とか無かった?」



「ええ、かすり傷程度だったわ。そこにいる森君と私以外は、秋ちゃんの様子をみて、逃げ出しちゃったの。」



「そっか、大した怪我じゃなかったんだったらよかったよ。」



「どあほう。ええことあるか。」



「竜。そこから先は言っちゃダメだよ。約束したでしょ?」



「う・・・」



竜も気付いたみたいだけど、どう考えてもあの状況で敵意をもって接していたのは北条さんであり、おそらくあのグループと接していなければ、ボクは事故にあわずに済んでいたことだろう。



「先生。お騒がせして申し訳ありません。野生のイノシシなんて学校側の落ち度もありませんし、ボクもこうして無事だったので、家族もおおごとにすることはないと思います。友達もいますし、大丈夫ですから他の子の引率に行ってください。」



駆け付けた保険の先生もボクの言葉を聞いて、どうしたものかと悩んでいたが、ゆっくりながら自分の力で立ちあがったボクを見て納得したのか、先に歩いて行った。



「秋、無理すんな。人払いしたかったんは分かるけど、あれじゃあ先生も困るやろ。」



「あはは、バレた?ちょっとまだ自力で動くのは無理そうだから、どこかで座って話しようか。えっと、森君申し訳ないんだけど、竜たちと話があるから先に行ってくれるかな?」



「ぼ、僕の名前知ってたんだ。」



「ええ、クラスメイトだもの。森元気君で海難中学出身でしょ?」



「は、はい。じゃあ、先に行きます。」



森君はどもりながらだが、先に行ってくれた。これで、残ったのは、坂本君・和美・優花・明実・竜・ボクの六人になった。



「う〜ん。ちょっと座らせて、お土産買う時間無くなっちゃうけど、話聞いてくれるかな?」



「大丈夫だよ。元々、お土産屋を期待してたのは和美ちゃんだけだからね。」



「坂本君酷い。一緒におもち食べよってバスの中で言ってたのに。」



話が脱線しそうになったが、全員が聞く体制になってボクは話し出す。



「竜と和美は中学からの心友だから、知ってるんだけど、ボクってすっごい不幸体質なんだよね。昔のあだ名、不幸少女って呼ばれていたくらいね。」



「高校に入って三か月で二回も事故が起こっていたら、誰も疑わないわよ。」



「私なんて両方とも真近でみてるんだもん。」



「そうだね。それでね、不幸が起きるには理由があるんだ。竜がさっき怒ったのはそのためなんだ。明実にはちょっと辛いかもしれないけど、事実だし、これから無いと思うから気にやまないでね。」



そこで、一旦区切り、一呼吸置いて、明実に笑顔を向けながらもう一度話しだす。



「ボクに不幸が起きる時は、周りからそれを望まれた時なんだ。つまり、近くにボクのことを嫌いな人がいたら不幸が起きるんだ。逆に幸せになって欲しいって思う人がいたら不幸は起きないんだよ。」



「それって・・・」



明実の顔から血の気が抜けて行くのが分かる。



「明実、この目を見て、ボクね。明実のことを危険に合わせたくなくって、態とあんな態度取っちゃってごめんね。竜、ボクのカバンからケータイ取ってくれるかな?」



明実は酷く落ち込みながらもボクの目を見てくれた。申し訳ない気持ちで一杯といった様子だ。

さらに、竜がストラップの着いたケータイを取り出しそれを見た瞬間泣き出してしまった。



「私、秋ちゃんに酷いことしちゃった。」



しばらく泣いていた明実が優花に慰められて落ち着いてきた時、明実はぽつりとそんなことを言った。



「すっごく傷ついたから償いとして、これからは絶対にボクの友達でいてね。」



「秋、本気で許しちゃう気?」



「いやぁ、というか、あんな態度とったボクが非難することできないでしょ。冗談めかして言ったけど、このことを話すのってすっごく勇気がいるんだ。絶対に信頼できる人以外に、もし、このことがバレて、不幸を願われたら、ボクの周りは危険で一杯になっちゃうからね。」



「あほ。俺が一緒におったら危険じゃないんわ、中学校の時に証明されたやろ。」



「だって、竜と四六時中一緒にいるわけにもいかないじゃん?」



「四六時中一緒におっても俺はかまわんぞ?」



「授業どうするのよ。そう言ってくれるのは嬉しいけど、高校に入って、竜たち心友に頼り切ってたのが分かったから、遠慮しておくわ。」



「変なとこ頑固やな。」



「お父さんに似たのかもね。」



「えっと、ちょっといい?うちらそんな大事なこと聞いちゃってよかったの?」



竜と二人の世界を作っていたボクに申し訳なさそうに優花が声をかけてきた。



「うん。ボク臨死体験する度に能力あがるらしいんだよね。だから、信頼できる人できない人は区別つくよ。」



「それだけやないやろ。ってか、異常に回復はやくね?もう腕動いとるやん。」



「あ、本当だ。さっきまで指一本動かすのも痛かったのに。」



「敦、うち夢でもみてる?」



「俺も信じられないけど、現実だとおもう。」



「秋ちゃんっていったい何者?」



「不幸少女で、最強美少女で、芸術の女神で、最近ではツンデレクイーンなんてあだ名も着いたか?」



「それさ、やめてくれないかな?増える一方だよ。それに最強美少女ってのは無しになったじゃん。」



結局このあと、ボクの体調が落ち着くまで、持ってきたお菓子などを食べながらボクと竜と時々和美を交えながら、昔話をすることになった。初めての臨死体験の話を終えたあたりで、ボクの体調も良くなって来たので、集合時間に遅れるといけないので出発することになった。



「そろそろ、行かないと集合時間に間に合わないよ。これだけ前と距離があれば、歩きながらでも話しできるしね。もし、誰かが近づいてきたらボクが分かるから。」



「せやな。ほれ。」



「え?竜?何してるの?」



「ん?お姫様抱っこのが良かったか?秋くらい軽いって言うてもずっとそれはきついで。」



「ちょま。その前になんでおんぶか抱っこで運ぶことが決まってるのよ?」



そう言って、自力で歩こうとするが、先ほど打ちつけた時にあばらなどが折れているらしく、立ちあがるだけでもきついものがあった。



「むちゃすんなや。揺らさんようにゆっくり歩いたるから乗れ。」



御姫様抱っこは流石に恥ずかしかったので、おんぶしてもらうことにした。周りの四人からの視線が痛い。恥ずかしすぎる。



「竜くん。つかれたら交代してあげるわよ。」



「リュック背負うのとかわらへんから、理由はわからへんけど、秋ってすげえ軽いからさ。」



「重いとか言ったら絞めるからね。」



「軽いっていうたやん。こんだけ軽いんに、出るとこはでとるから不思議やわ。」



「エロいこと言ってないでキリキリ歩きなさい。」



「こら、余計に胸が押しつけられとる。」



「ね。秋ってこんな子なのよ。だから、悪気はなかったのよ。だから、これからは仲良くしてあげてね。」



「和美、こんな子って何よ。」



竜を絞める力を緩めて和美に抗議する。



「さっき、竜くんが色々あだ名を言ってたけど、一番今の状況にしっくりくるのはツンデレクイーンね。」



「ボクはツンデレじゃない!!」



否定しながらも、真っ赤になった顔に、四人がくすくす笑う。



「ツンデレじゃ仕方ないわね。ストラップのこと許してあげる。」



「あんまりツンツンしてると、竜くん誰かに取られちゃうわよ。」



「無いって、バスケ部でも上田の蟹津さんラブは有名だからな。」



気のせいかな?ボクが仲良くなる人って、みんなボクのことをからかって楽しんでる気がする。そんなにボクが真赤になるのがおかしいのか!!



「そんなに、可愛い表情で睨んでも駄目よ。秋の可愛さは異常なんだから。」



「可愛さって、和美の馬鹿!!」



「ほんまや、司がいつも俺に、秋が馬鹿って言うのが大好きに聞こえるって意味が今わかったわ。今の馬鹿は大好きに聞こえるやん。」



「余計なことを言うな。」



「ホント?秋は私のこと大好きなの?もっと、言って♪」



「秋ちゃんも変な子だけど、和美ちゃんや竜くんも個性的よね・・・」



「うちもそう思う。でも、不思議と嫌な気はしないかも。」



「確かに。」



「俺も同じだ。高校生活楽しくなりそうだな。」



「ねぇ、結局あんたの昔話途中で終わってるんだから、最後まで話しなさいよ。」



「今私と秋の愛情を深めてるんだからちょっと待って。」



「十分深まったからもういいよ。」



そのあと、竜の背中で身動きが取れないことを良いことに和美に撫でまわされて、大変だったが、優花が話をせっついたこともあって、六人で話しながら、目的地周辺へと着いた。




「ふ〜ん。そんなすごい子だったんだね。どうりで猪に撥ねられても平気なわけだわ。」



「全然平気じゃないって、あ、そろそろ人がいる気配がするから、また明日ゆっくり話しましょ。竜もおんぶありがとね。もう平気だから。」



「ちょま、平気なわけ・・・ありえへん。」



「ほんと、自分でも人間かどうか怪しく感じてきたよ。」



自力で立って歩き出したボクに唖然とする竜に、ボクも肩をすくめて応える。気を失ったはずなのに、自力で立ち上がれるように回復したこともそうだが、なんだか最近の自分の体の構造に驚いてばかりな気がする。



「秋は女神だもの。久し振りに女神って呼んでもいい?」



「やめてよ。あんな恥ずかしい呼び方は中学までにしてよね。」



「じゃあ、メグってよんじゃおうかなぁ。」



「もう、鈴じゃないんだから。あ、鈴って中学校の時の心友ね。」



「ええ、さっき話に出てきた美術部の子でしょ?それよりも”親友”と友達をさっきから使い分けてる気がするんだけど、気のせいかしら?」



「明実はするどいね。ボクらのは心の友って書いて心友なんだよ。さっきのほら、あれがあるから、心友と認めた子には特別な証をプレゼントしてるんだ。優花が見たら絶対に喜んでくれるものだと思うよ。それについても明日はなそ。」



「明日当然のように行っても平気みたいに言ってるけど、大丈夫なの?あんたさっき死にかけてるのよ?」



「う〜ん。たぶん平気。まだちょっと体痛むところあるけど、明日の朝には完治してるとおもうよ。ひょっとしたらお風呂入って寝る頃には元気かもね。」



「まぁ、あんだけ酷かったけが人が自力で歩いてる時点で疑えなくなっちゃったけどさ。やっぱうちあんたに興味あるわ。」



「そうよね。秋の秘密を明日はじっくり堪能しましょ。」



「和美が言うとエロいぞ。」



そんな風に談笑しながら集合地点まで歩いて行った。人が増え出してからは、明日のボクの家での予定に話題を変換して、心配する竜を自分のクラスに送り出すと、五人で笑いながらバスに乗り込んだ。



怪我を見ていた先生はもっと遅くなるだろうと思っていたらしい。集合時間にギリギリながらも間に合ったボクに驚いていた。先生に救急箱をもらうと、明実と優花が血に濡れた包帯などを取り換えてくれた。自分でできる場所は自分でやると言ったのだが、けが人は安静にしていなさいと言われてしまった。



実際先ほどよりも明実は手際よくなっており、優花も空手をやっていたため慣れているらしくすぐに終わってしまった。



「北条さんの包帯みた?酷い巻き方だったわね。」



「優花、あんまり大きい声出さないの。さっき、秋ちゃんに約束したばっかりでしょ。」



「でもさ、悔しくない?危ないところを助けてもらったっていうのに、お礼もなければ、むしろ、突き飛ばされたことに怒って周りに言いふらしてるらしいわよ。」



「北条さんはプライドが高いみたいだからね。まぁ、それも個性だからいいんじゃない?ボクの悪い噂さえ流さなければ嫌いじゃないんだけどね。」



「あんた、ホントにお人よしね。それが一番あんたにとって危ないことじゃないの。」



「だから、ボク一人だったら大抵の危険は怖くないって言ったでしょ。だから、今日だって、竜と合流するまでは、少し距離を置いて歩いてもらったんだから。」



「あのねぇ。一人で歩いてて、嫌われてる人に近付いたとたんその人をかばって死にかけてたら、全然安全じゃないのよ。」



「動物が来るなんて思わなかったんだもん。落下物がないようにに木が無いところで追い抜く予定だったんだよ。」



「いいわけしないの。」



「ごめんなさい。ってなんでボク優花に叱られてるんだろう。」



「あんたが、危なっかしいからでしょ。」



「優花って喧嘩した時もそうだったけど、保護欲っていうか母性本能っていうか強いよね。」



「もう、しらん。心配してあげてるのに。」



「ごめんごめん。ありがと、優花。」



「いいわよ。それよりも明日は楽しみましょうね。」



優花の方から明日の話題に話をふってくれたので、そのまま、ボクも流れにのって、家族のことや、中学校の思い出を交えながら明日、ボクの家にみんなを呼ぶ話をした。



「あれ?明実って明日来れるの?」



「今さら?」



「いやぁ、なんか当然のように話してたから気付かなかったけど予定空いてるなら来てよ。」



「当然行かせてもらうわ。」




明日が楽しみだ。















お久しぶりです。

霞さんが本編に登場しましたよ。

え?それ以前の三回の臨死体験についても洋司さんを出せって?

ダ・メ♪

洋司さんの人気があるのは理解してるのですが、その間話をそらしたりしているだけで、特に書きたい内容がなかったのです。むしろ、遠足で遠出をして霞と話をした方が真相に迫る話だったので挿入しました。

この話があった後になら洋司さんだしても面白いかもしれませんね。高校での秋の地位が定着してしまうと、また以前の中学生編ように臨死体験をする機会が減ってしまうので、一年生は何度も危険な目にあってしまいます。

今回のテーマ〜秋の正体〜については、前後の会話なども含めてAKIにしては中々うまくかけたと思います。

それでは、皆さん41話を読んでいただきまして本当にありがとうござました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ