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再転の姫君  作者: 須磨彰
41/79

チャプター40

クラスメイトとツンデレ





ガラガラ



秋が教室に入ると、朝練に参加していたこともあり、既に授業開始前ということで、教室にはほとんどの子たちがいたが、誰も秋に挨拶する子はいない。



「おはよう。秋、今日も朝錬だったの?」



いや、和美がいた。和美は教室の後ろにある秋の机の横である。教室の席替えの時に先生から特別にこの場所にしてもらったのも、クラスのメンバーから反感を買う一つの原因だ。そして、何よりも、秋の席の前に座っている女の子、川瀬 明実との出来事が原因だろう。



蟹津と川瀬という出席が近かったこともあり、秋はすぐに明実と仲良くなった。



しかし、明実が事故に合い、助けてくれたお礼にストラップを渡した時、秋がそれを受け取らず、ゴミ箱に捨ててからは、クラス内で秋に対する態度は変化し、明実の席も異様なほどに前に寄っており、教室で秋と和美のところだけ切り離されたような状態になっている。



「今日も学校に来たんだ。流石に優等生は違うわ。」



「ちょっと、勉強ができて可愛いからってお高く止まっちゃって。」



教室内からは、秋を非難するような声が聞こえる。というか、わざと秋に聞かせるために大きな声で言っているのだ。



「秋、気にしなくていいよ。秋のことを知らないからあんな風に言うだけだからさ。」



「大丈夫だよ。陰で言われるよりも、あんな風に聞こえるように言ってくるだけ、ボク的にはつらくないからさ。」



「それはそうかもしれないけど・・・」



「それより、HR始まるよ。和美も準備しよ。」



和美にそう言って、ボクも机に一時間目の準備を出す。陰口を言っていた子は、秋の澄ました様子に余計に腹が立ったのか、教室全体に聞こえる声でこれ見よがしに秋の悪口を言っている。朝のHRが始まるまで、秋は黙って耐えていた。



昔の秋なら、悪口を言ってくるような人間には言い返していたし、クラスにいじめられている子がいれば一番にかばっていたのだが、自分に対してだとういこともあり、耐えてしまっていた。



「もう、我慢できない。」



「和美。いいの。ボクに巻き込まれないように態とこうしてるんだから。」



秋よりも先に我慢の限界の来た和美だったが、秋にそう言われては、従うしかなかった。和美自身が他の心友たちと違って危険に対応することができずに、秋のことを守ってあげることができないというコンプレックスを持っているのも原因かもしれない。



麻美などは、和美と同じ条件なのだが、幼馴染ということもあり、やはり和美よりもずっと秋のことを守っているように見えてしまうのだ。




キーンコーン




お昼休みになった。午前中の授業は特に何も起こらずに、過ぎたが、ここで思わぬ出来事が起こった。




「蟹津さんと、えっと・・・」



「坂本君?どうしたの?」



「一緒にお弁当食べてもいいかな?俺坂本 サカモト・アツシバスケ部で蟹津さんとは良く話すんだ。」



和美が警戒していたが、バスケ部と聞いて、納得したようだ。



「坂本君までクラスでのけ者にされちゃうかもしれないよ?」



「大丈夫だよ。それに、このまま放っておいたら、先輩たちになんて叱られるかわからないしね。助けると思って、一緒にご飯食べてくれないかな?」



そう言って、坂本君は頭を下げてきた。



「和美。この子はバスケ部の坂本君。一緒にお弁当食べてもいいかな?」



「秋が良いなら私は構わないわ。私は長田和美よ。よろしく坂本君。」



「よろしく。」



そう言って、坂本は秋と和美がくっつけていた机に近くからイスを持ってきてお弁当を取り出した。



「それ美味しそうだね。でも、お弁当に餃子って匂い大丈夫なの?」



「大丈夫よ。ニンニクみたいな匂いの強いものは入れてないから。」



「ひょっとして蟹津さんの手作り?」



「そうだよ。竜のお弁当も作ってるんだ。」



「そうなんだ。すごいな。俺の親なんて冷凍ばっかりだからさ。」



「良かったら食べる?」



「良いの?じゃあ、一つだけ。」



「秋、私には?」



「しょうがないな。和美も一つだけね。」



「わ〜い。」



こうして、三人でお弁当を食べていると、司や竜と一緒に食べていたころを思い出す秋だった。秋の母である好美も料理が得意で、いつも竜や司にねだられておかずを取られていた。



今は秋が作ったお弁当だが、そちらも好評らしく、二人に半分近く食べられてしまったが、秋はこうして友人と笑って食べられることが嬉しかった。



「尻軽女!!バスケ部の男全員とって本当だったのね。」



そんな様子を見た朝、悪口を言っていたクラスメイトが、秋に悪口を言う。



「ふざけないで!!秋にはちゃんとした彼氏がいるんだから、そんなことするわけないでしょ!!」



これに反応したのは、朝から爆発寸前だった和美だった。立ち上がると、悪口を言った女の子に近付いて行く。



「和美。やめて。」



そんな和美を後ろから抱きとめる秋、しかし、座っていた位置が悪く、和美と女の子は目と鼻の先である。



「そんなにこの淫乱女が大事なんだ。長田さんってマジ変人だよね。長田さんってマジキモイんだけど、あんたちょっとおかしいんじゃ・・・」



パチン



女の子の頬を殴ったのは秋だった。



「秋・・・」



「うるさい!!馬鹿女!!ボクのことをいくら悪く言っても平気だけど、ボクの心友を悪く言うのは許さない。そんなにボクが嫌いなら直接ボクに何でもしてきたらいいじゃないか。それとも口だけなのか?ボクは逃げも隠れもしないからいつでもかかってこいよ。」



「秋、昔の癖がでて、男口調になってるよ。」



「そんなのはどうでもいい。今ボクは本気で怒ってるんだ。なんなら、今暴れたっていんだぞ。」



「秋が暴れたら、教室が壊れちゃうから、ちょっと冷静になって、私は平気だから。」



「和美が悪口言われたんだよ。黙ってられるか!!」



秋が暴走しだしたことにより、冷静になった和美は必死でなだめようとするが、殴られた女の子は完全に切れていた。



「言ったね。覚えてなよ。明日から本気で学校に来たいだなんて思わないようにしてやるんだから。」



そう言って女の子は、教室を出て行った。しばらく経つと、秋も冷静になり、自分のしてしまったことに後悔しだす。



「ボクやっちゃったよ。いきなり暴力なんて最低だ。」



「秋は悪くないわよ。それに私をかばってくれたんでしょ。ありがと。」



「そうだよ。蟹津さんは悪くないさ。先に喧嘩を売ってきたのは向こうなんだ。気にすることないさ。」



「でも、鈴木さんめっちゃくちゃイタそうだったよ。それに、明日から学校に来たくないようにするって言ってたし。」



「優花はまだ高校はいってから、友達増えてないから、大して酷いことはできないんじゃないかな?」



「というか、秋ってあんな子の名前覚えてたのね。私なんて苗字すらわからなかったわ。」



「鈴木 優花スズキ・ユウカさんだよ。一応学年が同じ子の名前は全員覚えてるからね。」



「え?私なんてクラスメイトもまだ完全じゃないのに、一年生全員覚えてるの?」



「まだ、全校は覚えてないけどね。中学の時はすぐに全校覚えられたんだけど、流石に高校にもなると、資料がなくて同学年とバスケ部の人だけよ。」



「蟹津さんって頭良いとは思っていたけど、すごいんだね。」



「昔から、もの覚えはいい方よ。」



「良いどころじゃないわよ。鈴から聞いたんだけど、センター試験満点って本当?」



「鈴って?」



「ああ、中学の時の友達よ。そうだね。中学に入ってから毎年自己採点では満点かな。」



三人で話しているうちに、違う方向にそれていき、優花のことは忘れられてしまっていた。そして、放課後、バスケ部の練習に向かおうと秋が教室を出ようとしたところで、優花から声がかかった。



「蟹津さん。ちょっと顔貸してくれる?」



「秋、行くことないよ。」



「う〜ん。このままうやむやにするのも嫌だし、鈴木さんって陰からいじめるんじゃないから、むしろ好感もてるんだよね。あんまり心配しなくて平気な気がするんだ。」



「また、秋の第六感?」



「そゆこと、だから心配しないで、むしろ鈴木さんの心配してあげて。」



「馬鹿言わないでよ。とにかく、秋が平気っていうなら信じるから、部活に直接行くだろうから体育館の前で待ってるから終わったら来てね。」



「ありがと、ついでにバスケ部の人に遅刻するって言っておいてくれる?」



「はいはい。なんて緊張感ないのかしら。ひょっとしたらキャットファイトが勃発するかもしれないのよ?」



「ボク相手にそんなこと起きるわけないでしょ?」



「そっか。確かにそうよね。」



秋の発言に安心したのか、和美はのんびりと帰りの準備をすると、体育館に向かって言った。



「偉く余裕じゃないの。とにかく来て頂戴。」



二人の会話を多少とはいえ聞いていた優花は、侮られたことに憤り、ずかずかと足音を立てて歩きだした。



『はぁ、ここで後ろを見せちゃう時点でボクに喧嘩で勝とうなんて無理なんだけどな。でも昼間も殴っちゃったし、できるだけ話し合いで解決しよ。』




優花は、今は放課後で使われていない美術室に着くと、鍵を取り出し、開いた。



「あれ?美術部ってこの学校無かったんだ。人いないんだね。」



「今日は活動が休みだから、特別に借りたのよ。って、なんでうちがあんたにそんな説明しなきゃいけないのよ。良いから中に入りなさい。」



鍵を開けたことからも一対一のようであり、人の気配もしないので、秋は堂々と中に入って行く。



「あんたね。昼間喧嘩を売った相手が人気の無い場所に呼び出してるのよ?もうちょっと警戒しなさいよ。」



「ああ、確かにそうだね。でもそんなこと言ったら鈴木さんだってそうでしょ?一対一なんて危ないと思わなかったの?」



「はぁ?いつ一対一って言ったのよ。」



「え?現に誰もいないじゃん?」



「お人よし過ぎるわよ。教室内に隠れてるかもしれないし、後から来るかも知れないでしょ?」



「教室内にはいないよね?ボクこういうの分かるんだ。それに外から呼ぶなら入ったことを確認しなきゃいけないけど、視線も感じなかったし、ケータイもカバンの中でしょ?」



「どういうこと?わかったわ。確かに一対一よ。でも、今回は偶然そうなだけで、次からもそうとは限らないわよ。」



「ありがと。鈴木さんってやっぱりいい人だったんだね。喧嘩相手に忠告するなんて、優しい証拠だよ。見た目金髪でギャルだから、怖い人かと思ってたけど、全然じゃん。」



「あんた。教室とイメージ違うわね。これでも私空手やっててケンカとか負けなしだから、ボコボコにしてあげようと思ってたけど、気が変わったわ。」



「空手してたんだ。ボクも柔道してたんだよ。」



「あんたね。反応するのはそこじゃないでしょ。」



「う〜ん。口で説明するより、見てもらった方が早いから、ちょっと待っててね。」



そう言って、秋は美術室の端にあった木材を持ってくる。何に使うのかは分からないが、まだ作品になっていない材料なので、問題ないだろう。木材を手にした秋をみて優花はたじろぐ。



「ちょっと、うちが空手やってるからって、武器なんて卑怯よ。」



「違うよ。ボクだって柔道してたって言ったでしょ?これは殴りあいしないようにボクの力を見せるために使うの。」



そう言って、秋は机の間に木材を置くと、破壊の右足を振り上げ、木材に落とした。カカト落としというわけだ。木材は3センチほどの厚さがあったが、きれいに折れてしまった。



「もっと厚いのでもたぶんできると思うけど、これしかなかったから。空手してるなら、ちょっとは分かってもらえたかな?」



「ええ、蟹津さんって喧嘩強かったのね。」



「そうだね。一般人ならナイフくらいなら怖くないし、銃をもった怖い顔のおじさんをたたきのめしたこともあるかな。」



「はぁ?どんだけデンジャラスなことしてんのよ。」



「心配してくれてありがと。それより昼間はごめんね。血が上っていたとはいえ、殴っちゃって、痛かったでしょ?」



優花は、まさか謝られるとは思っておらず、先ほどのカカト落としといい意表をつかれっぱなしで、どう返して良いか分からなくなっていた。そして、一番気になっていた疑問をつい口走っていた。



「あんた、何でクラスでハブにされてんのよ?」



「いやぁ。色々事情があってね。ほら、ストラップも実はゴミ箱から回収してたりして。あはは。」



「あはは、じゃないわよ。あんたそれのせいでみんなから避け者にされてるんだから、なんで黙ってんのよ。」



秋はしばらく考えて答えを出す。



「優花はいい子だってわかったから教えるね。あ、優花って呼んでいいよね?」



「べ、別にいいけど・・・」



「ありがと、優花みたいにさ。直接嫌味を言ってくる子は良いんだけど、陰でボクのこと嫌う子ってどうしてもいるでしょ?そうするとさ、ボクの周りに友達がいると危険なんだ。」



これ見よがしに言っていた悪口に恥ずかしくなった優花は顔を赤らめながらも、疑問に思ったことを尋ねる。



「周りの友達が危険ってあんたこんなに強いんだったら問題ないんじゃないの?」



「う〜ん。今詳しく説明すると長くなっちゃうから。また今度ね。とにかく、ボクってすごい不幸で、ボクの周りにいると危険だから、避けてるんだ。優花は空手やってて、そういうの大丈夫そうだから、明日からは声掛けるね。」



「じゃあ、あの事故も、ストラップを捨てたフリしたのも、あんたの不幸体質のせいだっていうの?」



「あんたって言うのやめてよ。こっちが優花って呼ぶんだから、秋ってよんでよね。」



「あ、ごめん。でも、癖なんだよね。名前で呼ぶのってなれなくてさ。」



「まぁ、優花の好きにしていいよ。ってやば、もうこんな時間じゃん。ごめんだけど部活があるからボク行かなきゃ。電話番号だけ交換してくれる?」



「ああ、なんか、喧嘩しに呼んだはずなのに、仲良くなっちゃったね。」



「ボク昔っから男勝りな性格だから、むしろ喧嘩して友達増やしてきたからね。」



「なるほどね。なんかあんたに興味沸いてきた。明日からよろしくね。」



優花と番号を交換すると、アドレスなどは、明日以降交換するか、夜に電話で確認することになった。クラスで初めての連絡先を交換した友人が優花になるとは秋事態も思っていなかったが、話してみると何故か納得できるものがあった。



『う〜ん。優花からも運命の糸の気配がするな。ボクの前世ってプレイボーイだったのかな?こりゃ転生されるわけだ。』



全く検討違いな感想を抱いている秋だったが、和也の恋人に出会うことで、クラスでの立場が改善されていく予感がしていた。




「和美にも教えて上げよ♪」




体育館の前では、心配いらないと分かっていても、遅い秋のことを心配してる和美がそわそわしながら待っていた。



「和美。ごめんね。結構まったよね?」



「それより、どうなったの?やっぱり鈴木さんボコボコにしちゃったの?」



「ううん。友達になっちゃった。前世の記憶の引っかかりがあったから平気だとは思っていたけど、本当にいい子で喧嘩相手のボクのこと心配しだすから、ボクも話し合いで解決しちゃって、そしたら色々と説明に戸惑っちゃって。」



「なによそれ。心配して損した気分だわ。」



「前世の記憶のことも言っておけばよかったね。」



「本当よ。でも、何もなかったならよかったわ。バスケ部の人には友人に頼みごとされて断れなかったって言っておいたから、上手く話し合わせるのよ。」



「了解。優花が連れて行ったのが美術室だったから、ちょうどいいよ。」



「優花って、もう呼び捨てにする仲なのね。」



「うん。あ、でもやっぱりクラスではもうしばらく様子を見るつもり、やっぱり危険があることには変わりないからさ。優花は空手やってて強いんだってさ。ボクの前世って強い女の子とばっかり付き合ってるよね?どうなってるんだろ?」



「おおよその予想はつくわ。ついでに私はきっと何かで救ってもらって惚れたとかそんなんでしょうね。」



「へ?なんで分かるの?和美も前世の記憶が残ってるの?」



「知らないわよ。秋のこと見てたら、そう思ったの。っていうかそんなの分かるの?」



「う〜ん。正確に分かるわけじゃないんだけど、ぼんやりと?でも、どれくらい仲が良かったとかははっきり分かるよ。竜と司は格別だったもん。」



「はいはい。その愛しの竜くんが秋が来るのを首を長〜くして待ってるわよ。天井に着いちゃう前に行ってあげなさい。」



「そんな、愛しのとか・・・」



秋は和美の発言に真赤になりながらも、ただでさえ遅刻しているので、急いで準備をするべく更衣室へと向かったのだった。




『ほんと、食べちゃいたいくらいかわいいんだから。』




和美は、とにかく心配がないことも分かって安堵して帰って行った。ここまで残ったなら部活が終わるまでいて、一緒に帰ることもできるのだが、二人の仲を割くのも悪いと考えたのだ。
















部活が終わり、帰り道


「秋、俺に隠し事しとるやろ?司からメールがあったんやぞ。」



「ありゃ、司からバラされたか。しかも、なんていいタイミングなんだ。やっぱり司はあなどれないな。」



「ごまかすなよ。これでも怒っとるんやぞ?」



「ごめんね。心配かけたくなかったんだ。でも、今日までなんだ。今日一番いじめて来た子とタイマンで話し合って、友達になっちゃった。」



「はぁ?どういうこっちゃ?」



「今日、部活遅刻したでしょ?あれって、喧嘩の呼び出しだったんだよね。そんで、喧嘩したら仲良くなっちゃったみたいな?」



「みたいなって・・・なんや、秋らしいちゃそうやねんけど、とにかく、周りを危険にしたくないからって、態と嫌われるんはやめろ。秋が傷ついたら俺が嫌やねんから。」



「う〜ん。一回やっちゃったから、すぐには変わらないとは思うけど、優花と和解したし、これから徐々に友達増やしていくね。」



「そんなまどろっこしいことせんでも、秋が本気だしたらファンクラブ第二号みたいなんできるんとちゃうんか?」



「竜はそうなってもいいの?」



「う・・・」



竜にとって秋が不幸になるのは一番嫌だが、中学のようにファンクラブができて、そのうち秋が別の男に走ってしまうのも嫌だった。



「秋が幸せならがまんするよ。俺にとってそれが一番幸せだからな。」



「バーカ。標準語になってるぞ。大丈夫、ボクは竜の彼女だから。浮気するんじゃないぞ!?」



「浮気みたいせえへんわ。でも、秋に不幸になって欲しくないってのはほんまやから、無理せんといてくれよ?どうしても不幸になるようやったら、みんなで考えて対策をせないかんからな。」



「うん。ありがと、竜はボクの側にいてくれるだけでいいよ。竜がいてくれたらそれだけで幸せだから。」



「ちょま・・・」



竜は、秋のまっすぐな言葉に赤面する。いつも真逆のことをしているのだが、そこには気づいていない。また、素直な気持ちを伝えた秋もまた、自分の言った言葉に自ら赤面するのだった。



「じゃあ、また明日ね。お風呂に入って早く寝るんだぞ。あ、でも明日は小テストあるから勉強もしてね。」



「無茶いうなや。そんないっぺんに何でもできひんわ。」



「じゃあ、寝ながら晩御飯を食べて、お風呂に入りながら小テストの勉強して、寝たらいいじゃん。」



「んな器用なことできるか。ってか寝てたら飯食えへんやろ。」



「じゃあ、晩御飯の後勉強してお風呂は温めにゆっくり浸かると良いよ。単語帳くらいならお風呂入りながら覚えても平気だしね。」



「なんで温めなんや?」



「その方がいいからよ。40度くらいに調節してね。ぬるくし過ぎて風邪ひかないでよ。」



「了解。やってみるわな。」



「一番は、明日に疲れを残さないことがいいんだから、明日の小テストは、朝、自転車に乗りながらでも、ボクが対策してあげるから、疲れを取るのを優先してね。」



「マジか助かるわぁ。ほな飯食ったらはよ寝てまお。」



「もう、朝の時間だけで足りなかったらどうするのよ。」



「秋のやまなら大丈夫やろ。」



「知らない。点数低くてもボクのせいじゃないからね。」






そう言いながらも、家に着くと教科書を開いてして自分は必要ない小テストの範囲の確認をする秋だった。明日も朝早くお弁当を作らないといけないので、帰りに確認しておいたお弁当の内容を作れるか確かめるために冷蔵庫を開けようとすると、手に持ったケータイが鳴りだした。



「はい。優花どうしたの?」



「どうしたのじゃないでしょ。夜電話するって言ったじゃないの。」



「ああ、ごめん。明日のお弁当の準備しててさ。」



「例の手作り弁当?本当に作ってたんだ。」



「そうだよ。朝ご飯とお父さんと竜のお弁当はボクが作ってるんだ。」



「へぇ、偉いわね。うちなんていつもギリギリに起きてるわよ。あれ?竜って弟かなにか?」



「ううん。彼氏だよ。バスケ部にいるから今度見においでよ。優花って部活は?美術部だったりする?」



「そういえば昼にもそんなこと言ってたわね。信頼されてるのかしら?もう、あんたと話してるとこっちが変な気分になるわ。」



「ああ、彼氏持ちってことでいじめられるとか考えてたの?優花はもういじめないんでしょ?そうだね。信頼っていうのも、近いけど、何よりボクの第六感って結構当たるんだ。だからボクの勘が優花に教えても大丈夫って言ったの。」



「う〜ん。話せば話すほど謎が増えて行く気がするわ。そう、さっきの質問の答えだけど美術部よ。うちが美術部なんて似合わないでしょ?」



「ううん。ぴったりだと思う。この前、手に絵の具のカスが付いてたとか見てたからそうかもって思ってたしね。ボクも中学美術部だったから、そういうの分かるんだ。今度ボクが作ったもの部屋に置いてあるから見にくる?」



「えっと、どの言葉に反応したらいいのかしら?」



「ごめんごめん。ボクの周りってすごい子ばっかりだったから、まとめて話しちゃう癖がついてるんだ。そうだな。一番言いたいのは、今度うちに来ない?」



「行かせてもらおうかな。詳しく話も聞きたいしね。」



「じゃあ、今週末はちょっと用事があるから、来週の日曜空いてる?」



「ちょっと待ってね。」



優花は、手帳を取り出すと予定を確認する。フリをする。



「丁度空いてるわ。じゃあ来週末で。」



「良いこと教えたげる。電話越しでも、手帳見てないの分かったりするから、きちんとページ開きなさいよ。テキトウ過ぎ。」



「あ、バレた?実は予定はいってんだけど、そっちのが興味あるから、今からキャンセルするわ。」



「良いの?別に来週じゃなくてもボクは良いよ?」



「良いの良いの。どうせ大した用事じゃないんだから、うちも実は彼氏いるんだけど、毎日の様に会ってるから一回くらいキャンセルしても平気でしょ。」



「彼氏さんに謝っておいてね。」



「はいはい。んじゃ明日学校でね。」



優花はそう言うと、返事も聞かずに切ってしまった。教室でもそうだったが、さっぱりした性格で、嫌いなものには嫌い、好きなものには好きと正直に言う性格は秋としても好感を持てるところだった。




『優花って正直な性格よね。まるで竜みたい・・・・って何ボク竜のことなんて考えてるんだろ。明日のお弁当確認しなきゃ。』



しかし、お弁当の相手も竜であり、結局真赤になりながら冷蔵庫の中身を確認する秋の姿が好美に見つかってしまい、「青春ねぇ。」と冷やかされてしまうのだった。



『お母さん。娘をからかうなんて・・・やめてよね。』



秋の心の叫びは好美に通じることはなく、むしろ口に出したら余計にからかわれることが分かっているので、秋はさっさと確認を済ませると、お風呂に入って寝るのだった。



『明日は、ちょっと多めに作っていって、優花にも食べてもらおう。』










クラス内での秋の様子とちょっとおまけで秋と竜の関係を乗せてみました。

今回のテーマは〜協力者〜でしょう。つまり、優花ですね。優花のキャラクターは真剣に悩みました。優花をどんなキャラにしようか考えて夜も八時間くらいしか寝ていません。

そんながんばって考えた優花のキャラが、勝ち気で、実はすっごく思いやりがあって、ちょっとおバカな女の子になりました。

優花は確実にこれから出現回数多くなります。そして、今後明らかになる設定の影響でちょっとしたドタバタが待っています。

40話読んで下すって本当にありがとうございました。



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