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再転の姫君  作者: 須磨彰
37/79

チャプター36

読者の皆様からの温かい応援のもと、投稿しております。本当にありがとうございます。

恋の時限爆弾




結局、ジジのことを構っているうちに10月を半分以上使ってしまった。10月に入ってすぐ学園祭があり、12月のクリスマスまでの2か月の間に竜との関係をどうにかしないと、ボクはきっと司や麻美によって無理やり付き合わされることになってしまう。結果的には付き合うことには変わりはないが、どうせなら自分たちで何とか付き合うようにもっていきたい。


それに、名指しではなかったとはいえ、竜から一応告白なるものをしてもらったのだから、それにもきちんと答えないといけない。もし、ここできちんと答えを出さなければ本当に竜はボクから離れて行ってしまうかもしれない。


「どうしよう。」


今は放課後だ。美術部を半分引退したとはいえ、帰りは基本的に竜の自転車の後ろであるボクは、武兄ちゃんが迎えに来てくれる日を除いて、美術部に顔を出したり、鈴や浩太と勉強をしたりしながら竜が終わるまで時間をつぶさなければならない。


「こうして教室にいないで、体育館で竜くんの練習の様子でもみてればいいじゃない?」


「それはみんなの迷惑になるからダメだよ。ボクらは勝手に引退したけど、本当なら来年の夏までは部活を続けていることになってるんだから。」


「じゃあ、模写だとか言ってペンとスケッチブックを持っていけばいいじゃない。ギャラリーはあいてるんだから別に問題ないでしょ?」


「それは、まぁそうだけど。鈴や浩太がいるんだし、ボクも教室にいた方が・・・」


「メグちゃんは、竜くんと今までと違う場所で会うと、緊張しちゃうからさけてるだけだろ。」


グサ、まぁ、事実だから仕方がないんだけど、実際美術部の方も、鈴や浩太の指導があれば問題なく、真奈美ちゃんたちも来年に向けて既に計画などを立てており、ボクは学校にいてもやることがない。


「いいよな。メグちゃんは勉強なんてしなくても、受験楽勝だし。」


「う〜ん。それは否定しないかも、勉強よりも当日どれだけ不幸に合わずに受けるか、こっちの方が大事だからね。絶対に竜の側から離れられないよ。」


「受験当日は、みんなそれぞれ必至だから、流石にメグのことを恨む余裕なんてないんじゃないかな?」


「そうだね。試験の邪魔でもしない限り問題ないでしょうね。」


「まぁ、一応別室で受けれるか確認だけでもとっておいたら?メグの成績をみれば、流石に高校側も欲しいはずだからひょっとしたら特別認定してくれるかもしれないわよ。」


「人と違うことをするってあんまり好きじゃないんだけどな。」


「受験のためだもの、それくらい許されるわよ。第一、メグにとっては今さらじゃないの?」


「それを言わないでよ。人と違うからこそ、人と同じことができるように努力してるんだから。」


受験まで猶予があるボクらは結構こんな感じでおしゃべりをして過ごすことも多い。鈴はもともと勉強好きだし、浩太も成績は良いので、今から焦って詰め込むこともない。というか、心友全員結構頭が良い。ボクと竜は近くって特待生で行けるのでT高を受ける予定だが、鈴たちは有名名門高のY高に普通に入れるだろう。浩太なんかは首席合格も可能かもしれない。


「そろそろ、メグのナイト様が練習終わる時間じゃないかしら?」


「ナイトってなんだよ。そんなんじゃないよ。」


「あら?麻美から聞いたわよ。守ってやるって約束してくれたんでしょ?」


最近ボクと竜の情報は、司と麻美によってだだ漏れである。というか、竜は元々隠し事ができない性格なので、ほとんどの情報が心友メンバーには伝わっており、それを使ってボクをからかうのが心友メンバーの楽しみになりつつある。


「はぁ。まあいいわ。確かに練習終わる時間だし、体育館に向かおうか。」


「あら?私いつナイト様が体育館で練習してるなんて言ったかしら?」


「言ってないけど、竜のことなんでしょ。」


「へぇ。メグの中で竜くん=ナイト様って構図ができちゃってるのね。」


やられた。こうしてボクは毎日鈴たちにいじめられるんだ。ボクが真赤になって否定しようとすると、鈴はボクの頭を撫で撫でして最後の一撃をくれた。


「大丈夫よ。ナイト様もきっとメグの熱い口づけを待っているから。」


「はぅぁ・・・」


小学校の事件のことを知っていてこんなことを言うから達が悪い。結局そのあと鈴に抱き締められたりして、体育館に行くのが遅れ、竜は自転車をげた箱の前まで持ってきていた。


「丁度ええタイミングやったんやな。今日は部活じゃなくて浩太たちとおったんやな。」


「部活の方はもうだいぶ軌道にのってるからな。それじゃあ、僕と鈴は帰るからまた明日学校でな。」


浩太はそう言うと、鈴と仲よさそうに自転車置き場の方へ歩いて行った。なんだかんだあったけど、二人も結構お似合いかもしれない。浩太もあれで前よりもずっと良い男になったからね。でも、やっぱりまだ鈴にはもったいない気がする。


「あいつら仲ええよな。せやけど、なんで鈴ちゃんは浩太なんやろな。」


「まぁ、美術部じゃないと分からないことがあったのよ。竜も美術部にいたらきっと浩太と鈴が付き合いだすのも違和感ないと思うよ。」


「俺が美術部やったら、帰る時間早くなって鈴ちゃんは浩太と付き合わへんかったんうやないか?」


「そうでもないと思うよ。結局結ばれる運命だったんだよ。」


「秋がそんなこと言うん珍しいな。普段からファンタジー体質やのにそう言うん絶対信じへんやん。」


「まぁね。でも、ボクも運命ってあると思うよ。だって、竜と出会ったのも運命だと思うしね。」


「ちょま、それは・・・」


真赤になった竜だけど、少し間をおくと、考えをまとめたのか、言葉を紡ぎだす。


「秋のは前世の記憶とかいうやつやろ?運命とは違うんちゃうかな?」


「う〜ん。それも一種の運命なのかもよ?もし違ったとしても、これから運命にしていけばいいじゃない。運命は自分で切り開くものだよ。」


「自分で切り開くなぁ。まぁ人に決められた人生よりはええかもしれへんな。」


「熱いわねぇ。いつまで話してるつもりなの?最終下校時刻過ぎちゃうわよ?」


自転車を取ってきた浩太と鈴に冷やかされてしまった。ボクは真赤な顔がバレないように竜の自転車の後ろに急いで乗ると、竜に出発を促した。しばらく走っていると、ボクから竜に話しかけた。


「さっきの話だけど、竜はボクが運命の人だったら嬉しい?」


「せやな。前にも言われた気がするけど、前世でも今でも絶対に心友やったなんて嬉しいもんやで。」


「そうじゃなくって、運命の・・・・・・恋人だったら・・・」


ボクも恥ずかしくなって小声になってしまう。


「ん?なんて?」


「ううん。何でもない。それよりもうすぐ竜の誕生日だね。」


「ああ、せやったな。最近部活とか忙しくって忘れとったわ。」


「なに言ってるのよ。この前ボクと司の誕生日祝ったんだから、一か月後でしょ。」


「悪い悪い。どうもそういう行事ごとって覚えれんくってさ。」


「こんなんじゃ、付き合った記念日とか期待しない方がいいわね。」


「せやな。彼女ができてもひょっとしたら忘れちゃいそうで怖いわ。」


「全く、そんなんじゃ彼女できないぞ。」


「う〜ん。このままやったら本気でやばいかもしれへんな。そろそろ俺も現実をみよっかな。」


え?現実って?ひょっとしてきちんともう一度告白してくれるのかな?


「俺の周りってほんま秋みたいな暴力女しかおらへんからなぁ。」


ぎゅ〜。ギリギリ。


「ちょま、マジで骨までいっとるって、暴力反対。」


「ボクみたいな美人をそんな風に言うのは竜くらいなんだからね。それに胸が当たって良い思いしてるんでしょ。」


「まぁな。秋はほんまに美人やとおもうで。」


「ちょ・・・そんなこと・・いきなり言われても。」


結局ボクの方が竜の背中で真っ赤になってしまうのだった。今度は力はいれずに、ぎゅっと竜の背中に抱きついた。


「ほんま、役得やな。」


「馬鹿いってないで力入れて漕ぎなさい。」


声とは裏腹に態度は優しくなってしまった。


翌日、鈴はボクに何か発展があったか聞いてきたが、特に何もなかったと言っておいた。しかし、ボクは良いことを思いついてしまった。そう、竜の誕生日に告白の返事をすることだ。明後日はちょうど土曜日で竜も部活も学校もなく、元々心友で集まって何かしようということになっていた。


「司、お願いがあるんだけど、明後日ボクと竜以外を呼んでどこかに遊びに行ってくれない?」


「いいよぉ。その代りぃ、後できちんと報告してねぇ。ついでにぃ、今回逃したら、竜に無理やりクリスマスの日に別の子に告白させるからぁ。」


「ええ?クリスマスのデートってボクたちを無理やり誘うって話じゃなかったの?」


「気が変わったんだよぉ。秋が竜の気持ちに応えてあげないんだったらぁ。そろそろ竜も別の子に興味を持たないとかわいそうだと思ってねぇ。大丈夫、秋も誘ってあげるからぁ。」


「全然大丈夫じゃないよ。竜が他の子といちゃいちゃするのを見るなんてボクにできると思う?」


「う〜ん。思わないけどぉ。それはそれで上手く行きそうだから問題ないかなぁ。」


そんな横暴な・・・

確かにボクはそこまでされたら流石に竜に気持を伝えるかもしれないが、その時は竜には彼女がいるわけで、彼女になった子に申し訳ないし、間を引き裂くのが悪くって本当に何もいわないで心友ってなる可能性だってあるわけで。


「大丈夫だよぉ。そこはバシッと言うのが秋だからぁ。まぁ告白しておいて二人で幸せになってねなんて言いそうだけどねぇ。」


「メグ、テンパるのは分かるけど、あんまり言葉に出さない方がいいわよ。誰も聞いてなかったから良いようなものの、そのうち誰かに聞かれちゃうわよ。」


「ごめん。そうだね。そこで聞き耳を立ててる和美みたいな子がこれからもいるかもしれないもんね。」


「あはは、バレてたか。」


和美がいつものごとく扉の向こうで聞いており、ボクに名指しされて中に入ってきた。


「別に和美には隠し事してるわけでもないんだから堂々と入ってきてよね。なんか、扉の向こうにいられると逆に変な気分になるんだよ。」


「つい癖になっちゃってね。でも、本当に私がいても平気で内緒話するんだから。気をつけたほうがいいわよ。」


「う〜ん。あんまり隠し事とか好きじゃないからねぇ。聞かれたらたぶんどうしてもってことじゃなきゃ答えちゃうかも。」


「ホントに?じゃあスリーサイズは?」


「上から88・59・85だったかな?寒くなってきてちょっと太っちゃったけどね。」


「夏前はよりすごい体系になってるじゃないの。」


「やっぱり太りすぎかな?体重はそこまで増えてないんだけどね。」


「違うわよ。太ったんじゃなくて、磨きがかかってるのよ。」


「身長はあんまり変わってないのに体重だけ増えたんだよ?」


「その体重のほとんどが胸でしょうが、それは太ったんじゃなくて成長したのよ。なんだか、竜くんとの関係が良くなる度に成長してるんじゃないでしょうね?」


「そ、そんなことないよ。」


「そう言えばぁ、ファーストキスの事件ぐらいからだよねぇ。秋が女の子らしくなったのってぇ。」


「そ、そうだったかしら?」


「そうだよぉ。浩太がおぼれてからぁ、急激に女の子らしくなってぇ。竜とキスしてからは本当にぃ、男の子っぽさがなくなったよねぇ。」


「き、気のせいよ。だって、中学入ってからだって、暗黒やら残酷やらやりたい放題じゃないの。」


「暴力は確かにねぇ。でもぉ、殺戮とか黄金とか破壊はあんまり使わなくなったよねぇ。」


「それは、スカートだから足技使いにくいから仕方がないわよ。」


「殺戮はぁ?頭だけどぉ?ああ、竜と顔の距離が近づくからぁ、やらなくなったんだねぇ。」


「司ぁ、そんなにボクの必殺技が見たかったのね。ボク誤解してたよ。司はもっと命を大事にする子だと思ってた。ごめんね。今まで勘違いしてて、偶にはフルコンボしてあげるね。」


「あ、竜ぅ。」


ビクッ バッ ガシッ


「司くぅん。竜なんていないよねぇ?それと、いきなり立ち上がってどこに行こうとしてたのかな?」


「いやぁ、竜に用事があったのを思い出してさ。それでちょっと竜のとこに行かなきゃって声を出しただけだよ。」


流石の司も焦っているらしい。間延びしない司の声を久しぶりに聞いた気がする。


ガツ、ドゴッ グハッ・・・・・・・


「南無ぅ。」


鈴が司に手を合わせているが、そんなことは今は放置だ。司のせいで話が脱線してしまったが、とにかくボクは竜の誕生日に告白すべく準備をしなくてはいけない。お母さんに頼んで明後日は家に誰もいないようにしてもらおう。


「秋、司くんなんかピクピク痙攣してるんだけど大丈夫なの?」


「大丈夫よ。竜程ではないけど、司も昔から慣れてるから授業が始まるまでには回復してるわよ。床に寝かせておくと吉川先生が不審がるだろうから机の上で寝ているように見せかけておきましょ。」


「一つずつは前にも見たことあるし、殺戮に関してはこの前舞台で見てたけど、ふたつコンボでするだけで本当に恐怖ね。」


「これでも手加減してるんだよ?それにフルコンボは空中で二激叩き込むしね。流石に全弾空中で叩き込むのは練習してないから無理だけど。」


「まるで練習したら出来るみたいな言い方しないでよ。」


「う〜ん。今は無理だけど、また前みたいに臨死体験して身体能力向上したら不可能じゃないかもしれないわ。」


「「・・・・」」


鈴と和美は顔を見合わせると、何かをボクに訴えてきた。


「大丈夫よ。よほどのことがない限り女の子に手をあげるなんてボクはしないよ。コンボは竜と司くらいしか耐えられないしね。竜は過去最高4コンボまで経験済みだし。最近大人しくしてたからって2コンボくらいで伸びるなんて司も修行がたりないぞ。ん?狸寝入りか?」


ビクッ


「いやぁ、本当に一回は天国が見えるかと思ったよぉ。狸寝入りじゃなくてぇ、これ以上耐えられないことを意思表示しただけだよぉ。」


司は結構すぐに起き上がってきた。机に運ぶ手間が省けてそれはそれでオッケーだ。だいたい、手加減したはずなのに伸びたからおかしいと思っていたんだ。


「見えない速さでこぶしを当てられたのに何で平気なの?」


「和美ちゃ〜ん。秋は力の加減とぉ、どこに入れたら後遺症を残さないか考えて打ってるからぁ。意外と平気なもんなんだよぉ。ただしぃ、できれば何度も受けたくはないのは事実だけどねぇ。」


「秋、私も一回受けてみたいわ。どんな感じなのかしら?」


和美にはこの前ボクの部屋に来た時に暗黒を使っているのだが、完全な死角からの奇襲で、すぐに起き上がったことから、ボクが何をしたのか分かって無かったようだ。


「前に暗黒はやったことあるよ?」


「ええ?記憶に無いのはカウントしないの。ね?一回だけでいいから。」


なんだか、別の意味で危険な香りがしてきたのでボクは丁重にお断りをして、吉川先生が来るまで四人で雑談をして朝の時間を過ごした。そういえば、竜の朝練に合わせて早く来たはずなのに鈴も司も和美も結構早くから学校にいた気がする。


ボクが竜と一緒に体育館にいるのが恥ずかしくて教室に来ているのを知ってわざと来てくれたのかな?やっぱりみんなちょっと意地悪なところもあるけど、良い友達かも。


ニヤリ


「明日は麻美も早く来るってさぁ。今日はぁ、ちょっと朝ごはんが間に合わなかったからぁ先に行っててって言ってたからねぇ。」


司・・・あんたなんでボクが考えてること分かるんだ?やっぱりこの心友は侮れない。
















誕生日当日、結局周りの助力もあり、竜とボクの二人だけでボクの部屋で誕生パーティーをすることになった。いきなり予定が入った司たちに、竜は困惑ぎみだったが、毎年お祝いをしてこれたわけでもないのであまり気にしていないようだ。


「今日は、張り切って料理つくとか作ったんだからいっぱい食べてね。」



ボクは疑似新婚夫婦みたいな状況にちょっぴり浮かれ気分。でも、やっぱりこうして二人きりというのは恥ずかしい気持もあり、司たちを追い払ったのは後悔かも。



「すげぇ豪華やな。これ全部秋が作ったんか?」


「難しいものはないわよ。シチューとか結構簡単に作れるんだから。」


今日のメニューはシチュー・ハンバーグ・オムライス・シーザーサラダあと、竜の好きなから揚げだ。これにデザートというか誕生日なのでとケーキまで焼いたので二人で食べるにはちょっと張り切りすぎたかもしれない。ご飯やパンも用意してあるのだが、いったいどれだけ食べるのに時間がかかってしまうだろう。


「どうする?ケーキまで食べれないといけないし、先にろうそく消しちゃおうか?」


「秋とならこれくらい食えるやろ。まぁケーキも早くみたいしろうそく先にしよ。」


この量を食べれると言い切る竜。竜って大食いチャンピオンか何かだったっけ?

竜が大丈夫と言うのでとりあえず安心して冷蔵庫からケーキを取り出すと、大きいろうそく一本と、小さいのを4本刺して、火をつけた。


「おお、なんか本格的やな。消してもええか?」


「うん。むしろ早く消さないとロウが垂れちゃうわよ。」


竜は一息でろうそくの火を消すと、ボクは「ハッピィバースディ」とお祝いを言って二人で料理を食べだした。


「ほんま、秋は料理もうまいな。最近は俺も家の手伝いするけどここまではできやんわ。」


「そんなことないよ。お母さんが作ったほうがやっぱりおいしいもん。でも、美味しいって言って食べてもらえるなら嬉しいかな。」


ボクらは笑って話ながら、料理を片づけていった。食べられるか心配していたのに、竜は本当に良く食べられるし、会話も弾んでいたからか、時間はかかってしまったが、そんなに気にすることなく食べ終えてしまった。


「ごちそうさま。ほんまに秋はええ嫁さんになれるわ。」


「おそまつさまです。ここまで豪快に食べてくれると作ってるボクも嬉しいよ。」


「うまかったからな。こんな料理なら毎日でも平気やわ。」


「本当に?だったら将来本当に毎日作ってあげようか?」


「そりゃ嬉しいな。秋の手料理食べ放題なんて言ったらファンクラブの奴ら踊ってよろこぶわな。」


「ファンクラブはどうでもいいよ。竜は本当にボクの料理毎日食べたい?」


「え?そりゃ、まぁ。」


「この前司たちと泊まった時竜がここで言ってくれたよね?昔から好きな子がいるって。」


「え?う、うん。」


「ボク正直竜が好きな子がいるって聞かされて応援しようと思ったんだよ。」


「馬鹿、そんな意味とちゃうわ。」


「うん。あの後、聞き耳立ててた麻美たちに同じこと言われた。昔から竜と一緒にいて、竜が叶わなかった恋人はボクだけなんだって。」


「かなわなかったって・・・」


「今まで、照れて答えはぐらかして来たけど、きちんと答えるね。ボク・・・」


その時、ボクは窓の外を見た。どこかに遊びに行っているはずの浩太が、窓の側で聞き耳を立てていた。玄関の方にも気配があるので、おそらく浩太の合図で他のメンバーも突入してくるつもりだろう。


「はぁ。答えが聞きたかったらボクの部屋まで来てくれる?」


「え?別にかまへんけど・・・」


ボクは玄関のカギを司たちのために開けてからボクの部屋に竜と一緒に向かった。

ボクは、これ以上邪魔が入る前にきちんと答えようと、竜に向き合うと、はっきりと答えを言った。


「ボク竜が好きだよ。心友としても、男の子としても。ボクと付き合ってくれないかな?」


「「おめでとう〜!!」」


やられた。まさか、浩太がダミーだったなんて、クローゼットの中から、麻美と鈴と和美がクラッカーを鳴らしながら出てきて、勉強机の下から司が這い出てきた。こちらもクラッカーを手に持っている。


「全く、司の読みは完璧だな。」


浩太も扉を開けて入ってきた。少しタイミングは遅いがクラッカーを鳴らしている。


「秋?これはどういうこと?」


「竜は自覚無かったかもしれないけど、ボクらが両想いなのはみんなにはバレバレだったのよ。それで、ボクが告白するために二人きりにして欲しいって司に頼んだんだけど。」


「僕たちがぁ。そんな楽しそうなイベント放っておくわけがないじゃないかぁ。」


「そうよ。秋のおいしい料理を逃したのは惜しいけど、サプライズのためにずっと待機してたんだから。」


「思ったより簡単だったわよ。メグは愛しの竜くんのために台所にずっといたし。タイミングを見計らって浩太に窓の外に姿を現してもらうだけだったんだから。」


「それで、僕はずっと庭にいたんだから、大変だったんだぞ?」


「私たちはクローゼットの中よ?三人も入るには結構きつかったんだから。」


みんな勝ってなことを言っているが、結局ボクらがここで告白することを分かっていたかのようだ。


「一つだけぇ、問題があったんだけどねぇ。告白を受けた竜が狼になる前にでるかぁ。後に出るかでぇためらったんだけどぉ。あんまり長く同じ空間にいるとぉ。秋が気づいちゃうからぁ。どうしても前に出ることになっちゃったんだよねぇ。」


「狼って、俺は何もしない。」


「チューくらいしてもいいのよ。さぁ、今すぐメグの小さな唇をうるおしてあげなさい。」


「鈴!!そんな・・・」


全員の視線がボクと竜に集中し、ボクらは真赤になってしまっている。ちょっと嬉しいけど、恥ずかしい。


「さぁ、秋ちゃんのことだから、シチューの残りくらいはあるでしょ?みんなでもう一回竜くんの誕生パーティしましょうよ。あと、付き合いだしたお祝いもかねてね。」


麻美がそう言っていたずらっぽく微笑むと、みんなでリビングに戻った。確かに夕飯分と思ってシチューとハンバーグとサラダは残っているが、竜の大好きなから揚げとか二人分作ったオムライスとケーキは全部食べてしまってない。


「せっかくだし、オムライスも作ってあげようかな。」


「今日は秋ちゃん張り切ってるわね。そんなに嬉しかったの?」


「まぁね。あ、竜の答え聞いてない・・・」


「竜くん。きちんと答えてあげなきゃダメじゃないの。」


「いや、答える前に自分ら出てきたやん。」


「そう言えばそうだったわね。つい司の合図がある前に和美が飛び出しちゃったのよね。」


和美の方をみんなが見ると、照れ笑いをしていた。


「だって、なんだか二人の様子を見たら幸せ過ぎていてもたってもいられなかったんだもん。」


一番に声を上げたのは予想外にも和美だったらしい。祝福してくれるか心配だったが、和美は本当の意味でボクたちのことを大事な仲間として認めてくれていたようだ。


「オムライス作る前にやることができちゃったね。これ、人数分あるんだけど、みんなに配るね。」


ボクはみんなに、ミサンガを渡して行った。


「これ?引退後に作っていたやつよね?」


「うん。リストバンドって、買いに行かないといけないでしょ?でも、ミサンガなら今後ボクの味方が増えた時にすぐに渡してあげれるじゃない?色はボクのセンスで決めてあるんだ。ボクと竜は緑と赤を中心に、鈴と浩太は青色と灰色を、麻美と司は水色と黒ね。和美は赤と白にしたわ。白は和美のイメージカラーね。」


「え?赤は秋ちゃんのイメージカラーよね?本当にいいの?」


「みんなは、付き合ってるからそれぞれの色を中心にしたけど、赤もちゃんと入れてるよ。赤が中心なのはみんなボクのことを大切にしてくれてる人全員だからね。変な意味じゃないぞ。」


「ううん。それでも嬉しいわ。秋、ありがと。」


「えへへ。喜んでもらって嬉しいよ。特殊な糸使ってるから普段つけても平気だよ。ほつれたりしたら何度でも直してあげるから、大事にしまわないでつけてて欲しいかな。もちろん制服から出ないような場所につけてね。ボクのせいで生徒指導に呼ばれるなんていやだからね。」


みんな思い思いの場所にミサンガをつけて行く。ボクも竜と和美のミサンガをつけてあげた。


「これ夏服になったら見えちゃうね。」


「その時は、足にでもつけようか。足なら靴とか靴下でうまく隠せばもんだいないさ。」


「そうね。足なら自分でつけ直せるし、そうするわ。浩太は今も足の方がいいんじゃないの?」


「これでも美術部だぞ。手先は器用な方さ。」






みんなの分もオムライスを作り、ボクと竜は流石に少しつまむ程度だったが、みんなともう一度誕生パーティをした。竜、これで自分の誕生日を忘れたらボクとの記念日も忘れることになるんだから、絶対に忘れるなよ。







ごめんなさい。実はまだ引っ張れましたね。もどかしさを楽しんでくださっていた読者様申し訳ありません。クリスマスの時までにと言いながらも司のあの脅しさえなければ高校くらいまでは余裕で引っ張れたことでしょう。


正直、ツンデレ発動させて、竜をいじめることはできましたが、竜がかわいそうになってきました。マテといわれたワンコのように見えてきたのです。


今回のテーマ“いかにして司の計画を遂行するか”でした。

え?メインは秋の告白に対する答えだろ?違います。あえてそこは重要ではないと明言いたします。だって、何度はぐらかそうとも二人は付き合う運命なんですから。だったら、司の発言にフラグを立てて、みんなでサプライズって方に力をいれたくなりませんか?というか、司だけじゃなく、心友たちみんなで秋と竜を囲む様子を描きたかったのです。自転車のシーンはフラグを立てるため必要でしたが、基本周りを中心??に書いたつもりです。


では、再転の姫君はここから、甘いムードに・・・ならないかもしれませんが、今後もよろしくおねがいします。

36読んでいただきありがとうございました。



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