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再転の姫君  作者: 須磨彰
34/79

チャプター33

みなさんお久しぶりです。あいも変わらずアクセス数は閲覧できませんが、諸事情により投稿を再開したいとおもいます。


オーバー・ザ・レインボー




「次は、”オズの魔法使い”です。」



司会の男の子の声とともに、舞台の幕があがり、照明と音響でたつまきをイメージしながら、秋たちの劇は始まった。



たつまきが収まると、小さな小屋の絵から、ひとりの女の子が犬のぬいぐるみを抱えて出てくる。少女は青と白のチェックのかわいらしいワンピースを着てゆっくりと中央に歩いてくる。



「まぁ、怖かったわ。いきなりたつまきが起こるんだもの。トト大丈夫?」



「ワンワン」



音響の犬の鳴き声が響き、少女と犬のトトの無事が知らされる。少女は当たりの様子をうかがいながら、セリフを紡ぎ出す。



「すごく大きなたつまきだったのね。ここはどこかしら?生まれ故郷のカンサスではないみたいだけど・・・」



そうすると、舞台袖から数人の生徒達が奇妙な衣装をまとい、出てくる。そして、最後に和美が美しいドレスに身をまとい出てきた。



「これはこれは、魔女様。悪い東の魔女を退治していただき、ありがとうございました。」



「え?私は魔女なんて退治していないわ。」



「お家をごらんなさい。あなたのお家の下敷きになって悪い東の魔女は退治されたのよ。」



和美のセリフとともに、舞台上の少女は小屋の方を見る。すると、真赤な靴だけがおちている。

それを和美が手にとって、少女へと差出す。



「これは、悪い東の魔女の履いていた靴よ。これを履いてちょうだい。可愛らしい魔女さん。」



「どうしましょう。私人をあやめてしまったのですか?」



「気にすることはありませんよ。あなたは、悪い魔女を退治しただけなのですから。さぁ、この靴を履いてごらんなさい。魔女さんは悪い魔女からこの東の国を救ったのですから。」



「あの、私は魔女ではありません。カンサスで生まれたドロシーという普通の女の子です。あなたはどなたでしょうか?」



「あらあら、良いことに気を取られて、自己紹介がまだでしたね。私は北の魔女よ。そしてこの人たちは東の国の住人、マンチキンたちよ。」



「北の魔女さん。私は悪い魔女を退治したわけではありません。たつまきに飛ばされて流れ着いただけです。その靴をいただくことはできません。」



「ドロシーは正直ものなのですね。」



そう言って、和美はドロシー役の秋を抱きしめた。



(ちょっと、台本に抱きしめるなんてないじゃないの。)

(これくらいのアドリブ問題ないわ。さぁ、靴も私が履かせてあげるわね。)



「あなたのお家が悪い魔女を退治したのだから、あなたがこの靴を履いていいのよ。さぁ、この靴は魔法の靴ですから、サイズもぴったりになるはずよ。」



秋はとりあえず、和美に合わせて、靴を履く、元々ぴったりのサイズのものだが、



「あら不思議、靴が小さくなって私の足にちょうどのサイズになりました。ありがとうございます。優しい北の魔女さん。」



「私は何もしていないわ。さぁ、マンチキンのみんなもドロシーに感謝していますよ。」



和美の声に続いてマンチキンたちはそれぞれ感謝の言葉をのべ、丁寧にお辞儀をした。



「北の魔女さん。どうか、カンサスへの帰り道を教えていただけないかしら?私はカンサスに帰らなければいけません。」



「カンサスという場所は私も知りません。そうだわ。エメラルドの都に向かってごらんなさい。エメラルドの都には大魔道師オズ様がいらっしゃいます。オズ様なら、カンサスへの帰るみちをご存知かもしれませんわ。」



「エメラルドの都?大魔道師オズ様?」



「そうです。オズ様は私たち魔女が束になっても敵わない素晴らしい力をもって、エメラルドの都をお納めになられてします。さぁ、この道を真っすぐ進みなさい。この道をたどっていけば、エメラルドの都につけましょう。心配いりませんわ。その魔法の靴があれば、きっとエメラルドの都へだって歩いていけるはずです。」



ドロシーは北の魔女とマンチキンたちに別れを告げると、舞台袖の方へ歩いていきます。



場面が変わって、かかしの格好をした司が背中に長い棒を背負って立っている。



「こんにちは、かかしさん。良いお天気ですわね。」



「こんにちはぁ、本当に良い天気だねぇ。」



ドロシーはかかしが返事をすると思っておらず驚いてしまう。



「あなた口をきいたの?」



「はいぃ、魔女さ〜ん。私は生きたかかしでございますぅ。」



「まぁ、この国には生きたかかしがいるんですね。私は魔女ではありません。ドロシーといいます。」



「ドロシーさんですかぁ、良い名前ですねぇ。お辞儀をしたいところですがぁ。背中についた棒が邪魔でぇ、身動きがとれませぇん。」



「あらかわいそうに、私が棒を外してあげましょう。」



そう言って、ドロシーはかかしの背中から棒をとりあげます。



「ありがとうございます。何と心優しい人でしょう。」



かかしは、ドロシーの手をとると、ひざまづいて口づけをする。



(見てぇ、ファンクラブの子たちが涙を流してるよぉ。)

(え?本当だ。そんな感動するシーンだったっけ?)

(もちろんだよぉ。みんな秋の演技に涙してるんだよぉ。)



仲良しになったかかしとドロシーは一緒にエメラルドの都に行くことになりました。



「オズ様はぁ。脳みそをくれるだろうかぁ?」



「オズ様は偉い魔法使いですもの。きっとかかしさんに脳みそを分けてくださるわ。」



しばらく歩いていると、今度は斧を振りかぶったまま固まっているブリキの木樵がいました。



「ブリキさんどうしてそんなところで固まっているの?」



「実は、木を切り倒している最中に雨が降ってきて、関節が動かなくなってしまったんだよ。」



「じゃぁ、なんで話せるのぉ?」



「え?ちょま、えっと・・・」


ブリキ役の要は司のアドリブに困り果ててしまった。



「口の中まで雨にぬれずに良かったですね。何か私たちにできることはありませんか?」



(もうちょっとからかいたかったのにぃ。)

(要くんごめんね。司も和美もいきなりアドリブ入れないでよ。)



「あ、えっと、じゃあそこにある油をさしてくれないか?それで動けるようになるから。」



「これでいいのね。どうかしら?」



ドロシーが油をかけてあげると、ブリキは動けるようになった。



「ありがとう。本当に色々と助けてくれて、たすかったよ。君たちは何故こんなところに?」



「私はカンサスから来たドロシーと言います。私はカンサスへの帰り方を教えてもらいに、かかしさんは脳みそを分けてもらいにエメラルドの都へ向かうところです。」



「そうだったんだ。じゃあ、僕も心臓がないんだ。よかったら、一緒に連れて行ってくれないか?」



「ええ?ドロシーと二人で仲良く旅をしてたのにぃ。」



ドガッ



観客席から見えない死角から秋が司の脇を攻撃した。もはや十八番となりつつある暗黒だ。



「かかしさん大丈夫?ブリキさん。こちらからもお願いします。かかしさんも具合が悪いみたいですし、どうか一緒にエメラルドの都に行ってください。」



「あ、ああ。とりあえず、つ・・かかしさんを一緒に運ぼうか?」



「ええ、お願いします。」



ドロシーとブリキはかかしを引きずって舞台袖へとはけて行った。

ブリキの顔は緊張のためかかなり引きつっていた。



「さぁ、三人で、エメラルドの都へ向かいましょ。」



「ワンワン。」



「ごめんなさい。トトも一緒にね。」



何事もなかったかのように、舞台袖から三人とトトのぬいぐるみは出てきて歩き出す。



「がお〜!!」



ライオンが突然三人と一匹を襲い・・・・



ドゴッ



ドロシーの黄金の左足がライオンを襲いました。ドロシーはとても機嫌が悪かったのです。



「痛い〜。あ、ドロシーは本当に強いんだね。」



「あなたみたいな大きなライオンが私たちのような小さな人を襲うなんて臆病なのね。」



「そ、そうなんだよ。僕は臆病ライオンなんだ。だから、君たちについて行ってオズ様に勇気をもらいたいんだ。一緒に連れて行ってくれないか?」



「いいよぉ〜。君みたいなぁ。大きなライオンが側にいてくれたら、安全な旅ができるからねぇ。」



(浩太ぁ、ごめんねぇ。秋の機嫌めっちゃ悪いみたいぃ。)

(司のせいだろ。弾よけにも是非仲間にってことか?)

(気のせいだよぉ。さぁ、劇を続けよう。)



「ありがとう。かかしくん。ブリキくん。ドロシーちゃん。みんなで一緒にエメラルドの都へ出発だ。」



「ええ、よろしくね。ライオンさん。これで危険な動物に襲われる心配がなくて嬉しいわ。」



「そ、そうだね。僕たちの危険は全部ライオンくんが引き受けてくれるから安心だね。」



「ブリキさんは鉄でできているんだもの。危険なんてないわ。藁でできたかかしさんとお肉でできたライオンさんと私は危険かもしれませんね。」



「「「・・・・」」」



「さ、さぁ。エメラルドの都までまだ遠い出発しよう。」



「痛い。さっきライオンさんに驚いてつまずいた時に足首をひねってしまったみたいです。ブリキさん。どうか手をかしていただけませんか?」



「それは、大変だ。つかまって。」



ブリキはドロシーの様子に顔を赤らめながらも手を差し出すと、舞台の袖まで手を引いてはけていった。

逆のそでからその様子をみていた。西の魔女



「ほっほっほ。とってもかわいいお嬢さんたちだわ。これは、旅の邪魔をしなくっちゃ。ドロシーちゃんを怯えさせてあげるわ。」



「「おおお!!」」



なぜか観客からは、応援の声と非難の声が半々に上がった。




「かかしさん。ここはどこかしら?この道を真っすぐに進めばエメラルドの都につけるのよね?」



「そうだよぉ。暗くて恐ろしい森だけどぉ、ここを通らないとぉ、エメラルドの都には辿りつけないんだよぉ。」



「この森には、何がいるか分からないから、みんな気をつけるんだよ。」



「何がでるんだい?怖い獣とかがでるのかな?」



「あなたはライオンでしょ?獣が出てきてもあなたなら大丈夫よ。本当に臆病なのね。」



「だから、オズ様に勇気をもらいにいくんだ。」



その時、いきなり、照明が光度をおとし、怪奇音と共に、西の魔女が現れた。



「この森は通してあげないよ。通してほしければ、私の出すクイズに答えるんだ。ただし、答えられるのは、一人一問だけだよ。」



四人は相談して、答える順番を決めました。ドロシー・ブリキ・ライオン・かかしの順番で答えることになりました。



「一問目は、七月二十六日はとある芝居が初上演されたことにより、特別な名前が付いています。その名前とは?」



ドロシーは戸惑いながらも、きちんと答えました。



「幽霊の日よ。」



「正解!」



(ちょっと、本当にクイズじゃない?簡単ななぞなぞを作ってあったんじゃなかったっけ?)

(和美ちゃんと鈴ちゃんが本番前に考えたらしいよぉ。)

(なによそれ、しかも、なんでわざわざ暗くするかな・・・)



「ひゅ〜ドロロロ。」



ビクッ



「さぁ、次の問題を早くだしなさい。というかさっさとしなさいよ。」



「うふふ、ドロシーちゃんったら。そんな半泣きですごんだって可愛いだけよ。次の問題ね。ドラキュラ伯爵のモデルとされている、15世紀ルーマニアのワラキアの人の本名は?」



(ブラド三世よ。)

(え?何で秋ちゃんはそんなことしってるんだい?)

(散々武兄ちゃんに怪談話を聞かされてきたからね。)



「ブラド三世だ。」



「正解〜!!第三問目にいくわよ。」



「次は僕の番だ。」



「学校には、様々な怪談話がありますが、海良中学に存在する七不思議を六つ答えなさい。」



「簡単だよ。開かずの間・独りでに鳴り出すピアノ・毛伸びの井戸・動く絵画・夜中に揺らめく人魂・亡者への階段ちなみに七つ目は、蟹津武満って人に聞けばわかるらしい。」



「パーフェクトよ。七つ目に関しては私も知らなかったわ。」



「なんでライオンくんはそんなことをしっているんだい?」



ブリキはライオンに尋ねたが、西の魔女はその質問を遮って声をだす。



「さぁ、最後の問題よ。海良中学きっての美少女と噂され、美術部に所属していることから、芸術の女神と呼ばれる少女の弱点は?」



「幽霊だよぉ。お化け屋敷に一人で入れないからねぇ。」



「いやぁぁぁ!!」


ドロシーは泣きだしてしまいました。というか、ライオンが学校に存在する七不思議について話しているあたりから、冷や汗をたらし、ブルブルとおびえていました。



「悔しいがすべて正解よ。仕方がないからこの森は通してあげるわ。」



(メグの可愛いおびえた姿も見れたしね。)



「次こそ覚えてなさい。」



そう言って、西の魔女は去って行きました。西の魔女が立ち去ると、あたりは明るくなり、道もはっきり見えるようになり、ドロシーたちはこれで迷わずに森を抜けることができそうです。しかし、ドロシーがあまりにも疲れてしまっているので、一行は少し、休憩をとることにしました。



「西の魔女は本当におそろしかったね。」



「そうだねぇ。ドロシーの弱点をついたぁ。適格な嫌がらせだったよぉ。」



「そうだな。臆病な僕も、今のドロシーちゃんを見ていたら、なんだか勇気がわいてきたよ。」



(あれ?ここって、かかしが頭がいいってところじゃなかったっけ?)

(もう、このさいいいんじゃないか?どうせ、次からもアドリブで変更されてるんだからな。)



「それに、ブリキくんだって、ハートが無いと言っていたのに、ドロシーちゃんを怖がらせないように心づかいができていたじゃないか。」



「そんなことはないよ。ハートが無いからこそ、不親切にならないように気をつけているんだよ。」



しばらく経つと、ドロシーもだいぶおち・・・疲れが取れたので、一行はまたエメラルドの都を目指して旅立ったのでした。



エメラルドの都では、東の魔女が退治されたという報告が届き、パレードが行われていました。

エメラルドの都は全てが緑一色でできたそれはそれは素晴らしいことろでした。









そのころ舞台裏

「鈴、どういうことよ。ボクの弱点なんてみんなに教えて。」



「大丈夫よ。何でもできてしまう完璧な少女よりも、弱点があった方が周りからは保護欲ができてメグのことを守ってあげたいって思われるようになるわ。」



そう言って、鈴は秋のことを抱きしめている。秋も最近気づきだしたが、鈴の行動は完全なマッチポンプであり、自分で怖がらせておいて、慰めるといった悪質な方法なのだが、秋は結局鈴に抱きしめられて安心している。



「次に西の魔女のところにやってきた時は武満さん直伝の怖い話をしてげるから楽しみにしていてね。」



ビクッ



やっぱり、あんまり安心していないかもしれない。



「さぁ、出番よ。さっさとオズとの会見を終わらせて私のところに来てね。」














舞台


「わぁ〜。ここがエメラルドの都か。あたり一面が緑色なんだね。」



「すごいねぇ。僕も藁じゃなくてぇ。新緑が詰められてるみたいだよぉ。」



「かかしくんはあんまり変わって無い気がするよ。」



「それよりも、オズ様に会いに行きましょ。東の魔女を退治したことを話せばきっと話をきいてくださるわ。」



「じゃあ、みんなで、呼んでみよう。」



四人で声を合わせて「「オズ様〜。」」



舞台そでから、大きな人の顔のようなセットが現れ、話しだします。



[わしが、<おそろしい大魔法使い>オズ様じゃ!!]



「私たちは、東の魔女を退治して、そこからここへオズ様にお願いがあって旅をしてきました。」



[東の魔女を、なるほど、話を聞いてやろう。わしにどんな頼みごとがあるのじゃ。]



「私とトトは生まれ故郷のカンサスに帰る方法を教えていただきたくて参りました。」



「私は、脳みそをいただきにきました。」



「僕は心臓が欲しくてきました。」



「僕は勇気をいただきたいと思ってここまできました。」



四人はそれぞれの願いを頭を下げてできるだけ丁寧にオズ様に伝えました。



[ならん。この国では、何かをしてほしくば、それ相応の仕事をしなければならない。お前達が西の魔女の持つ、魔法の帽子を持ってくることができたら、その願いを聞いてやろう。]



「でも、私たちはすでに東の魔女を退治しました。それではいけないのでしょうか?」



[お前たちは、東の魔女を退治したことで、わしに願いを伝えることができた。願いをかなえたければ、西の魔女のところに行って、西の魔女から魔法の帽子を取ってくるのだ。]



「そんな、西の魔女はそれはそれは恐ろしい魔女です。どうか、カンサスに帰していただけないでしょうか?」



[ならん。魔法の帽子を持ってくるまで、願いはかなえてやることはできん。]



「じゃあ、私はカンサスに帰るのをあきらめます。」



[ちょ・・]



「ドロシーちゃんの気持ちは分かるけどぉ。がんばって西の魔女を倒そうよぉ。」



「嫌よ。あんな怖い話を聞くくらいなら、帰れない方がいいもの。」



[ドロシーちゃんの怖がるのも仕方がないとは思うけど・・どうか西の魔女を倒してくれないかな?]



「他の方法じゃだめ?」



ドロシーは上目遣いで、目を潤ませてオズにお願いをしました。



[まぁ、ドロシーちゃんがそこま・・・]



「おーほっほっほ、話は聞いたわよ。そのドロシーという少女が私の城に来るのね。私は首を長くして待っているわ。」



舞台そでから、悪い西の魔女が現れました。ドロシーたちは、西の魔女に知られてしまい、逃げ出すこともできずに、西の魔女から魔法の帽子を奪わなくてはならなくなってしまいました。



(まったく、あそこでおねだりなんてしたら、劇の台本が狂っちゃうじゃないの。)

(鈴にそんなこと言う資格はないわよ。私と司くんとで台本いじりまくったんだから。)

(私たちは良いのよ。メグのことを考えてやってるんだから。)



舞台袖からは、禍々しいオーラが立ち込めており、ドロシーたちはとても怖かったのですが、励ましあい勇気を振り絞って西の魔女の住む城へとやってきたのでした。



「お願いします。その魔法の帽子を譲ってくれませんか?」



「馬鹿を言わないで、これは大切な帽子なの、だから絶対に渡すわけにはいかないわ。のこのことやってきたこの子たちを、どうしてくれようかしら。」



その時、西の魔女はドロシーの靴を見ました。それは、東の魔女が昔自慢をしていた魔法の靴でした。その靴が欲しい西の魔女はドロシーたちをだまして、靴を奪い取ってしまおうと考えました。



「そこの三人は牢屋に入れてしまいなさい。ドロシーちゃんは私と一緒にくるのよ。」



西の魔女の命令で、ドロシー以外のみんなは、牢屋に連れていかれてしまいました。

一人ぼっちになったドロシーは心細くて、怖くて震えてしまいます。

そんな様子を見た西の魔女は、ドロシーが魔法の靴をうまく使えていないことに気づき、にやりと恐ろしい笑みを浮かべるのでした。



「さて、ドロシーちゃんには、私の奴隷になってもらおうかしら。まずは、どんなことをさせようかしら。」



そう言って西の魔女はウォークマンを取り出しました。その中にはドロシーの苦手な怪談話がたっぷりはいっており、ドロシーは逃げることもできずに、恐怖におびえてしまいます。



「やめて、それだけは嫌なの。本当にね?」



「うふふ、子鹿みないに震えちゃって、本当に可愛いわ。」



その時、ドロシーは、あまりの恐怖に動転してしまい、逃げたい一心で近くにあった水の入ったバケツを西の魔女に投げつけました。



「私に水を被せるなんてぇ〜。なんてことをしてくれたんだい。」



西の魔女は水が大の苦手で、体が解けてしまいました。西の魔女が解けてしまうと、そこには魔法の帽子だけが残り、ドロシーはそれを抱えると、牢屋に連れていかれてしまったみんなのもとへと急ぎました。



元々悪い西の魔女に無理やり働かされていた西の国の人たちは解放されたことを喜びドロシーたちにお礼をしました。ドロシーたちは、良いことをしたと考えて、帽子を持ってエメラルドの都へと帰って行きました。

















「オズ様。私たちは、約束を守りました。今度はあなたの番です。」



ドロシーはそう言って魔法の帽子を掲げました。仲間たちも、これで欲しいものが手に入るとにこにこ顔です。



[そうか、それではわしは考えなくてはならん。明日の朝もう一度ここへ来るのだ。]



「そんなぁ。考える時間はあったでしょぉ?いい加減なことをいわないでよぉ。」



ライオンはここで、脅かしてやろうと考え、大きな声で吠えました。すると、隣にいたドロシーたちの方がびっくりして、側にあったついたてを倒してしまいました。そこには、ついたてを倒してしまったドロシーよりも驚いている老人がいました。



「お前は誰だ!?」



ブリキは老人に斧を構えて問質しました。



「わしが、オズじゃよ。」



「「ええ?」」



「きちんと説明するから、その斧をおろしてくれ、実は・・・わしは、魔法使いでもなんでもないんじゃ。」



ドロシーたちはもう一度驚き、オズの話を聞くことにしました。



「わしは、オハマの生まれでな、そこで腹話術しと気球乗りをしていたんじゃ。ある日気球にのっていると、事故で乗っていた気球が流されてしまい。この国に降り立ったというわけじゃ。じゃから、わしはただの人間なんじゃ。」



「オハマってカンサスのすぐそばじゃないですか。」



ドロシーたちはオズの正体を知って困ってしまいました。オズが普通の人間で騙していたことには憤りを感じましたが、それ以上に魔法使いではないことがわかり、自分たちの願いが叶わないと思ったからです。



「じゃあ、私たちの願いはかなえられないのでしょうか?」



「すまんな。カンサスへの帰り方はわしにも分からん。しかし、他の三人の願いは、わしがどうにかしてやろう。明日の朝、もう一度ここに来てくれ、それまでにしっかりと準備を整えておこう。」



「わかりました。とりあえず今日は帰ります。」



四人とトトは明日もう一度オズのところへ来ることにしました。



翌朝、四人とトトは約束通りにオズを訪ねてきました。



「かかしくんは脳みそが欲しいんだったよね?さぁ、これを頭につけるんだ。きっと脳みその代わりをしてくれるはずさ。」



そう言ってオズはかかしの頭に入ってる藁の代わりに何かを入れました。



「ありがとうぅ。この脳みそが慣れたらぁ、きっと私は今よりもっと賢くなるだろぉ。」



「ブリキくんはハートだったね?ハートを入れるために君の体にすこし穴をあけなければいけないけど、構わないだろうか?」



「ハートをもらえるんだったら、少しくらい継ぎ接ぎができたって構わないよ。」



オズはブリキの了解を得たので、大きなはさみを取り出して、ブリキの体に穴を開け、真赤な心臓をその中に入れまて、もう一度穴を閉じました。



「ありがとう。これで僕もやっとハートを手に入れることができた。」



「最後にライオンくんには勇気だったね?これは勇気の元が入った薬だ。ただしこれは勇気の元であって、それをきちんと体に取り込まないと意味がない。少しにがいが、大丈夫だろうか?」



「どんなににがくったって、それで勇気が手に入るなら、僕は一気に飲んでみせるさ。」



そういうと、オズの持っていた薬をもらい、ライオンは一気に飲み干した。



「勇気がわいてくるようだ。」



「みんな本当に良かったわ。」



ドロシーがそう言うと、三人は気付いてしまった。自分たちだけが願いをかなえてもらい、ドロシーには故郷に帰るという願いがかなっていないこと。



「本当にすまない。わしがここに着いたとき、気球は壊れてしまい、わしも帰る方法がないんじゃ。」



悲しみにくれたドロシーは歌を歌いました。






Somewhere over the rainbow

Way up high

There's a land that I heard of

Once in a lullaby


(虹の向こうのどこか空高くに

子守歌で聞いた国がある)


Somewhere over the rainbow

Skies are blue

And the dreams that you dare to dream

Really do come true


(虹の向こうの空は青く

信じた夢はすべて現実のものとなる)


Some day I'll wish upon a star

And wake up where the clouds are far behind me

Where troubles melt like lemondrops

Away above the chimney tops

That's where you'll find me


(いつか星に願う

目覚めると僕は雲を見下ろし

すべての悩みはレモンの雫となって

屋根の上へ溶け落ちていく

僕はそこへ行くんだ)


Somewhere over the rainbow

Bluebirds fly

Birds fly over the rainbow

Why then, oh why can't I?


(虹の向こうのどこかに

青い鳥は飛ぶ

虹を超える鳥達

僕も飛んで行くよ)







歌は静かに、しかし力強く心に響きます。会場中がいえ、ドロシーの声が届く範囲すべての生あるものがその歌声に聴き惚れました。








ドロシーが歌い終わると、北の魔女が現れます。



「なんて素敵な歌声なのでしょう。あなたはそんなに、故郷に帰りたいんですね。」



「はい。でも、私には鳥のような羽はありません。カンサスに帰ることはできないのです。」



「そんなことはありませんよ。あなたには魔法の靴と魔法の帽子があるじゃありませんか?二つの魔法の道具があれば、きっとあなたの思い描くカンサスまで飛んでいくことは可能です。」



「本当ですか?でも、魔法の道具を使う方法が私にはわかりません。」



「使い方なら私が知っていますよ。さぁ、眼を閉じて、あなたの故郷であるカンサスを思い出すのです。」



ドロシーはカンサスのことを思い描きながら、眼を閉じました。



ブチュ〜!!



「な、何すんのよ!!」



北の魔女は目を閉じたドロシーに口づけをしました。



「魔法の使い方を教えました。これで、カンサスに帰ることができるでしょう。」



北の魔女の言う通り、ドロシーは魔法の道具の使い方をいつの間にかしっており、魔法の言葉を唱えるとあたりは真っ暗になりました。



明かりがつくと、ドロシーは故郷のカンサスの草原の上に立っていました。



「ただいま!!」



ドロシーとトトは自分の家に向かって駆け出しました。いつの間にか魔法の靴と帽子はなくなっていましたが、ドロシーにはもうそんなものは必要ありませんでした。







大きな拍手が起こり、舞台の幕が下りてきた。幕がもう一度あがると、役者たちが勢ぞろいしており、もう一度大きな拍手とともに丁寧にお辞儀をし、幕が下りてきて本当にオズの魔法使いはこれでおわりだった。



「お疲れ様。秋のドロシー最高だったわ。」



「ありがと、それはいいんだけど、台本に無いアドリブがかなり入ってた気がするんだけど?」



「緊張してセリフとかを間違えちゃうのはぁ、仕方ないよぉ。」



ドガッ



司は秋に久しぶりに殺戮をもらった。今の秋は本当に機嫌が悪いようだ。



「一応主犯はこれで片づけたわ。次は、鈴と和美、ちょっとお話があるの?片づけはみんなに任せてちょっと来てくれるかしら?」



「私委員長だし、片づけを・・・」



「浩太?要くん?ここお願いできるわね?」



秋は満面の笑みで二人にお願いをした。二人は首を縦に振ると、片づけの指示を出しながら自らも動き出す。



「さぁ、これで問題ないわ。お話しましょうね。」



秋の笑顔には逆らえない何かが存在し、鈴と和美は秋の進む体育館裏のだれも立ち入らない場所へとしぶしぶ向かうのだった。









いかがだったでしょうか?AKIの大好きなオズの魔法使いの話を、劇の中で再現してみました。

今回のテーマは“虹を超える世界観”です。

大きなことを言っていますが、簡単にいえば、オズの世界観と再転の姫君の世界観をどうやって混ぜるかです。

AKIはUSJに行ってウィケットなども見ているため、西の魔女=悪者という考えがどうしてもできずに、鈴にこわ〜い魔女を演じてもらいました。

秋の今後には幽霊=怖いものという話が絶対的にでてくることでしょう。

お化け屋敷・墓地・夏の怪談・学校の七不思議とここまできたので、今度はどんなお話でビクビクしてもらおうか悩み中です。


それではAKIの再転の姫君に付き合っていただきありがとうございました。

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