チャプター29
武満出番到来♪
夏祭り
「女神先輩。明日の夕方、隣町で開催される夏祭りに一緒にいきませんか?」
「ボクはちょっと、今年はやめておこうかと思ってるんだけど。」
「せっかく先輩が浴衣を作ってくださったのだから、その浴衣を着て祭りに参加したいってみんな言ってますよ。」
真奈美ちゃんの発言を聞いた秋は、由香や花火の様子をうかがう。
二人とももう一度あの浴衣を着て祭りの会場に向かいたくてうずうずしているようだ。
「メグって祭り好きじゃなかったっけ?なんで今年は参加しないの?」
秋は、昔から行事ごとは好きで毎年祭りなども竜や司と一緒になって参加していた。
「いや、今年は司と麻美が付き合ってるし、鈴と浩太もカップルで参加するでしょ?
ボクは一人で参加すると、いろいろな面倒に巻き込まれちゃうから、やめておこうかと思って。」
「竜くん一人いれば問題ないんじゃないの?
それに、男女比は別に問題ないんだし、真奈美ちゃんたち一年生もいるんだから行きましょうよ。」
「女神ちゃんが行くなら、みんなも張り切って参加するし、良いと思うぞ。」
美術部内では全員参加の雰囲気ができあがっており、これ以上断ることが困難になってきた秋は本音を吐露する。
「その、竜と一緒っていうのがなんだか今年は恥ずかしくって。」
その秋の言葉に全員が納得し、なおかつ反論した。
「なら、メグは参加決定ね。祭りの日は他の部活も練習ないはずだから、竜くんたちも全員参加するように伝えておくわ。」
「そんなぁ。ただでさえ合宿以降、変に意識しちゃってダメなのに、普段と違うところになんていけないよ。」
秋が弱音をはいたが、鈴たちには通用しなかった。
「メグにはいい機会だと思うわ。それに、メグが自分で作った浴衣を着ていくんでしょ?
絶対に竜くんも喜んでくれるから安心して参加しなさい。」
何に安心したら良いのかといった秋の様子を部員たちは眺め、それぞれ秋が祭りに参加するように促していく。
ついに、説得に折れた秋は美術部員と心友のメンバーで祭りに参加することを承諾するのだった。
「秋先輩の浴衣姿がもう一度みられるなんて嬉しいです。」
「そうよね。本当に浴衣姿の女神先輩は素敵だったわ。」
「祭りの当日はコンテストでもないから、あんまりお化粧とかはしていかないよ。」
「メグは本当にそれでいいのかしら?竜くんも来るんでしょ?
せっかくだからお化粧した方がいいんじゃないかしら?」
鈴の言葉に赤面した秋は、明日の祭りでどうするか悩むのであった。
鈴や麻美の性格を考えても、からかわれたり、恥ずかしい思いをする気がして不安もあり、
みんなで一緒に周れることに嬉しい気持も確かに存在していた。
部活を終わり、帰りに麻美や司や竜に確認をとると、それぞれから良い返事をもらい、みんなでコンテスト用に作った浴衣を着て参加することを承諾して秋たちは自宅へと帰った。
「武兄ちゃん。明日暇よね?」
「明日ってお祭りだろ?秋も行くのか?」
「うん。合宿で一緒だったメンバーで行くんだけど、みんな浴衣だから車出してほしいんだけどいいかな?」
「ああ、別にかまわないけど、明日は何人乗るんだ?
それに会場は混むから、近くまでしか乗り入れできないぞ?」
「駐車場いっつも満員だもんね。みんなそれぞれ送り迎えしてもらえるらしいから、
竜と司と麻美の三人だけでいいみたい。」
「じゃあ良いよ。この前みたいに往復することはできないからな。
それに今年は真美子ちゃんから誘われてるから、司の家で真美子ちゃんも拾っていかないとな。」
「え?武兄ちゃんって司のお姉ちゃんに手を出してるの?」
「手を出すって、まあ昔から交流はあったけど、この前バイト先で偶然会って、
夏祭りに誘われただけだよ。」
武満は秋ほどではないが、結構モテる。
ちょっと?シスコンが入っていたため以前は女子から避けられていたところもあったが、
秋が成長すると共に、良い兄としての立場が周りからは面倒見の良い優しい男と印象を良く変換された。
元々顔立ちも悪くなかったので、高校時代から徐々にモテ出した。
本人は意識していないが、周囲からアプローチもかなりある。
古風なのは顔立ちだけでなく考え方も利也に似たのかあまり女遊びをすることもなく、友人として健全な仲を保っていることが多い。
「武兄ちゃんって、モテるんだから、そろそろ彼女の一人くらい作ったら?」
「何人か付き合ってみたけど、向こうから告白された影響かあんまり真剣に恋できなくて、すぐに別れちゃうんだから仕方ないよ。」
「早く好きな人見つけてよ。ボクはこの家継ぐ気無いんだからね。」
「はいはい、どうせ竜と一緒にちょくちょく実家に帰ってくるんだから継がなくても平気だよ。」
「なんでそうなるのよ。別に竜とはそんな関係じゃないんだから。」
「秋の態度見てたら、竜以外いないと思うんだが?」
「今はそうかもしれないけど、将来は分からないじゃないの。」
秋の性格はわかりやすいらしく、自分のこととなると鈍感な武満にもしっかりばれており、
両親の中でも竜と今後付き合うのだろうと考えられていた。
「秋ちゃん。お母さんは竜くんなら賛成だから、付き合いだしたら隠さないでちゃんと報告するのよ。」
「はぅ。」
好美にまでからかわれて、赤面してしまう秋だった。
これでは、明日の祭りでどうなるか分からない。
「司〜武満さんと秋ちゃん来てくれたわよ〜。」
真美子が家の中で、まだぐずぐずしている司を呼んでいる。
「真美子さんお久しぶりです。その浴衣可愛いですね。」
昔は司の家に良く通っていた秋だが、小学校の高学年から数が減り、
中学生になってからは全く来なくなってしまったので、真美子と会うのは2年ぶりくらいだ。
「秋ちゃんも見ないうちに本当にきれいになったわね。
その浴衣すっごく素敵ねどこで買ったの?」
「ボク今、美術部に入っていて、自分で作ったんです。」
「ええ?手造りなんだ。すっごく良いわ。私も作ってほしいくらいよ。」
「ちょっと、材料費が高くなりますがそれでもよろしければ、今度作りますね。
今日一緒に祭りに行く子たちはみんなボクが作ったので、こんなデザインが良いとか考えておいてください。」
「ええ?それ一つじゃなくてまだ作ったのがあるの?
じゃあ、今年は無理だろうけど、来年までに秋ちゃんのお家にいって相談させてもらおうかしら。」
「はい、十二月以降なら学園祭も終わって余裕があるとおもうので、
それくらいに来てもらえば来年に間に合うと思いますよ。」
「おまたせぇ。やっぱり慣れないと歩きづらいねぇ。」
真美子と秋が浴衣のことで盛り上がっていると、司も勝手口から出てきて、車に乗り込む。
このあと先に近い麻美の家により麻美を乗せると竜の家に向かった。
「お兄ちゃん。秋姉さんたち来たよ。」
「おお、今行くわ。」
竜もきちんと浴衣を着て出てきた、これで全員そろったことになる。
「武ちゃん。貴史も一緒に乗せってもらえへん?
友達と向こうで合流するから、会場に着いたらほっといたらええんやけど、
隣町まで遠いで大変やってことになってさ。」
「座席も余ってるし良いよ。後ろで調節して乗ってくれ。」
予定になかった貴史くんも一緒に乗ることになったが、武満の車は大きいので十分に乗れた。
ただ、みんな浴衣の中に運転手の武満と貴史だけ普段着なので微妙に浮いていたが、
本人はあまり気にしていないようなので問題ないだろう。
「少し早めに着くかもしれないが、渋滞するだろうからもう会場に向かうよ。」
「うん。みんな浴衣着てるからゆっくり歩くことになるから大丈夫だよ。」
集合時間は6時に会場側の本屋の前となっているが、本屋なので時間もつぶすことができるし、
早く来すぎてる子がいるかもしれないので少しくらい早く着くのは問題ない。
早めに着くはずが、会場の側まで車が着くと既に渋滞をしており、真美子と武満が車に残り、
帰りの待ち合わせ場所と時間を確認すると先に降りて秋たちは集合場所に向かった。
「こんな時にケータイってあると便利よね。」
「確かにね。最近公衆電話も少なくなってきたから、ケータイがないと連絡取りにくいよね。」
まだ中学生なので、田舎の海良町ではあまり使う機会も無くケータイを持っていないが、
祭りなど、少し外へ出かけた時には欲しいと思ってしまうものだ。
「まぁ、高校に入って帰りが遅くなったりしたら買ってもらうんやし、ええやん。」
「ボクの場合はすぐに警察や救急車が呼べるから早めに欲しいところだよ。」
「秋ってさぁ。最近不幸体質を認めだしちゃったよねぇ。」
「仕方ないわよ。ここまで頻繁に色々なことに巻き込まれてたら体質を否定するよりも対処を考えるしかないじゃない。」
実際不幸が起こる原因のようなものも、ある程度把握することができたため、
不幸な出来事が起こらないように予防したり、起きてしまった場合に備えてしまう秋だった。
「ほんま、小学校の時に有名人にならんくて正解やったな。
あの時もしメディアに紹介されてたら、幸せを願ってくれる人も増えたかもしれへんけど、
それ以上に妬みや嫉妬で今頃不幸体質まっしぐらやったかもしれへんもんな。」
「そうね。秋ちゃんはかなり賢明な判断をしたとおもうわ。
おかげでこうやって心友たちに囲まれていれば、安全に遊ぶこともできるんだもの。」
そんな話をしていると集合場所の本屋が見えてきた。
「秋先輩!!こっちです。」
そこには時間の10分前だというのに既に由香ちゃんと花火ちゃんが待っていた。
「二人とも早いね。鈴と浩太と真奈美ちゃんは時間ぎりぎりかな?」
「めぇ〜が〜み先輩!」
「キャッ。」
人込みで気配を消して近づいてきていた真奈美に気づかずに秋は後ろから真奈美に抱きつかれてしまった。
「真奈美ちゃんもついてますよ。さっき飲み物を買いに行くって少し離れていただけです。」
「由香ちゃん。抱きつかれる前に言って欲しかったかな。」
「真奈美の愛の抱擁を拒否するんですか?こんなに愛しているのに。」
そう言って真奈美は秋の胸に手を伸ばしていった。
「ちょ、や。ダメぇ。」
「相変わらず女神先輩の胸は大きいし、反応が可愛すぎます。」
「今日は、ん、浴衣だか、ひゃ、やめ・・」
「女神先輩は最近真奈美に構ってくれなかったのでこうして抵抗できない時に思いっきり堪能させてもらい。痛!」
「まったく何してるのよ。メグ、大丈夫?」
ちょうど浩太と共にきた鈴に、真奈美は頭をはたかれ秋と離されてしまった。
「鈴先輩。酷いです。先輩と後輩のスキンシップをしていただけなのに。」
「じゃあ私もスキンシップの一つよ。油断したらすぐこれなんだから。」
「ええん。浩太先輩。鈴先輩がいじめます。」
そう言って浩太に泣きつこうとしたが、全員が真奈美のやりすぎていた状況を理解しているため、真奈美は結局たしなめられてしまった。
話が一段落すると、それまで一緒にいた貴史が秋に声を掛けた。
「秋お姉さん。僕そろそろ友達のところ行くね。」
「貴史くんも集合時間忘れないようにね。」
「はぁい。」
「なんで、兄の俺じゃなくて秋に言ってくかな。」
「車は武ちゃんのだからねぇ。それにぃ、貴史くんも秋に言った方がいいと思ったんだよぉ。」
「まぁ、秋はしっかりしとるからな。秋に確認とっとけば問題あらへんわな。」
竜は、周囲がどんな風に竜と秋の関係を見ているのか良く理解できていない様だ。
「さぁ、せっかくみんなで集まったんだから屋台とかまわりましょ。」
鈴の声で、全員が動き出す。
しかし、人込みがすごく、すぐにはぐれそうになってしまう。
「秋、あんまりはなれんな。」
そう言って竜は秋の手を取った。
一年生たちは三人で手をつないでおり、カップル二つも互いに手を取り合っていたため、
秋の手をとることができるのは竜一人なのだが、竜も秋もお互い顔を赤くしながら、手を握り合った。
「ありがと、今日は何も起こってほしくないし、側にいてね。」
「ん?なんや言うたか?」
小さい声で秋がそうつぶやくが、人込みの中その声は竜に届かなかったらしい。
「ううん。今日は楽しみましょ。」
「せやな。せっかくみんなで集まったんやし、楽しまなかんな。」
「女神先輩。かき氷食べたいです。」
「うちも、食べたい。」
後輩たちの声により、かき氷を食べることになった。
秋も、人込みと緊張でほてった体を沈めるべく、それに同意するのだった。
秋と麻美と鈴はイチゴ・竜と浩太はメロン・司はブルーハワイ・真奈美と由香はレモン・花火はミックスを注文した。
「花火ちゃんのかき氷なんかすごい色になってるよ。」
真奈美の言う通り、花火のかき氷はシロップでずいぶん溶けてしまっているし、
混ざり合ってすごい色になっていた。
「うちの中では祭りのかき氷はこういうもんなんやって。」
「麻美ぃ、イチゴもちょうだいぃ。」
「いいわよ。じゃあブルーハワイと交換ね。」
そう言うと、半分以上食べてしまった司のブルーハワイとまだほとんど残っているイチゴを交換する。
「麻美って、意外と司に甘いのね。私たちも交換する?」
「そうだな。僕も半分くらい食べたしちょうどいいから交換しようか。」
浩太と鈴も交換して、後輩たちはそれぞれ自分の分をたべていた。
「俺らも交換しようぜ。」
「嫌だよ。竜ほとんど食べちゃってるし、舌が緑になっちゃうじゃない。」
「じゃあ、私のレモンと交換しましょ。レモンならそんなに気にならないです。」
「いいよ。ってか真奈美ちゃんあんまり食べてないけどいいの?」
「はい。女神先輩のかき氷と交換できるなら全然問題ないです。」
「なんか、微妙に変な気分だけど、まぁいっか。」
秋と真奈美がかき氷を交換すると、真奈美は手に持っていたストローまで交換した。
「女神先輩と間接キス。うふふふふ。」
真奈美は秋と交換したストローを使って真赤になりながらかき氷を食べだした。
「真奈美ちゃん。秋先輩のこと諦めたんじゃないの?」
由香が真奈美に耳打ちすると、真奈美は意外と真面目な顔で答えた。
「竜先輩も、女の子の私が相手なら嫌な気分にはならないでしょ?
女神先輩が間接キスを恥ずかしがっていたのを助けただけよ。
まぁ、それでもちょっと嬉しいのは確かだけどね。」
「意外とちゃんと考えてるのね。自分の欲望に素直なだけかと思ったわ。」
「それもないとは言えないわ。
でも、応援したい気持もあるから、どっちも得な時は私の願望を満たすのよ。」
「う〜ん。誉めていいのか、引いていいのかわからないところね。」
「私って強い人が好きなだけだから、女神先輩は特別だけど普段はノーマルって前にも言ったじゃない。」
「そうなのよね。秋先輩以外に対してノーマルだから私たちも普通に接してられるのよね。」
二人がコソコソ会話をしているのを、麻美と司はさりげなく聞いており、
問題がないことを確認すると、計画を進めるべく動きだした。
「せっかくみんなでぇ、集まったけどさぁ。これだけ人数がいると移動も大変だよねぇ。」
「そうね。私たちは一緒に帰るから別だけど、鈴と浩太と真奈美ちゃんたちは別行動してもいいのよ?」
そういって、麻美は鈴にウィンクをする。
「う〜ん。確かにそうかもね。じゃあせっかくだしデートする?」
「みんなでいるのも捨てがたいけど、一番の要因である女神ちゃんが竜くんと
一緒に行動するなら問題も起こらないだろうしいいよ。」
会話の流れ的にバラバラで行動する雰囲気になって秋は焦り出す。
「せっかくみんなで集まったんだからみんなでいようよ。」
「合宿の時も言ったけど、みんなで集まった方がいい時はそうするわ。
でも、今回みたいに人込みを集団で移動するのは大変だし、
カップルばっかりじゃ真奈美ちゃんたちも気が引けるでしょ?」
「カップルって言うのは今さらですし、大丈夫ですが、集団で移動するのは確かに大変ですね。」
由香のその言葉を聞いて麻美が花火に耳打ちをする。
「花火ちゃんも武満さんを探したいんじゃないの?
今日私たちを車で送ってくれたから会場のどこかにいるわよ。」
「う、うちも一回解散した方がいいっす。
花火が上がる時にもう一度みんなで集まるのはどうっすか?」
麻美に簡単に懐柔される花火だった。
こうなると、真奈美は秋と一緒にいたいが、邪魔をするのも悪いので合意するしかない。
「じゃあ花火が上がる少し前の6時50分くらいになったら公園の噴水集合にしましょ。」
「ホントに別々に行動するの?」
「まぁええやん。こんな時くらい浩太たちをらぶらぶさしたり。」
竜は、浩太たちがデートをするために一時離れると考えているようだ。
しかし、明らかに竜と秋の関係を深めるためにみんな動いており、
秋はそれが何となくわかってしまったため焦っている。
「メグにしては鋭い観察ね。でも、本当に私たちもたまにはデートしたいってのもあるから、花火が上がるまでだけね。」
鈴にそう耳打ちをされて、あきらめるしかないようだ。
秋は鈴にうなづくと、みんなに集合場所と集合時間をもう一度確認をとった。
「じゃあ、私たちは先輩たちに負けないよう、心友の絆を深めてきます。」
「私と浩太も初めてのデートだし、楽しんでくるわね。」
結局残ったのは麻美と秋と竜と司の四人となった。
このメンバーなら実際なにかが起こっても対処できるし、
秋のことを本当に思ってくれているという自信が秋にもあるので問題はないのだが、
浴衣姿で祭りに来ているという普段とは違った雰囲気でこれだけのメンバーになったことにより、秋は意識してしまう。
「ほな、俺らもまわろか。何から行く?」
「そうだねぇ。食べ歩きしながらぁ、ゲームがあったらするって感じでいいと思うよぉ。」
「そうね。行きましょっか。秋ちゃんは私と手をつなぎましょ。」
普段は竜と司の間で移動するのだが、今日はなぜか秋・麻美・司・竜の並び順で動くようだ。
秋としても今竜と隣同士というのは恥ずかしいのでこれは嬉しい配慮だった。
「司と麻美も本当は二人っきりになりたい?」
秋はそっと麻美に耳打ちする。
「それもいいけど、恥ずかしがってる秋ちゃんを見るのも楽しいから良いわよ。
司も竜くんをからかって楽しんでるみたいだしね。」
秋が目線を送ると、どうやら司も竜に何か言っているようだ。
明らかに竜に対して秋のことでからかっているのだが、秋は気付いていない。
「あの二人は昔から仲いいからね。ボクも麻美とこうして仲良くなれてホントにうれしいけどね。」
「もう、秋ちゃんって本当に可愛いわ。」
最近こうして誰かに抱きしめられることが増えている気がするが、秋はびっくりすると、
とりあえず学校でもないのでレズジュツの女神なんて言われはしないが、
司のこともあるので麻美をおちつけるとそっと体を離す。
「秋と麻美ってなんだか姉妹みたいだよねぇ。
普段は秋もお姉さんぽいとこあるけどぉ、麻美や鈴と一緒にいると秋って末っ子だからぁ。
甘えたくなるのかなぁ?」
「別にそんなんじゃないわよ。
でも、麻美や鈴には思いっきり甘えられるっていうのはあるかもね。」
「せやな。秋って武ちゃんの影響で昔は甘えん坊やったしな。」
「なんだよ。まるでブラコンみたいじゃないか。」
そんな話をしていると、遠くの方で真美子と武満が一緒にいるのを発見した。
「噂をすればね。あら?武満さん手つないでない?」
「え?ホントだ。ひょっとして真美子さんと武兄ちゃんって付き合ってるの?」
「う〜ん。お姉ちゃんがぁ武ちゃんのこと好きなのは知ってるけどぉ。
武ちゃんはどうなんだかわからないからねぇ。」
「ちょま。真美子さん武ちゃんのこと好きやったんや。」
四人が見ていることに気がついてない武満たちは、仲がよさそうに手をつないで話ながら、
建物の中に入って行った。
「追いかけてみよっか?」
「いいわよ。じゃあ秋ちゃんもあれに入るのね。」
「あれ?げ、やっぱやめとこっか。出てきてからでもいいし。」
武満たちが入っていったのはお化け屋敷だった。
遊園地で克服したとはいえ、やはり幽霊が苦手な秋はしり込みをする。
「中でぇ。何か展開があるかもしれないしぃ。行こうよぉ。
ちょうど空いてるからさっき入ったばかりならうまくいけば二人の会話を聞き取れるかもよぉ。」
「ええやん。お化け屋敷はもうこわくないんやろ?」
「そうよ。お化け屋敷なんて偽物だもん。ボクはちっとも怖くないよ。」
竜に怖がっているところを見せたくなかったのか、秋は見栄をはり、
ひとりでずんずん進んでいく。
「ちょま、先に行くな。お化けは怖くなくても一人でくらいとこ行ったら危ないやろ。」
そういって竜は後を追いかけていく。
「大成功?かしら?
武満さんには悪いけど、上手く二人っきりの場面ができたわね。
私たちは外で待ってることにしましょうか?」
「そうだねぇ。
真奈美ちゃんたちには浩太と鈴が伝言してくれてるだろうしぃ、あとは上手に竜に告白させるだけだねぇ。」
策士カップルは今日の計画が上手くいきそうなことにほくそ笑むのだった。
そんな中お化け屋敷に突入した二人は、
「竜、絶対に手を離さないでよ。」
「作りものは怖くないんやなかったんか?」
「もちろんよ。でも、お祭りのときってお化けも活気づくっていうじゃない?」
「ああ、お盆も近いし確かにそうかもしれへんな。」
「だから、絶対に離すな。幽霊が出たら竜が盾になるんだぞ。」
「はいはい、わかったって。」
「あ、足もとの穴に人がいるから気を付けて。」
「ほんまや。ごめんな。
足をつかんでこわがらせるつもりやったんやろうなぁ。」
アトラクションとは違ったところで結局怖がっている秋だった。
そして出て行ったところには、司と麻美が待っているわけで、
「お二人さん仲がいいねぇ。」
「秋ちゃんの手柔らかかった?」
盛大にからかわれる二人であった。
真っ赤になりながらも、
「お化け屋敷じゃなくて、暗いところで一人だと危ないから、手をつないでいただけだもん。」
反論する秋だが、手をつないでいた事実は変わらないわけで、
結局そのあともからかわれながら祭りを回ることになる。
「それで、結局武兄ちゃんたちはどうなったの?」
「外に出てきた時に話しかけたら、にごされたけど、たぶん付き合いだしたんじゃないかしら?」
「たぶんねぇ。お姉ちゃんはわからないけどぉ、武ちゃんの反応はそんな感じだったぁ。」
「じゃあ、花火ちゃんは失恋かぁ。好きな人と恋人になれないなんてかわいそうだなぁ。」
「両想いなんて中々いないものよ。仕方がないわ。」
「両想いでもぉ。勇気をださないとぉ、上手くいくとは限らないんじゃないかなぁ。」
麻美は花火を気遣っての発言だが、司は竜と秋に牽制となる一言をさりげなく伝えた。
「せやな。両想いやったら付き合いたいよな。」
分かっているのか怪しい反応が竜から返ってくるが、竜のことなので、
司の発言の真意は伝わっていないのだろう。
秋も、色恋沙汰となるとさっぱりなのでこちらも期待できそうにない。
「麻美ぃ。この場合どうしたらいいと思うぅ?」
「司にどうしようもないことを私に振らないでよ。
流石にここまでだと、私にもどうしたらいいのか分からなくなってくるわ。」
司と麻美の発言にはてなマークを浮かべる竜と秋だった。
「司たちが、らぶらぶなのは分かったから、そろそろ集合場所に移動しない?
人も多いし早めに合流した方がいいと思う。」
「せやな、秋がお化け屋敷を怖がってる間にだいぶ時間つかってもたからな。」
「ボクはお化け屋敷を怖がったんじゃないもん。」
言ってることはめちゃくちゃだが、結局仲の良い二人をみて、
何故両想いなのにくっつかないのか頭を悩ませながらも司と麻美も集合することに賛成して、
移動を始める。
「なんかさ。この場所ってあれじゃない?」
「せやな、集合場所にはちょっと問題ありやな。」
公園の噴水前は、花火がその場でも見れることもあり、カップルたちのたまり場となっていた。
一応四人も男女比はそろっているので問題はないのだが、秋と竜には刺激が強かったようで、
軽く怯んでしまう。
「竜ぅ、ちょっと話があるんだけどぉ。」
「秋ちゃんと私はみんなが来るといけないからここで待ってるわね。」
こうして司は竜を連れてどこかに行き、秋と麻美だけがそこで待つことになった。
「竜は気付いてないかもしれないけどぉ、今日の秋はきれいだからぁ、
すっごいたくさんの人が秋のこと見てたよぉ。」
「それくらい、気づいとるって。ほんま秋は人を引き付けるもんあるよな。」
「そうだねぇ。学校でも何度も告白されてるくらいだからぁ。
こんなところにいたらいつ狼が現れるかわからないねぇ。」
「それやばいんとちゃう?俺ら二人から離れとるんまずいやろ?」
「浴衣が目立つからぁ。すぐに駆け付けられるしぃ。これくらいの距離なら大丈夫だよぉ。」
「まぁ、確かにそうか。離れすぎへんかったら、人の目線を追いかければ合流できるでな。」
「それよりもぉ。そろそろ、告白したらぁ?鈴たちも付き合いだしたんだしぃ。
竜たちも付き合ってもいいと思うんだよねぇ。」
「いや、秋はあんな美人なんやし、俺じゃ釣り合わへんやろ。」
「そこは問題じゃないよぉ。竜は秋のこと好きなんでしょぉ?
まぁ竜なら釣り合いも全然問題ないとはおもうけどねぇ。」
「う〜ん。せやけど、秋は心友でおりたいって前にも言うとったしなぁ。」
「小学校のころの話だよぉ。今は麻美や鈴を見てぇ。
気持ちが変わってるかも知れないんだからぁ。アタックするべきだよぉ。」
実はこの集合場所は雰囲気をよくするために司と麻美がわざと指定し、
鈴たちに伝言を頼み真奈美たち後輩三人も別の場所で花火を見ることになっている。
「みんながぁ、集まってくる前にぃ。アタックするべきだよぉ。
さぁ。秋と麻美のところにいこぉ。」
完全に司たちにお膳立てされていることに気づかない竜は、司に頷くと、秋たちのいる噴水の側にむかった。
「麻美ぃ。竜たちに任せておけばぁ。みんなが来ても大丈夫だからぁ。
先に花火がもっと見れる場所に移動しよぉ。毎年の場所って言ったら秋わかるよねぇ?」
「大丈夫よ。あそこなら人も少ないし、みんながここに来たら連れていくわね。
って?二人は先にいっちゃうの?」
「じゃあ、みんなが来たらよろしくね。」
麻美と司は二人を置いて行ってしまう。
周囲はカップルだらけで、秋と竜は二人っきりになってしまった。
ヒュル〜ルル ドンッ パラパラ
「花火始まりましたね。綺麗ですね」
「女神先輩たち今頃どうしてるでしょ?」
「二人なら大丈夫よ。きっとみんなが来ないことに気づいて花火が終わったらここに来るはずよ。」
「なんだか、騙してしまったみたいで申し訳ないです。」
「仕方がないさ。
時間ギリギリになってしまったから、僕が場所を知っていたから
偶然一緒にいた真奈美ちゃんたちを連れてここに来てしまったんだからね。」
そう、これが浩太や鈴たちのいい訳である。
こうして集合場所で二人っきりで花火を見る秋と竜。
その前に竜からの告白を受けてきっとらぶらぶで花火を見ていることだろうと全員が考えていた。
「真美子も、昔から花火好きだったよな。」
「この日は毎年みんなで集まって、いつもここで花火見れたからもの。」
武満と真美子もここにおり、花火は二人の様子にそっと悲しむのだった。
「花火ちゃん。花火が終わったらたこ焼きでも買ってから帰りましょ。
私も失恋したんだもん。」
真奈美と由香は花火を気遣い、慰めながらも友情を深めていくのだった。
「鈴!浩太!なんで集合場所に来ないのよ。」
花火が終わり、秋と竜も合流すると、秋からの抗議があがった。
浩太が前々から考えておいた、事情を説明すると、秋は膨れながらもしぶしぶ許した。
「メグ、いいじゃないの。竜くんと二人っきりで見れたんでしょ。」
鈴が秋に耳打ちする。
花火が始まる少し前、秋と竜
「秋、ちょっとみんなが来る前に話があるんだけど。」
「どうしたの?いきなり標準語になって。」
「実は・・・」
「あれ?女神様?」
声を掛けてきたのは野球部のメンバーで、以前助っ人をしたピッチャーの子たちを中心とした人たちが集まっていた。
「先輩。お久しぶりです。部活は引退したんですよね?
受験生がこんなところに来ていていいんですか?」
「受験生って言っても毎日勉強じゃないよ。
それにしても女神様の浴衣姿は本当に素敵だね。」
「ありがとうございます。
あの、最近ではファンクラブでも“様”は言わなくなったし、
先輩から様って言われるのは違和感があるのでやめてもらえますか?」
「ああ、ごめんね。そういえば夏休みに入る前にそんな話が出ていたね。」
「ファンクラブに入ってるんですか?」
「実はあの試合でみんな秋ちゃんのファンになっちゃってね。
だからこうして男ばっかりで祭りに来てるってわけさ。」
確かに野球部のメンバーで来ているというのもあるのだろうが、
モテる子もいるはずなのに、男ばかりで集まっていた。
「あはは、ボクのことを思ってくださるのはすごく嬉しいんですが、
卒業もされることですし、ボクなんかに構ってないで自由に恋してくださいよ。」
「う〜ん。そうだね。竜くんだっけ?仲がよさそうだし、お邪魔しちゃったかな。」
「いえ、美術部の子たちと待ち合わせしてるだけなんです。
他にも麻美や司もさっきまでいたんですが、先にもっと良く見える場所に移動しちゃって、
ボクたちは後輩が来るのをここでまってるだけですよ。」
「そうだったんだ。てっきり付き合ってるのかと思ったよ。」
「仲がいいので良く間違えられます。ボクらは“心友”ですよ。」
「そっか、じゃあその後輩たちが来るまで一緒に待たせてもらってもいいかな?」
「はい。もうすぐ来るはずなんですが・・・
そういえば、竜、さっきなに言おうとしてたの?」
「いや、また今度でええわ。」
「ってわけで、結局誰も来ないから野球部の人たちと一緒に花火を見たのよ。」
「司くん?どういうことかしら?」
「そんなぁ。先輩たちはもう引退したからぁ。連絡とってないんだよぉ。
そんなタイミングであらわれるなんてぇ。予想もできなかったよぉ。」
「ボクもいきなり声をかけられたからびっくりしたよ。
司たちと離れたから不幸が来たのかと思って焦ったんだからね。」
秋の言葉を聞いて、司はとりあえず竜の肩に手を置き、小さな声でつぶやいた。
「今回はぁ、秋の不幸っていうよりもぉ。竜にとって不幸だったねぇ。」
「付き合っとること完全に否定されて心友って言われたんやけど、告白せんくて正解やよな?」
「竜にしては良い判断だったと思うよぉ。またこんな機会を作ってあげるからぁ。
がんばって告白するんだよぉ。」
「お、おう。秋が周りからめっちゃ好かれとることが分かったから俺も頑張るわ。」
「そうだねぇ。とにかく、アタックするなら早い方がいいよぉ。」
そのあと、遊び疲れた秋たちは、武満の車で帰ることになった。
「武兄ちゃん。唇に赤いものが着いてるよ?」
「え?マジ?ちゃんと拭き取ったはずなんだけど・・・・」
「武ちゃん。何もついてないわよ。
もう、隠せるとは思ってなかったけどすぐばれちゃうんだから、私と武ちゃん付き合うことになったの。」
「うん。
真美子さんって昔からお姉ちゃんって感じがしたから、本当にお姉ちゃんになってくれてボクも嬉しいよ。」
「ありがと、秋ちゃん。これからもよろしくね。」
「うん、来年は浴衣任せて、真美子姉さんにピッタリなの頑張って作るから。」
「ふふ、楽しみにしてるわね。良い妹を持ったわ。」
「なんか、俺と付き合うよりも、秋が妹になることの方が喜んでないか?」
「どっちも嬉しいわよ。武ちゃんのことも大好きだからね。」
帰りの車の中のやり取りはおおむねこんな感じで、
貴史以外は祭りの時すでに知っていたこともあり、
会話の流れは武満と真美子の話題でもちきりとなった。
じれったいな、早く付き合えって思った読者様本当に申し訳ありません。
AKIも十分で書きながらさっさと付き合えと突っ込んでしまいました。しかし、今回は武満と真美子というダークフォースが現れ、一話で二組もカップル作るのは問題だと思い、断念いたしました。
今回のテーマ“いかにして秋と竜を付き合わせないか”でお送りしました。
じれったい、でもラブラブな二人がみなさんに伝わればAKIは幸せです。秋と竜がいつ付き合いだすのかはまだ分かりません。ひょっとしたら付き合わない?付き合う?そんな様子を楽しんでいただけたらと思います。
それではキャプチャー29読んでいただきありがとうございました。
追伸
今日はUPしない予定だったのですが、偶然武満出てくるし、コメントをいただいたのでどうせなら今と思い、投稿しました。